つぶ問4-4(財務諸表論)―有価証券


【問題1】
〔解答例〕
 金融資産を対象とする取引については、当該取引の契約時から当該金融資産の時価の変動リスクや契約相手方の財政状態に基づく信用リスクが契約当事者に発生する。そのため、リスクや成果を財務諸表へ適切に反映させるため、約定日に認識する。

〔解説〕
 本誌の2018年12月号84ページの内容です。金融商品のなかでも商品の売買等から生じる金銭債権債務は、商品の受渡しをすることによって債権を認識します。
 これは、一般的に商品の受渡しと同時に売掛金等が生じるため、契約時点では請求権がない=信用リスクも存在しない(仮に相手方の信用リスクが高ければ商品の受渡しをしないことで回避できる)ためです。それに対して、債券を購入した場合は受渡し前であっても時価の変動リスクや信用リスクが取得者側に生じます。

【問題2】
〔解答〕

①…C  ②…A  ③…C  ④…B

〔解説〕
「財務会計の概念フレームワーク」の第4章の測定からの出題です。

 AとBは、測定のつど将来キャッシュ・フローと割引率を見直しますが、Cは割引率の見直しを行わないという違いがあります。そして、AとBの違いは、市場で平均的なキャッシュ・フローと割引率を用いるのか(簡単に言えば普通の会社)、それとも企業固有の事情等を反映させたキャッシュ・フローと割引率を用いるのかという違いがあります。それぞれの測定値の意味は次のとおりです。

 Aの測定値は、報告主体の主観的な期待価値であり、市場価格に無形ののれん価値を含んだものとなります。減損会計の使用価値は、まさに企業が使用しつづけることを前提とした測定値であり、かつ有形固定資産等は使用する企業によって期待されるキャッシュ・フローも異なるため、このAに該当します。ただし、無形ののれん価値を含む測定値は自己創設のれんの計上にもつながることから常にこの測定を行うことはできず、取得原価基準の枠内として取得価額よりも低い金額へ切り下げる減損会計で用いられるとなります。

 Bの測定値は、市場価格が存在しない資産について、市場価格の代理の金額となります。通常の有価証券はどの企業が保有しても期待されるキャッシュ・フローに違いがないことからも、時価が適切な測定値といえます。

 Cの測定値は、回収可能性の変化のみを反映させているため、必ずしも回収リスクのすべてや金利のリスクを反映しておらず、資産価値を表したものとはなりません。しかし、貸倒引当金のキャッシュ・フロー見積法では回収可能額の改訂分を損益に反映させるため、償却原価法では当初用いた割引率にも合う利息収益を損益とするためにそれぞれ用いられます。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。

【つぶ問】一覧
つぶ問1-1(財務諸表論)
つぶ問1-2(財務諸表論)
つぶ問1-3(財務諸表論)-概念フレームワーク
つぶ問1-4(財務諸表論)-企業会計原則
つぶ問2-1(財務諸表論)-棚卸資産の評価
つぶ問2-2(財務諸表論)―棚卸資産の評価
つぶ問2-3(財務諸表論)―固定資産の減損
つぶ問2-4(財務諸表論)―棚卸資産
つぶ問3-1(財務諸表論)―リース
つぶ問3-2(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-3(財務諸表論)―資産除去債務
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問3-4(財務諸表論)―研究開発費
つぶ問4-1(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-2(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-3(財務諸表論)―有価証券
つぶ問4-4(財務諸表論)―有価証券
つぶ問5-1(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-2(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問5-3(財務諸表論)―引当金・繰延資産、退職給付
つぶ問6-1(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-2(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-3(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問6-4(財務諸表論)―純資産(各項目、自己株式、新株予約権)、包括利益
つぶ問7-1(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-2(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-3(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問7-4(財務諸表論)―外貨、デリバティブ、ヘッジ、税金、税効果
つぶ問8-1(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-2(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-3(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問8-4(財務諸表論)―特商、工事収益、新収益認識
つぶ問9-1(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-2(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-3(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問9-4(財務諸表論)―CF計算書、会計上の変更
つぶ問10-1(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-2(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-3(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問10-4(財務諸表論)―連結、のれん
つぶ問11-1(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-2(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-3(財務諸表論)―企業結合、事業分離
つぶ問11-4(財務諸表論)―企業結合、事業分離


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