梨井俊(税理士)
【編集部より】
さる11月29日(金)、令和6年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!
合格率は18.7%とこれまでにない高い数値
まずは本試験、本当にお疲れさまでした!
結果に対して、喜びや悔しさ、いろいろな気持ちがあるかと思いますが、これはまだまだ続く勉強人生の中のひとつの通過点です。
今の感情を大切にしつつ、ひと呼吸おいて、次のステップに向けた方針をしっかりと立てていきましょう。
さて、2024年度の相続税法は、受験者2,515人のうち471人が合格し、合格率は18.7%とこれまでにない高い数値を記録しました。
この結果からも、今年の試験は、比較的取り組みやすい問題構成だったと考えられます。
出題量は少なめで、極端に難しい問題はありませんでしたが、手が止まるようなポイントや、つい記載を盛り込みすぎたくなる箇所も散見されました。
それでも、多くの受験生がスムーズに解答を進められたことが、この高い合格率に繋がったのではないでしょうか。
ある意味では「ボーナス回」とも言える試験だったかもしれません。
初学者や長年苦戦してきた方からの合格報告が多かったこともあり、私自身としてもうれしいです。
今後の学習アドバイス
「出題のポイント」に注目すると、「実務」というキーワードが!
ここからは、次の試験に向けた具体的な学習アドバイスをお届けします。
まずは国税庁が公表した「出題のポイント」に注目して、重要テーマをおさらいしてみましょう。
出題のポイント:
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/point2024/05.htm
理論問題では、贈与税と相続税の相互関係をしっかり理解することが求められました。
中でも、贈与税の配偶者控除や相続税との関連性は、実務でも欠かせない知識です。
また、租税回避を防ぐための法人課税ルールも重要なテーマでした。
一方、計算問題では宅地評価や株式評価、債務控除、生命保険金の課税関係といった、実務に直結する内容が数多く含まれていました。
「実務」というキーワードが目立ちます。
相続税法も近年は改正も多く申告書の提出義務者も増えていることがこの要因だと推測されます。
実務で使えるレベルに知識を昇華するには
実務で活用するには、知識を単に「知っている」だけでは足りません。
「使える」「伝えられる」レベルで習得することがポイントです。
では、どうすれば「使える知識」に昇華できるのか。
まず、これは本当に基本中の基本ですが、「勉強時間を確保すること」が最優先です。
仕事や家庭との両立が必要な方には耳が痛い話かもしれませんが、現実問題として、ライバルたちの中には、おそらく忙しいあなたの倍以上の時間を勉強に費やしている人もいます。
「もう少し頑張れる」余地があるならば、ぜひここで気持ちを引き締めてください。
目標はただ一つ、合格だからです。
そのうえで、理論と計算のバランスを意識しましょう。
スケジュールを細かく分け、得意分野を伸ばすだけでなく、苦手分野の克服にも時間をかけることが大切です。
私は普段「予備校の得点分布で、平均点の10点上が上位30%で、その上位30%には理論計算それぞれ5点ずつ平均点を超えることが大切です」とお伝えしています。
理論と計算とは出題者が違うので別々に採点される可能性が高く、足切りの存在は否定できません。
このイメージを持ちながら、理論と計算のどちらにも偏らず、バランスよく合格レベルに到達する計画を立てましょう。
さらに大切なのは、「受験科目の背景や実態に興味を持つこと」です。
本試験で通用する実力を身につけるには、制度の趣旨や背景を深く理解することが必要です。
学習を進める中で、「結論を自分の言葉で説明できる」だけでなく、「その結論の理由(根拠)を提示できる」ことが求められます。
この「自分の言葉で理由を説明する力」は、意識して練習しなければなかなか身につきません。
演習問題では、暗記に頼らず、「もっと知りたい」「詳しくなりたい」という興味関心を持つことが、合格への確実な一歩になります。
最後に
私自身、何度も不合格を経験しました。
そのたびに振り返り、どの部分が足りなかったかを分析して次につなげてきました。
税理士試験は相対評価です。
満点を目指す必要はありませんが、他の受験生より一歩抜きん出る得点を取ることが求められます。
この記事が少しでも多くの受験生の役に立てば幸いです。
引き続き皆さんを応援しています!
〈執筆者紹介〉
梨井 俊(なしい・しゅん)
税理士
大手専門学校で相続税法の講師を務めるかたわら、月次顧問を主な業務とする開業税理士。大学受験の学習塾で英語講師を8年間務めた経験から、学習法や覚える仕組みを資格試験の勉強にもあてはめ、活用法や座学と実務の違いなど、積極的に情報発信も行っている。
<編集部からのお知らせ>
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