会計事務所QUEST~2月の章~確定申告の相談にやってきたのは?

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【編集部より】
会計事務所ではたらく税理士試験受験生に向けて、可愛いイラストで「今月のイベント」がわかる連載を開始します!
さて、今月は……?
第1回目はコチラ

今年もいよいよ確定申告の時期になりました。
今年のバレンタイン(2月14日)は金曜日ですので、そのあとの土日を経て、2月17日(月)~3月17日(月)が確定申告期間となります。

今月のテーマは、「副業の確定申告」です。

昨今、働き方の多様化により、副業をする方が増えています。
2箇所以上の給与所得がある方や、会社員の傍ら事業を営み副収入を得ている方は、おおむね確定申告をする必要があります。
いまやネット検索でたくさんの情報があふれていますし、スマホでも確定申告ができますので、ご自身で確定申告をする方も多いでしょう。

ただ、やはりネットの情報だけではわからないことも多く不安なので、最終的には会計事務所に質問したい!という相談者が多い印象です。
そういう相談者から多い質問として、「事業所得と雑所得のちがい」「必要経費となる範囲」の2つをピックアップしました。早速、みていきましょう!

1.その副業は事業所得?雑所得?

まず、「その相談者の副業はなんの所得にあたるか?」について考えてみましょう。

副『業』というからには事業所得になると思いがちですが、それが不動産賃貸業を営んでいるのであれば不動産所得になりますし、ケースバイケースで雑所得になる可能性も考えられます。
特に、「事業所得か雑所得か」というのは次のような違いがあり、納税額に大きく影響します。

青色申告→事業所得○、雑所得×
損益通算(赤字を他の所得と相殺できる)→事業所得○、雑所得×
損失の繰越(赤字を翌年以降に繰り越せる)→事業所得○、雑所得×
必要経費の範囲→雑所得より事業所得のほうが範囲が広い

納税者のメリットを考えるとダンゼン事業所得にしたいわけですが、どういう場合に事業所得と認められるのか?というのを整理しておきましょう。

事業所得の判定には、「その業務が社会通念上事業として認められるか」という大前提(原則)があります。
これは過去の判例から「儲けるために行われているか」「継続して安定した収益を得られる可能性があるか」などポイントが絞られていましたが、令和4年の改正で、より具体的にイメージできるようになりました。

国税庁HP「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/index.htm

「帳簿書類を記録・保存していて、年間収入(所得ではない)が300万円を超えている」場合であれば、事業所得になると考えてよいでしょう。
ただし、この条件を満たしていても、以下のような場合は事業所得ではなく雑所得とされる可能性が高いです。

①近年3年は副業収入が300万円以下で、本業収入の10%未満である場合
→金額が僅少で本業の傍ら片手間でやっているとみなされ、雑所得
②近年3年は赤字が続いており、赤字解消の取組みをしていない場合
→事業として営利性が認められないため、雑所得
③暗号資産の譲渡や先物取引など投機目的で行われ値上がり益が期待されない場合
→継続して安定した収益を得られないため、雑所得

事業所得となれば青色申告した方がおトクですので、「個人事業の開業届」と「青色申告の承認申請書」を提出しているか、必ず確認しましょう。

青色申告の申請をまだしていないのであれば、R6年分は白色申告ですが、翌年R7年分から青色申告ができるよう、R7年3月17日(月)までに(本来は3月15日期限)提出するようアドバイスしてあげるとよいでしょう。

2.必要経費になるのは?

さて、事業所得の場合、次に気になるのは「どこまで必要経費にできるのか」ということです。
事業所得は以下の式で求められるため、必要経費が多いほど、所得税は少なくなります。

事業所得=総収入金額-必要経費

事業者の行う支出は、大きく以下の3つに分けられます。

①必要経費(事業遂行上必要な支出)
②家事費(事業と関連のない家事消費のための支出)→必要経費に算入できない
③家事関連費(必要経費と家事費の両方の性格をもつ支出)→一部は必要経費に算入できる

③の家事関連費について、「合理的な割合」で事業部分を分けられる場合は、その部分を必要経費に算入してよいとされています。
実務的には、「その支出の主たる部分(50%超)が事業遂行上必要であるかどうか」で、以下のような目安があるといわれています。

・主たる部分が事業遂行上必要となる支出だが趣味・娯楽などにも関連する
→事業内容などを鑑み、支出額の50~70%が必要経費に算入できる
・主たる部分が趣味・娯楽などに関連する支出だが事業遂行上必要な部分がある
 →その部分を明らかに区分できる場合は、その部分を必要経費に算入できる(ただし白色申告の場合は必要経費に算入できない)

たとえばメガネやカツラは一般的には家事費に該当しますが、タレントやYouTuberが特殊なデザインのものを自分の個性を出すために、仕事に限って使用しているのであれば、事業遂行上必要であるといえるでしょう。ただし、エステや植毛など、生身に関わるものは事業遂行上の必要性を認めるのが難しいと考えられます。
実際にどこまで必要経費になるかは、事業者がどのような事業を行っているかにもよりますので、ケースバイケースです。

なお、必要経費に算入できる「合理的な割合」とは、たとえば以下のようなものを基準にします。

・自宅の一部を仕事場としている場合の地代家賃
→自宅に占めるその部分の床面積や部屋数
・携帯電話を仕事で使う場合の通信費
→仕事での使用割合(3回のうち2回は仕事で使う、などの頻度)
・仕事でもプライベートでも使う車両のガソリン代、自動車保険料など
→仕事目的で使った走行距離や走行時間

また、販売するはずの商品を自分用に消費したり、友人にプレゼント(贈与)した場合には、「自家消費」に該当します。
こういう場合には、原則として通常の販売価額(定価)を売上計上しなくてはなりません。ただし特例として、仕入金額と定価の70%のどちらか高いほうの金額で計上することも認められていますので、利益(所得)が少なくなるように売上計上すれば問題ありません。
ただし、まったく売上計上しないのは、税務調査で発覚した場合に罰金が課される可能性がありますので、注意しましょう。

さいごに

昨今いろんな副業がありますので、確定申告も一筋縄ではいかないことが増えている気がします。
また、YouTubeなどから情報を仕入れた事業者が、「これはどういうことですか?」など質問してきて、その対応に時間をとられることもあるかもしれません。
こうした質問者に対しては、所得税の基本的な考え方をもとに、わかりやすい言葉で教えてあげることが大切かと思います。
2月は短いですが、余裕をもってスケジュールをたて、申告を進めていきましょう。
そして寒くなってきましたので、くれぐれも体調には気をつけてくださいね!

<著者紹介>
定岡 佳代(さだおか かよ)

税理士
兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。
関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。
硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。


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