<編集部より>
会計人コースWebでは、会計士・税理士・簿記検定を中心に勉強法を取り上げていますが、「どんなやり方が自分に合っているの?」とまだまだ模索中の人も多いハズ。
そこで、今回は「他資格から勉強法のヒントを学ぼう!」ということで、行政書士受験のレジェンド講師・横溝慎一郎先生(LEC専任講師・写真左)と令和3年度行政書士試験に一発合格した山本絢香先生(行政書士・写真右)に対談をしていただきました(全3回)。
令和4年の行政書士試験は11月13日(日)に実施される予定で、今はまさに超直前期。第1回の今回は、山本先生が行政書士を目指した理由や資格試験全般に共通する勉強法についてのお話です。
宅建士合格から行政書士の受験勉強をスタート
編集部 本日は、「行政書士試験 一発合格する人の勉強法」をテーマに、横溝慎一郎先生(LEC専任講師)と、横溝クラス出身で令和3年度試験に一発合格したばななちゃんこと山本絢香先生(行政書士)にお話をいただきます。
今回はオンライン(Zoom)対談ですが、お二人がお会いになるのはお久しぶりとのことなのでぜひじっくりお話を聞かせてください!
山本先生 横溝先生、お久しぶりです! 本日はよろしくお願いします!
横溝先生 お久しぶりです。画面越しですが、会うのはかなり久しぶりですね。昨年の本試験後や合格発表後の個別相談でお話しした以来でしょうか。
山本先生 そうですね。その前には、記述式の答案をLECの渋谷駅前本校に持って行って、採点していただいた記憶があります。
横溝先生 そうでしたね。多分、半年前ぐらいですかね。今はすっかり行政書士の仕事で忙しいですか。開業されたのですよね。
山本先生 はい、2022年4月15日に開業しました。
横溝先生 それは、おめでとうございます。また実務の話も後で聞かせてくださいね。
さて今日は、「一発合格する人の勉強法」というお題が与えられていますが、そもそも山本さんが行政書士試験を受けようと思ったきっかけって何ですか。
山本先生 はい、これはよく聞かれることでもあるのですが、実は行政書士試験を受ける前に「宅建士」の資格を取っていまして、その受験勉強の時にお世話になった恩師から、「行政書士試験を受けてみなよ」と言われたんです。
私はずっと「やらないです」と答えていたのですが、いよいよ3回目に言われた時に、「できないと思っている人には、ここまで言ってくれないだろう」と思ったんですよね。
その気持ちに答えたくて、それで勉強し始めたというのがきっかけです。
なので、受験勉強を始めてから半年経つまで行政書士がどういう職業かということを正直わかっていない状態で受験勉強を始めました。
横溝先生 その先生は、なぜ山本さんに行政書士の資格を勧めたのでしょうね。
山本先生 なんでしょう。その先生は「やってみなよ」とチャレンジを応援してくれるタイプのポジティブな先生で、その先生がそこまで言うということは「できる」と思ってくださったのかなと。そう思って挑戦しました。
横溝先生 そうなのね。そういうきっかけもありますよね。宅建士に合格後、行政書士試験に挑戦して一発合格されましたが、行政書士の受験勉強は最初どうでしたか。
山本先生 まず、どの専門学校にするかから悩みました。当時は実家の山梨に住んでいたので、そこから通えるという条件で調べてLEC新宿校に電話したんです。
その時に相談に乗って下さった方が電話を切る間際に、「渋谷校の横溝先生も人気ですよ」と教えてくれたんですね。
それで横溝先生のことを調べていくうちに「この先生についていこう!」と思ったんです。
渋谷から山梨への終電が23時だったので、22時に横溝先生の講義が終わって質問して、家に帰るのが夜中1時とかだったんですよね。
横溝先生 それは交通費も大変でしたね。
山本先生 勉強面では私は最初、日曜日の横溝クラスを申し込んでいたのですが、平日のクラスはカリキュラムが「民法」からスタートすると後から知ったんです。
私は宅建試験の権利関係などで民法の学習経験があったので、すぐに平日コースに切り替えました。
民法から入れたおかげで、初めはスムーズに楽しく勉強を始められました。
横溝先生 最初がそれだといいよね。
逆に、苦戦したところはありますか。「行政法」が苦手だという人も多いですが。
山本先生 私の場合は、もともと「憲法・基礎法学」と「一般知識」がとても苦手で、かなり厳しかったです。
「行政法」はむしろ好きで得意なほうでした。ただ、その中でも地方自治法は苦手でつまずいてしまいましたね。
横溝先生 つまずいた時にどう乗り越えたのですか。
山本先生 私の性格的に、「わからないところをわからないままにしておく」ということがすごく嫌なんです。「後で調べればいいや」と思ってしまうと、明日になったらどこがわからなくなったのかも忘れてしまうので、その都度、付箋に「ここのどこがどのようにわからなかったのか」を書いて貼っていました。
わからないところすらわからないという人もいると思うんですけど、私は自分のわからないところをまず明確にして付箋に残していました。
それで、ほぼ毎回、講義の後に横溝先生に質問していたので、確か質問に行かなかった日に横溝先生から「今日は質問ないの?」って逆に聞かれましたね。
それがすごく嬉しかったです。
横溝先生 なんかね、いつも質問に来ているので来ないと「あれ、今日は体調でも悪いのかな」とか思って聞いた記憶があります。
確か、他にも何か資格を持っているんでしたっけ?
