たっけ
【編集部より】
USCPA(米国公認会計士)試験の受験を検討する人にはさまざまなバックグラウンドがあるそうです。そのため、受験をスタートする時点での経験、受験勉強を続ける環境も人それぞれ。たとえば、簿記・会計の前提知識の有無によっても、試験対策の方法や戦略が変わるでしょう。
そこで、本企画では、異なるバックグラウンドのUSCPA合格者に、受験エピソードを教えて頂きました。これから受験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
なお、USCPA試験は2024年から新試験制度に移行しました。合格体験記の中には旧制度での合格者もいますのでご留意ください。
受験生活を振り返って
2022年初旬、USCPAの予備校アビタスに入学しました。会計の知識はゼロ、英語も得意ではない状態からのスタートで、合格するには相当な努力が必要なタイプの受験生でした。
当初は「勉強すればなんとかなるだろう」と軽く考えていましたが、現実はそう甘くはありませんでした。
不安に苛まれる日々が続き、特に不合格が続いた時期は精神的に追い詰められ、「こんなに勉強しているのに、なぜ合格できないんだ?」と自問することさえありました。それでも、諦めずに挑み続け、今年の6月末にようやく全科目合格(FAR、AUD、REG、ISC)を果たすことができました。
振り返ってみると、自分一人の力ではなく、家族や友人、そして学習を支えてくれた方々の存在がいかに大きかったかを痛感します。
USCPAを目指すまでの背景
私がUSCPAを目指すきっかけは、暗号資産メディアの立ち上げと運営に携わった経験でした。メディア運営を通じて、ブロックチェーン技術の「堅牢性」と「透明性」が会計や監査の分野に最適ではないかという考えが芽生えたのです。
そして、この技術が将来、会計や監査の未来を支える不可欠な存在になると確信し、その中心で活躍するために会計士を目指す決意を固めました。
USCPA(米国公認会計士)を勧めてくれたのは妻でした。私は、日本だけでなくグローバルに活躍したいという強い想いを持っていたため、日本の会計士資格よりも国際的に通用するUSCPAが自分に合っていると感じました。
こうして、USCPAへの挑戦が始まったのです。
連続する不合格をどう乗り越えたか
FAR(財務会計)とAUD(監査及び証明業務)で何度も不合格を繰り返し、本当に苦しい時期を過ごしました。合格するためには、理解と知識が確実に「合格レベル」に達していなければなりません。しかし、難関資格を受けた経験がなかったボクにとって、その「合格レベル」がどれほどのものかを掴むのは非常に難しかったのです。
FARでは、何度も不合格を経験した後、ようやく合格しましたが、その時も「本当に合格レベルに達していたのか?」という確信は持てず、運が良かっただけだと感じていました。
そのため、次のAUDでも同様に苦戦することに…。自分なりの「合格レベル」に達する勉強スタイルを確立できていなかったため、FARの経験を次に活かすことができなかったのです。
結果として、AUDでも複数回の不合格を経験し、いわゆる「AUDの沼」にハマってしまいました。模擬試験では合格ラインに達していたのに、本番ではスコア54という結果に終わり、完全に行き詰まりました。
どうやって勉強を続けていけばいいのか全くわからなくなり、途方に暮れたボクは、アビタスの担当者に相談することにしました。
担当者からは「教科書をしっかり読み込み、理論を自分で誰かに説明できるレベルまで理解することが重要だ」というアドバイスをもらい、それを実践することにしました。
担当者のサポートもあり、私の勉強スタイルは大きく改善されました。本当に感謝しかありません。
その後、次に受けたAUDではスコア74という惜しい結果に終わりましたが、「次は必ず合格できる」という自信がつきました。そして、再挑戦の末、スコア78で合格することができ、ようやく「AUDの沼」から抜け出しました。
この経験を通じて、自分に合った「合格レベル」に到達するための勉強スタイルを確立できたのです。
勉強スタイルを確立するために大切だったこと
Twitter(X)で広がったUSCPA受験生との交流
2023年5月頃から、Twitterで勉強の進捗を投稿し始めました。それをきっかけに、他のUSCPA受験生たちの投稿がタイムラインに流れるようになり、自然とつながりが広がっていきました。
特に、AUDで何度も不合格を経験していた時、同じように苦しんでいる受験生の投稿を見つけ、思わずDMを送ったのです。そこから会話が弾み、アビタス近くでお茶をすることになりました。
こうしてリアルな人間関係が生まれたことで、勉強へのモチベーションがさらに高まりました。
週末の勉強ルーティン(スタバ → 自習室 → アビランチ → 自習室 → 撤収)
週末は、朝からマインズタワーのスタバで勉強を始め、その後はアビタスの自習室で集中して勉強するというルーティンが自然とできあがりました。
昼には他の受験生たちと「アビランチ」を楽しみ、午後も自習室で夜までしっかりと勉強。このリズムは非常に心地よく、効率的に学習できる環境が整いました。
