
どこ(ワシントン州USCPA(米国公認会計士))
【編集部より】
読書の秋、スポーツの秋など、何かに取り組むのによい季節になりましたね。読者の方の中には、今年は「勉強の秋」として、資格・検定への挑戦を考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は会計系資格スタートガイドとして、これから勉強を始める方に向け、「何から始めたらよいか」をアドバイスいただきます。よいスタートダッシュが切れるように、ぜひ参考にしてください!
はじめに:秋はUSCPA学習を始めるよいタイミング
秋は、夏の予定が落ち着き、資格学習を始めやすい時期です。
社会人であれば、仕事のスケジュールを見直しながら、勉強時間を確保しやすくなります。
学生であれば、後期の授業や生活リズムに合わせて、学習を組み込みやすい時期でもあります。
ただし、秋にUSCPAの学習にとりかかったからといって、すぐに受験・合格できるわけではありません。
USCPA試験を受けるには、まず受験資格を満たす必要があります。
そのため、秋から始めるなら、年内は「いきなり合格を狙う期間」と考えるより、「受験生活の土台を作る期間」と考えるとよいでしょう。
この記事では、秋からUSCPAを目指す方に向けて、最初に何を確認し、どのように学習を始めるとよいのかをお伝えします。
USCPA試験は柔軟だが、簡単ではない
USCPA試験は、科目ごとに受験でき、受験日も自分で設定できます。
そのため、仕事や学業と両立しながら目指しやすい面があります。
とはいえ、「柔軟に受験できること」と「簡単に合格できること」は違います。
USCPA試験では、会計、監査、税務、ビジネス法などの専門的な内容を英語で学び、英語の問題文を読んで解答する必要があります。
また、選択問題だけでなく、資料を読み取りながら判断するシミュレーション問題も出題されます。
暗記した知識だけで太刀打ちできるわけではなく、資料を読んで必要な情報を探し、論点を判断する力も求められます。
USCPA試験は、恐れる必要はありません。
ですが、気軽に挑戦して合格できるわけではありません。
最初に正しい難易度を理解し、必要な勉強量を見込んだうえで始めることが大切です。
USCPAを取って、どこを目指すかを考える
USCPA学習を始めるとき、多くの人は「独学できるのか」「何時間くらい勉強すればよいのか」「英語が苦手でも大丈夫か」「まず何から始めればよいのか」といったことを気にします。
もちろん、それらも考える必要があります。
ただ、それ以上に大切なのは、USCPAを取ってどこを目指すのかです。
たとえば、外資系企業で経理・財務・FP&Aに関わりたい人もいれば、監査法人やアドバイザリーへの転職を考えている人もいます。
英語と会計を掛け合わせた専門性を身につけたい人、海外勤務やグローバル案件に関わりたい人、現職で会計・監査・内部統制の理解を深めたい人もいるでしょう。
USCPA学習は長期戦です。
途中で学習に迷いが生じたときのために、「なぜ自分はUSCPAを目指すのか」をあらかじめ言語化しておくことをおすすめします。
USCPAを目指す目的が明確で、USCPAになりたい理由が強いほど、最後まで学習を続けやすくなるでしょう。
最初に単位状況を確認する
USCPAを始めるなら、最初に確認したいのは、自分の単位状況です。
USCPA試験は、試験範囲を学習して申し込めば、誰でもすぐ受験できるというものではありません。
州ごとに受験資格が定められており、大学で取得した単位の内容によっては、追加で会計単位やビジネス単位が必要になることがあります。
大学で取得した単位が受験資格上どのように扱われるのか、どの州に出願できるのかを自分だけで判断するのは簡単ではありません。
日本の大学で取得した単位が、米国側でどのように評価されるかがポイントになるためです。
そのため、まずはUSCPA予備校などが実施している無料の単位診断を利用し、自分の単位状況とおすすめの出願州についてアドバイスを受けるとよいでしょう。
ここを曖昧にしたまま、とりあえず勉強を始めると、後から「自分にはまだ受験資格がなかった」と分かり、出願準備が止まってしまう可能性があります。
そうなると、学習が進んだとしても、受験タイミングに影響が出てしまいます。
USCPA受験では、試験勉強そのものだけでなく、受験資格の確認や出願手続きも並行して進める必要があります。
まずは自分が受験に向けてどの位置にいるのかを把握することが、最初の一歩になります。
独学か予備校利用かを判断する
単位状況を確認できたら、次に考えたいのが、独学で進められるのか、予備校を利用した方がよいのかです。
USCPA試験は、独学できないわけではありませんが、日本の受験生の場合は、独学のハードルが高めです。
他の資格に比べると、予備校の必要性が高いのは、USCPA試験の特徴の1つでもあります。
単位状況を確認した結果、すでに受験資格を満たしていて、英語での手続きや情報収集に不安が少ない場合は、独学に近い形で進める選択肢もあります。
ただし、出願州の選定、出願手続き、試験予約、学習スケジュールの作成、試験の最新情報の入手まで、自分で行う必要が出てきます。
また、日本語の市販教材だけでUSCPA試験対策を完結させるのは難しいため、洋書教材で学習できる英語力も必要になります。
一方で、追加単位が必要な人や、出願手続きに不安がある人は、予備校のサポートを使う方が現実的です。
