【11月20日施行日商簿記】次のステップor再受験? 名物講師がアドバイス!


渡邉圭(千葉商科大学基盤教育機構准教授)

【編集部より】
11月20日(日)に施行された第162回日商簿記検定試験。「商業簿記」がTwitterのトレンド入りするなど、話題にもなりました。受験した方は手応えいかがでしたか? 
この記事では、毎年多数の日商簿記検定合格者を輩出している千葉商科大学の会計教育研究所「瑞穂会」の名物講師・渡邉圭先生に、手応えや得点別に、次のステップに進むのか、再受験を検討したほうがよいのかといったアドバイスをいただきました。記事の最後には、Twitterで話題になった今回の1級試験の難易度に関するアンケートも収録しています。
ぜひ参考にしてください!

日商簿記から次のステップへ

日商簿記の受験者には、次の学習に向けて準備をされている方もいると思います。今回は、試験後にどう学習を進めればよいかについて紹介します。3級と2級は手応え別に、1級は自己採点の点数と難易度をもとにまとめましたので、今後の学習計画のヒントにしてください。

日商簿記3級受験者-学習計画と次のステップ

日商簿記3級(統一試験)の合格発表は、試験終了後2週間程度が目安です。受験申込をした商工会議所HPで成績が確認できます(各商工会議所で異なるので注意)。この記事が公開された時点ではまだ合否は公表されていないので、(ざっくりとですが)手応え別に今後へのアドバイスをしていきます。

「合格間違いなし」の手応えの方

下の図表1は、今回の試験の手応えごとに今後の学習内容と次のステップを示しています。日商簿記検定では、100点満点中70点が合格の基準です。そのため、「7~8割以上できた!」という手応えのある方は、日商簿記2級へステップアップしましょう。

【図表1】手応え別の学習内容と次のステップ(3級編)

少し手が届かなかったかも…という方

「もう少しで合格だったかな…」(点数だと60点以上70点未満が目安)というギリギリ不合格だった場合、これまで学習してきた模擬試験問題集などを使って次回の統一試験に向けて演習を重ねることが望ましいです。でも、「早く日商簿記2級にステップアップしたい!」という方は、ネット試験での受験を考えてもよいでしょう。合格後は、すみやかに日商簿記2級にステップアップして学習を開始してください。なお、ネット試験の場合は、試験終了後すぐに合否結果がわかる一方で、統一試験に比べて受験料が500円程度(事務手数料がかかるため)高くなりますのでご注意を。

全然解けなかった…という方

「半分くらいしか解けなかった…」(点数だと60点以下が目安)という場合、持っている問題集と模擬試験問題集等を使い、次の統一試験まで同じ問題を繰り返し演習しましょう。苦手な論点を学習するときは、テキストへ戻って学習するのもおすすめです。

日商簿記2級受験者-学習計画と次のステップ

図表2に、日商簿記2級受験の手応え別に、今後の学習内容と次のステップを示しました。

【図表2】手応え別の学習内容と次のステップ(2級編)

合格間違いなしの手応えの方

このフローチャートでは、日商簿記1級、税理士試験、公認会計士試験、他の資格試験のいずれかにステップアップしたいと考える受験生を想定しています。税理士試験、公認会計士試験に挑戦したいと考える方であっても、一度は日商簿記1級の教材を参考にして学習を進めることをおすすめします。というのも、両試験ともに長期の受験期間を有し、かつ、難易度は極めて高いためです。

そのため、日商簿記1級の学習を経験した後に、税理士試験や公認会計士試験へ挑戦を決めても遅くありません。社会人の方は、仕事以外に学習時間を確保する必要があります。学生の方は、日商簿記2級合格後、日商簿記1級合格を目標にして、合格もしくはその学習過程で税理士試験または公認会計士試験の受験を検討してもよいでしょう。

少し手が届かなかったかも…という方

「少し手が届かなかったかも…」(点数が55点以上70点未満を目安)の方は、ネット試験を受験して2級合格を目指しましょう。日商簿記3級からの受験勉強のノウハウも活かしながら早期に合格できるよう、持っている模擬試験問題集などを使い学習を進めてください。統一試験終了後から1ヵ月以内を目安に合格できれば、統一試験合格者と同様に、次のステップに進むことも可能です。

全然解けなかった…という方

「全然解けなかった…」(点数が55点未満を目安)の方は、苦手な論点がいくつかあると思います。次回の統一試験を目標に、これまで使ってきた問題集と模擬試験問題集を使い学習を進めてください。

日商簿記1級受験者ー学習計画と次のステップ

さて、Twitterでトレンド入りしていた日商簿記1級については、難易度も踏まえて次のステップに進むか、再受験するかを検討したほうがよさそうです。

すでに問題は公表されていますが、おおまかな出題内容は次のとおりです。

・商業簿記:収益認識を中心とした貸借対照表の作成
・会計学:収益認識、連結会計(追加取得)、新株予約権付社債
・工業簿記:部門別、ABC基準
・原価計算:理論、業務的意思決定(機会原価)

今回は、私が講師を務める千葉商科大学の会計教育研究所「瑞穂会」の受講生のうち、実際に11月20日の日商簿記1級を受験した学生にその手応えと試験の難易度を聞いてみました。図表3にアンケート結果としてまとめています。

【図表3】第162回日商簿記1級に関する難易度アンケート調査
(出所) 筆者作成。千葉商科大学会計教育研究所「瑞穂会」の受験生(67名)から回答

図表3を見ると、商業簿記は解答が困難と感じた受験生が多い問題で、会計学も標準的な問題よりも解答が困難と感じた受験生が多い結果になりました。一方、工業簿記は標準的、原価計算も標準的と回答している学生が多いです。
全体としてはやや難易度が高めのため、標準的な問題で点数を稼げたかが合格のポイントになります。70点以上が合格するという絶対評価の試験ですので、従来より合格率が低めに出る可能性はあるでしょう。

そのため、今回の試験で合格確実な点数を獲得できた方やそこそこの点数(60点台後半)をとれた方は、12月からは税理士試験の簿記論や財務諸表論の受験へ向けた学習や、公認会計士試験の受験を検討してもよいと思います。また、もし今回不合格でも、翌年6月に開催される日商簿記1級と簿記論を並行して受験するものおすすめです。
65点以下の場合は、日商簿記1級の再受験を検討しましょう。再受験にあたっては、年内は問題集を中心に復習し、翌年から模擬試験問題集を使った演習をしてください。専門学校の公開模試を利用して本試験の疑似体験をするのもよいでしょう。

重要性が増す簿記会計スキル

ここまで日商簿記の試験終了後に行う学習計画とその方法について、級ごとにご紹介しました。最近では、会計リテラシーの重要性を主張する意見が多々見られます。Uber Eats配達員のように個人事業主として働き、自己責任のもと確定申告や資金管理が必要となる働き方も導入されています。今後、簿記会計のスキルは皆さんにとって非常に重要なものとなります。是非、日商簿記を通じて簿記会計のスキルを習得し、幅広い進路選択ができるようにしていきましょう。
この記事が受験生のみなさんの参考になれば幸いです。

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)

千葉商科大学基盤教育機構で准教授を務める傍ら、会計教育研究所「瑞穂会」で税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)と日商簿記検定1級~3級講座を開講し、ともに多数の合格者を輩出している。

千葉商科大学 会計教育研究所 瑞穂会ホームページ


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