他の受験生たちもこのルーティンを取り入れており、アビタスの自習室が開く11時まではスタバで勉強することが多かったです。教科書や問題集を広げている人も多く、勉強仲間と共に切磋琢磨する時間が貴重でした。
「アビランチ」とは、アビタスでUSCPAの勉強をしている仲間たちと、マインズタワー周辺でランチを共にすることを指します。受験勉強の合間にリフレッシュできる貴重な時間であり、情報交換を通じてお互いの関係を深める場でもありました。
短時間で気軽に集まれるため、時間を有効に使える点が魅力です。Twitterで「アビランチしませんか?」と呼びかけると、誰かが反応して一緒にランチをすることができ、そこから友達の輪がどんどん広がっていきました。
自習室で勉強を終えた後、マインズキューブの写真を撮って投稿するのは、多くの人が実践している「撤収ルーティン」です。私もこのルーティンが好きで、勉強を頑張っている仲間たちが「いいね」を押してくれることで、互いに切磋琢磨し、励まし合っている感覚が生まれます。
平日の勉強ルーティン(朝マクド → 仕事 → 追いコメダ珈琲)
平日の定番ルーティンは、朝はマクド、夜はコメダ珈琲で過ごすことです。
私は、仕事と勉強を場所で切り替えるタイプで、家やオフィスでは基本的に仕事に集中したいと考えています。そのため、勉強はカフェや自習室で行うようにしています。
この環境の使い分けが、仕事と勉強にメリハリをつけ、効率よく両立するために非常に効果的です。
ソラシティでの受験報告
受験会場であるソラシティ。試験が終わると、ソラシティの写真を撮り、感想とともにSNSに投稿するのが恒例になっています。
すると、多くの人から「お疲れ様でした」というリプライが届き、この言葉が本当に嬉しいです。受験生同士が互いの努力を称え合う雰囲気があり、その瞬間はとても心温まります。
スコアリリース、祝福と励ましの声
スコアリリースの際にも、同じようなやりとりが繰り広げられます。合格すれば「おめでとう」のメッセージが届き、不合格の場合には「次は大丈夫」と励ましの言葉が寄せられます。
こうした温かい反応が、モチベーションを維持する大きな支えとなっているのです。
失敗だった勉強法
勉強時間にこだわりすぎたこと
勉強時間を確保すれば合格できると思い込んでいましたが、実際には「どれだけ内容を理解できたか」が重要だと気づきました。理解度を基準に学習を進めるべきだったのです。
このことに気づいたのは、勉強を始めてから約1年4ヵ月後のことで、もっと早く気づいていればと反省しています。
特にAUDに苦戦した際、「量より質」が勉強の鍵だと痛感しました。必要な勉強時間は確保しつつ、理解の深さや理論を説明する力に重点を置くことが最も効果的だと感じました。
「自分が先生になったつもりで、他人に正確に説明できるかどうか」が、理解度を測る最も確かな方法だと感じています。
闇雲に問題を解きまくること
問題をたくさん解いて「勉強した気」になっていましたが、それだけでは不十分だと気づきました。実際、問題を解いた後こそが、本当の勉強の始まりです。
解けなかった問題や理解が不十分な論点を、自分の知識に変えることこそが重要だと学びました。そのため、理解が浅い論点に立ち返り、解法をしっかりと身につける必要があります。
継続に固執しすぎたこと
ただ闇雲に勉強を続けるだけでは成果が出にくいことも実感しました。継続することは重要ですが、常に改善しながら進めることが大切です。
私は「続けること」だけに固執していましたが、それを見直したことで勉強がより効果的になり、2024年には2科目とも一発で合格できました。
「継続は力なり」ではなく、「改善ある継続こそ力なり」だと強く感じています。
最後に
懸命に努力し、その成果を手にしたときの喜びは、言葉では表現しきれないものがあります。私にとって、USCPA全科目合格はまさにその瞬間でした。
目には見えないけれど、この経験と資格は、これからの人生において非常に大きな意味を持つものになるでしょう。私は、会計や監査の分野でビジネスに貢献したいという強い想いを抱いており、ようやくスタートラインに立ったと実感しています。
USCPAの勉強は決して順風満帆ではないかもしれません。困難に直面したときは、学校の担当者や同じ目標を持つ仲間に相談すると良いでしょう。
本文でも触れたように、信頼できる仲間とともに走り抜けることを強くお勧めします。そんな仲間は、一生の財産になるはずです。
最後までこの文章を読んでいただきありがとうございます。質問があれば、いつでもTwitterのDMに気軽に連絡してくださいね。
<執筆者紹介>
たっけ
兵庫県西宮市出身。早稲田大学人間科学部卒業。
2024年6月にUSCPA全科目に合格し、現在は監査法人でIPO業務を中心に従事。
新卒で幻冬舎に入社後、暗号資産メディア「あたらしい経済」を立ち上げ、6年間にわたり編集者として携わる。
スタートアップイベントへの登壇やメディア出演など、多岐にわたる活動を展開してきた。
・Xアカウント(@takeee814)