
平林 黎(TAC公認会計士講座講師)
【編集部より】
読書の秋、スポーツの秋など、何かに取り組むのによい季節になりましたね。読者の方の中には、今年は「勉強の秋」として、資格・検定への挑戦を考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、これから勉強を始める方に向けて、学習初期にぶつかりやすい壁とその乗り越え方をご紹介いただきます。公認会計士受験生だけでなく、税理士や簿記検定の受験生にも参考になる内容です。学習を軌道に乗せるために、ぜひ参考にしてください!
学習を始めて数ヵ月~半年ほどで直面しがちな壁
以前、「秋からの会計士受験スタートダッシュガイド」の記事で、最後まで走り切るためのポイントとして、①ゴールから逆算(時間配分・全体像)、②学習環境を整える、 ③定期的な問題演習や分析・相談(軌道修正)の3つを紹介しました。
本記事では、上記3つの観点も踏まえ、会計士試験の学習を始めて数ヵ月~半年ほどで直面しがちな壁について、「学生・専念生編」と「社会人編(明日公開予定)」に分けてご紹介します。これから挑戦する方や、今まさに悩んでいる方の参考になればと願っています。
<学生・専念生からよく伺うお悩み>
Q 空き時間はあるはずなのに、なかなか机に向かえません。
Q 大学受験の時のように頑張り切れず、歯がゆいです。気分が落ち込み、日中まで眠り過ぎることが増えました。
Q 大学の試験期間や帰省をきっかけに勉強習慣がなくなり、数ヶ月ブランクが空いてしまいました。
どこから手を付ければいいかわかりません…。
Q 息抜きのちょうどいい頻度がわかりません。たまに友人と会うと、罪悪感があります。
「頑張りたい気持ちはあるのに、時間はあるはずなのに、行動に移せない・続かない」と学習の継続や習慣化に悩む学生や専念生は非常に多いです。私自身、大学卒業後に学習専念で取り組んだものの、勉強時間のムラや計算の演習不足から、一度挫折した経験があります。
学習量が安定しない場合、「やる気や覚悟が足りない」「怠惰のせい」など自分を責めてしまいがちですが、環境や仕組みを整えることでぐっと改善できるケースが多いです。

高校までとのギャップ
大学受験の場合、高校や予備校という集団の中で、ある程度足並みを揃えて進めます。他方、公認会計士試験の場合には、周りが学生生活や就職活動等に取り組む中で、半ば修行僧のように机に向かい続けることになります。生活リズムの自己管理や環境作り、孤立感との戦いなど、大学受験とは別の困難さが加わります。
また、指定校推薦などで受験の経験が少ない方は、以前書いたこちらの記事も読んでみてください。会計士試験は試験範囲が広いため、定期テストのように完璧に仕上げようとすると、途中でキャパオーバーになります。
<参考>
「【会計士試験】指定校推薦で勉強法に悩む受験生へ ~第2回:”漆塗りのお椀”を作るには?受験勉強のコツ
具体的な工夫
勉強を始めやすくする
・時間割を作る

例えば、講義や復習を、「コマ」として時間割にざっくり落とし込んでみましょう。
・いつ勉強するか?
・どの科目に取り組むか?
・スキマ時間は何をする?
着手するまでのストレスをなくすことが、学習の習慣化に繋がります。
計算科目は講義時間の2~3倍ほどの復習時間を見込み、理論科目(企業法、財務会計論理論、監査論)はスキマ時間を中心に講義時間の半分ほどで復習を進めるイメージです。
息抜きの予定は別の色にしておくと、比率が増えすぎていないか一目でわかります。
また、昼食後の数時間は、集中力が下がるものです。1時間や30分など短時間で区切って、どんどん科目・論点を変えましょう。
アルバイトやサークルについては、12月短答を目指す場合、夏休みから頻度を減らす方が多いようです。特に、本試験直前の2週間や1~2ヶ月は、毎日全科目に触れられるようにできるだけ学習に集中したい時期です。
・学習環境を整える
大学の授業がある日は図書館や自習室、夜や休日は予備校など、自分なりのルールを決めて使い分けてみましょう。また、最初の数ヶ月は順調でも、内容が難しくなるにつれてペースが下がりがちです(特に、連結会計やキャッシュ・フロー計算書、ヘッジ会計など)。自宅学習が続かない場合には、思い切って「家では勉強しない」と決めるのも一つの方法です。専念生ほど、生活のメリハリを意識しましょう。
自宅学習の場合、講義や定期テスト、自習や対面相談などでときおり予備校へ向かうと、孤独感が和らぎます。予備校まで2時間などかかる場合には、オンライン系の相談窓口も活用しましょう。
・朝を制する
「今日は丸一日勉強できるな」と自習室へ向かう準備をしていたはずが、スマートフォンを見始めてしまい、気がついたら昼近くで「もう今日は家でやろうかな」と思ったけど体が動かず、一日が終わった・・・よくある状況ではないでしょうか。