費用を抑えたい気持ちはよくわかりますが、独学にこだわった結果、受験資格を満たすまでに時間がかかったり、手続きがスムーズに進まなかったりして、合格までの時間が大きく延びてしまうことがあるからです。
USCPA講座を提供している主な予備校としては、アビタス、TAC、CPA会計学院が挙げられますが、それぞれ特徴があります。
受講料だけでなく、教材との相性、サポート体制、単位取得のしやすさ、質問・相談のしやすさまで含めて、自分に合う学校を選びましょう。
年内は「合格」より「土台作り」
年内は、受験生活の土台を作る準備期間と考えるとよいでしょう。
ここでいう土台とは、基本的な会計知識、基礎的な英語力、そして勉強習慣です。
この3つを少しでも作っておくと、年明け以降の学習に入りやすくなります。
会計学習の経験が少ない人は、いきなり本格的な科目学習に入ると負荷が大きく感じられるかもしれません。
必ずしも簿記検定などの学習から始める必要はありませんが、基本的な仕訳の仕組みや、財務諸表3表である損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書のつながりだけでも理解しておくと、FAR(財務会計)の学習に入りやすくなります。
英語に不安がある場合は、英文法の基礎を復習しておくとよいでしょう。
TOEICで英語力を底上げするところまでしなくても、中学・高校レベルの英文法の基礎があれば、英語の問題文や資料を読む負担が軽くなります。
また、年内は勉強習慣を作る時期とするとよいでしょう。
私の実感としても、勉強が習慣化するまでには2ヵ月ほどはかかります。
秋から勉強習慣を作り始めれば、年内に学習リズムができ、年明けからスタートダッシュを切りやすくなるでしょう。
勉強習慣を作るには、まず「いつ勉強するか」を決めておくことが大切です。
学習時間は、目安として週20時間程度は確保したいところですが、最初から完璧にこなす必要はありません。
朝、通勤・通学時間、昼休み、夜、週末など、自分の生活の中で勉強しやすい時間帯を決め、少しずつ学習リズムを作っていきましょう。
また、勉強時間を確保するには、「何をやるか」だけでなく、「何をやらないか」を決めることも大切です。
SNSや動画視聴、なんとなく入れている予定など、しばらく減らせるものを見直しておくと、USCPA学習に使える時間を作りやすくなります。
さらに、仕事の繁忙期、学校の試験期間、家庭の予定など、忙しくなる時期は勉強のペースを落とせるように設定しておくと、無理なく学習を継続できるでしょう。
まずは1科目合格を目指す
USCPA学習を始めたばかりの段階で、いきなり4科目合格だけを見ると、ゴールが遠く感じられます。
まずは、1科目合格を最初の目標にするとよいでしょう。
1科目でも合格できると、「自分にもできる」という自信になります。
多くの人にとって、1科目目はFAR(財務会計)を軸に考えるのがおすすめです。
FARは会計の土台になる科目であり、他の科目を学ぶうえでも基礎になるからです。
ただし、FARはボリュームがあり、最初に苦戦しやすい科目でもあります。
特に、USCPAの勉強法がまだ確立できていない段階で、範囲の広い科目に向き合うことになるため、大変に感じやすいです。
・講義を聞いても理解が浅い気がする。
・問題を解くと何度も間違える。
・復習しても忘れる。
こうした状態は、最初の科目ではよくあります。
FARで特に大切なのは、完璧主義になりすぎないことです。
すべてを完璧に理解してから次に進もうとすると、なかなか全範囲が終わらず、途中で心が折れてしまいます。
少し分からない部分があっても、いったん先に進み、問題演習を繰り返しながらテキストなどを確認することで、理解がつながることがあります。
まとめ:秋から始めるなら、最初の設計が大切
秋からUSCPAを目指すなら、いきなり合格を急ぐより、まずは受験生活の土台を作ることが大切です。
USCPA試験は、始める前に不安が多いものです。
受験資格、単位取得、英語力、勉強時間など、考えることが多く、最初の一歩で迷う人も少なくありません。
しかし、最初に確認すべきことを一つずつ進めていけば、受験生活はかなり進めやすくなります。
完璧な状態で始める必要はありません。
まずは、自分の単位状況を確認し、独学で進めるのか、予備校を利用するのかを判断するところから始めてみてください。
年内に受験生活の土台ができれば、年明け以降の本格的な試験勉強にも入りやすくなります。
そのうえで、まずは1科目合格を目指すとスムーズでしょう。
USCPA試験は、装備と覚悟があれば頂上にたどり着ける山です。
軽い気持ちで登り始めるのではなく、装備を整え、ルートを確認し、一歩ずつ進んでいきましょう。
なお、USCPA試験制度や学習法について、より詳しく知りたい方は、拙著『USCPAになりたいと思ったら読む本』も参考にしていただければと思います。
<執筆者紹介>

どこ
ワシントン州USCPA(米国公認会計士)
USCPA試験全科目合格後、大手監査法人に転職し、東京事務所の国際部にて、外資系企業をメインのクライアントとする会計監査人になる。
その後タイのバンコクに移住し、米国企業のタイ子会社にて、親会社への会計レポートを担当し、さらに帰国後、日系グローバル企業の東京本社にて、連結決算に携わる。
著書に『USCPAになりたいと思ったら読む本<改訂版>』(中央経済社)がある。
・ブログ(USCPAどこのブログ)
・YouTube(USCPAどこチャンネル)
・Xアカウント(@dokoblog)
【著書紹介】












