早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師・公認会計士 加藤大吾
本連載では、税理士試験の簿記論・財務諸表論において、執筆者の指導経験上、誤答が多かった論点を取り上げます。【問い】に対する【解説】のなかに誤りを含む部分があるので、「ここが間違いじゃないかな?」と指摘してください。電卓をたたかなくても、スキマ時間に間違いさがしは可能です。この連載を解くことで、簿記の勉強はもちろん、実務において取引記録を見ながら誤りを発見するという職業体験もすることができます。ぜひチャレンジしてみてください。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。
難易度 | ★★★☆☆ |
【問題4】有価証券②
【問】 次の〔資料〕に基づき,当期(X1年4月1日~X2年3月31日)の損益計算書の有価証券運用益はいくらか,求めなさい。
〔資料〕
1.当期よりトレーディング部門を開設し,売買目的有価証券を保有している。売買目的有価証券に関する売却損益,評価損益および配当金は,すべて有価証券運用損益として処理する。当期中に取得および売却した売買目的有価証券は,A社株式のみであり,その売買状況は次のとおりである。
年月日 | 摘 要 | 株式数 | 1株当たりの時価 |
X1年5月1日 | 取 得 | 500株 | 1,000円 |
X1年7月9日 | 売 却 | 300株 | 1,200円 |
X2年3月30日 | 取 得 | 200株 | 1,500円 |
X2年3月31日 | 決算日 | ― | 1,400円 |
2.A社は,3月末を基準日として剰余金の配当を行っており,X2年3月末を基準日とする1株当たりの予想配当額(利益剰余金を財源)は20円である。なお,配当権利付き最終売買日はX2年3月29日,配当落ち日はX2年3月30日である。
【間違いを含む解説】
1.期中仕訳および決算整理仕訳
(1) 取得(X1年5月1日)
(借) 有価証券 500,000
(貸) 現金預金 500,000
(2) 売却(X1年7月9日)
(借) 現金預金 360,000
(貸) 有価証券 300,000
有価証券運用損益 60,000
(3) 取得(X2年3月30日)
(借) 有価証券 300,000
(貸) 現金預金 300,000
(4) 未収配当金(X2年3月30日)
(借) 未収配当金 8,000
(貸) 有価証券運用損益 8,000
(注)400株(期末保有株式数)×20円=8,000円
(5) 時価評価(X2年3月31日)
(借) 有価証券 60,000
(貸) 有価証券運用損益 60,000
(注)400株×1,400円(時価)-500,000円(取得価額)=60,000円
2.P/L有価証券運用益(解答の金額)
60,000円(売却益)+8,000円(配当金)+60,000円(評価益)=128,000円
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