個人的には、「起きてから15〜30分以内に、とにかく家を出る」のがおすすめです。教材や服は、前日に決めてしまいましょう。「朝の自分に期待しない」のがコツです。
・スマートフォンを見過ぎてしまう場合
「我慢しなきゃ」と考えるとかえって気になるため、仕組みで改善を図るのがポイントです。物理的に距離を取る(ロッカーに入れる、自宅学習なら郵便ボックスの内側に入れる)、スマートフォン内の環境を変える(ホーム画面のアプリを整理する、スマートフォンに触れない時間に応じて植物や魚が育つアプリを使う)など、皆さんそれぞれ工夫されています。勉強時間の計測アプリも便利ですが、時間そのものが目的になってしまわないように注意しましょう。
予定は多少ずれるもの
・予備日を設定
体調不良や大学の課題などで、予定が崩れることがあります。週の半ばや後半にあらかじめ予備日を設定して、ずれを吸収しましょう。
女性の場合、微熱が続くなど毎月の不調の時期も見込んでおくと安心です。
体調がすぐれない時は、総合問題は避けて短時間で終わる問題に取り組む、理論科目の講義視聴に切り替えるのもアリです。
・ブランクが生じたら
数ヵ月勉強がストップした場合、遅れを一気に取り戻そうとする必要はありません。まずは通常の受講ペース(財務計算は週2回の講義など)に戻りましょう。早めに講師や受付へご相談ください。忘れてしまった既習分野については、いちから全ての問題をやり直そうとすると、果てしなく感じて学習がさらに止まりかねません。ひとまず、テキストと基礎的な問題に絞って一気に概要を思い出しましょう。
長期戦を乗り切る
・運動でコンディションを整える
受験生には、集中力アップやメンタル回復のために、筋トレを強くおすすめしています。特にスクワットは、短時間で取り組めて負荷も高いです。かかとに重心を置いて10回など日中こまめに行うと、血行がよくなり、脳の疲れが取れやすくなります。筋トレが好きな合格者達からは、「教材が程よく詰まったリュックを背負って、スクワットしていた」という話を複数伺いました。
長時間勉強していると体がこわばってくるので、腕を上に伸ばして脇腹・肩甲骨のストレッチもいいですね。自宅学習なら、3分で終わる全身運動として、ラジオ体操も効果的です。企業法の宮内先生も、司法試験受験生時代にラジオ体操を1日5・6回されていたようです。
<参考>
「TAC人気講師・宮内先生×平林先生のアドバイス!「企業法」論文式対策のコツは?~法律科目の暗記法(後編)」
・計算力が受験期間を通じた支えに
計算力は、長期的なメンタル安定に重要な要素です。早期に演習を大量に積んで計算を得意にしておくと、一時的に成績が伸び悩んでも、凹みすぎずに進められます。「自分には計算がある」という自信が、他の科目に対しても前向きに取り組む原動力になります。計算は、一度伸ばしてしまえば、短時間の演習で維持しやすく配点も大きいため、短答論文ともに必ず強みになります。
・息抜きをどう組み込むか
難関資格に挑戦する以上、友人からの突然の誘いに応じることは難しくなります。自分から予定を組む側になるのも一つの方法です。テスト後にごはんやライブなど予定が決まっていると、「当日晴れやかな気持ちで思いっきり楽しめるように、この2週間や1ヶ月頑張ろう」と短期目標になります。
日曜の夜は早めに切り上げて食事やジムに向かったり、答練後のラーメンやアイスを楽しみにしている方もいらっしゃいます。一人で進める場合も、週の半ばや終わりなどにリセット・ほっとする時間を取ってみてくださいね。講師と雑談などもおすすめです。
*
公認会計士試験は、長期戦です。やる気がなくても勉強が継続できる環境・仕組み作りと、筋トレなどのコンディション管理もぜひ取り入れてみてください。特に専念生の方は、思い詰めてしまいがちなのでご注意ください。自分でうまく進められない場合は、講師などプロを頼ってくださいね。
次回(明日公開予定)は、学習時間が限られる「社会人受験生向け」です。
【プロフィール】
平林 黎(ひらばやし・れい)
TAC公認会計士講座講師(フォローチーム主任、学習相談/学習法セミナー/受講生向け公式LINE/財務会計論-理論質問対応)
1986年東京都多摩市生まれ。国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。体調を崩し、公認会計士試験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得後、公認会計士を再度志す。
2016年論文式試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
下記SNSで主に受験生に向けた情報発信を行っている。
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