山本先生 法律とは全然違うんですけど、高圧ガス製造保安責任者という国家試験の乙種という資格を持っています。
ただ私は理系の知識が本当にゼロなので、それも結構苦戦しましたね。
どの試験でも共通する勉強のやり方
横溝先生 内容は違うにしても、その経験ややり方が行政書士試験の勉強で役に立ったことはありますか。
山本先生 どんな試験でも共通したことなんですけど、私の場合は初めにまず分析から入るんですよ。「その試験がどういった試験で、この試験ではどのようにやっていくのがベストなのか」と。
なので、行政書士試験でも、初めに情報収集をしてから始めました。
横溝先生 なるほどね。敵の状態をちゃんとわかってから、ですね。
山本先生 やっぱり試験によって違うので、そこをまずはっきりさせてから始めます。
横溝先生 行政書士試験の場合は事前に調べてどういう戦略を練ったんですか。
山本先生 「行政法」は確実に、もう満点に近いぐらい取るって決めていました。
あと、最近の傾向では「会社法」が取りやすくなっていますよね。
でも、捨ててしまう方がすごく多いので、それは本当にもったいないと思っていました。
だから、「会社法」は商法から1問、会社法から4問出るので、商法は落とさず確実に取って、会社法もメインとなる機関設計や取締役会といった論点は完璧に仕上げていました。
「基礎法学」の2問については、正直何が出るかわからないので、それらを落としてしまった時のためにも会社法は絶対に落とさないように勉強していました。
横溝先生 なるほど、明確な戦略があったのですね。
勉強時間はどうでしたか。直前期とその前とでは勉強時間は違いましたか。
山本先生 それはあまり変わってないです。
仕事がないときですと18~20時間近く勉強していたこともありますが、仕事や予定があるときは朝と昼や、朝と夜に時間を分けて最低でも5〜6時間は勉強していました。
横溝先生 うまく時間を取って勉強していたんですね。
山本先生 そこは徹底して、勉強しない日を絶対に作らないようにしていました。
朝2時間はやく起きたり、美容院の待ち時間なんかも時間がすごくもったないので『六法』を持って行ったりもしていました。
横溝先生 美容院で『六法』を読んでいたら…だいぶ不思議な感じですよね(笑)。
山本先生 はい、相当驚かれました(笑)。
行政書士試験「記述式」の勉強法
横溝先生 行政書士試験の場合、「民法」と「行政法」で選択式だけでなく記述式の問題が出るのが特徴的ですよね。「記述式」の勉強で意識したことはありますか。
山本先生 ありました。例えば「過失」と「重過失」って全然意味が違いますよね。そういった細かいところも、初めから意識して記述問題を解くようにしていました。
というのも、本試験で他の受験生の選択式問題の出来がいいと、記述式で厳しく採点されてしまいそうで怖かったので…。
横溝先生 直前期になってから、記述式対策で意識したことはどうですか。
山本先生 記述式対策は後回しにする人も多いと思いますが、私は比較的早い段階から記述式も意識していました。
ただ、初めからすごく力を入れていたわけではなくて、どういった問題が出て、どのように書かせられるかというところを「見る」ようにしていました。
横溝先生 そうすると、文章を書く練習というのは、具体的には9月頃から取り組み始めた感じですかね。
山本先生 そうですね。それで私が感じたのは、「普段、択一式の勉強をしっかりしていれば、記述って結構書けるな」と。
なので、記述に関しては、苦手意識が初めからありませんでした。
先ほども言ったんですけど、テキストでのインプットもかなり大事にしていたので、初めから書きやすかったですね。
横溝先生 結構苦手意識を持つ人も多いですけどね。
山本先生 そうですよね。
今回、横溝先生の新刊『行政書士試験 記述式・多肢選択式の解き方がわかる本』(中央経済社)を見たのですが、「まずは問題文を1回読みましょう」とか、「何が問われているのか」とかがステップで書かれているので初心者の方でもかなりわかりやすいなって思いました。
私が受験生の時にあったらすごく使いたかったですね。
横溝先生 ありがとうございます。普段、私の授業を受けている人にはそんなに違和感なく見てもらえるかなとは思っていたので、そう言ってもらえて良かったです。
2色のマーカーペンと黒鉛筆でテキストをオリジナル化
横溝先生 直前期の勉強で一番心がけたことは何かありますか。
山本先生 学習を始めた時と直前期で変わったことといえば、「数字」などの細かいところは直前期まで実はあまり手をつけていなくて、直前期に数字を詰める形で暗記していきました。
あとは直前期にはアウトプットを重視したほうがいいとよく言われると思うんですけど、私は「インプット」もかなり最後のほうまで大事にしていました。
直前期でも、イントプットとアウトプットで同じ比率のくらいでやっていて、最後までそれは変わらなかったですね。
横溝先生 初めて勉強すると、知識が元々入っていないところも多いでしょうからね。
山本先生 はい。基本的なことが頭に入っていない状態で、ただ問題を解いているだけだと、単に答えを○×で覚えてしまうだけの状態になるので、インプットも大事にしていました。
横溝先生 直前期のインプットのやり方で、学習を始めた最初の頃と何か違ったこととかはありますか。
山本先生 ありますね。答練や模試が増えてくるので、間違ったところをその問題用紙に書き込むのではなくて、テキストにどんどん書き込むようにしていました。普段持ち歩くテキストに、どんどん付け足しで書いていって、自分だけの「オリジナルテキスト化」するような形でまとめていました。
横溝先生 そのテキストをオリジナルに作る時、工夫したことはありますか。人によっては色分けしたり、シールを貼ったり色んな合格者がいますけれども。
山本先生 私の場合は、色分けもほぼしていなくて、基本色は2色で、横溝先生が授業中に原則・例外と言った部分にマーカーを引いていました。あとは、鉛筆で自分が読めるぐらいの字で、かなり殴り書きしていました。時間をかけてなるべく丁寧に書いてしまったりすると、それだけで勉強した気になってしまうので、あくまでも自分が読める字であればいいと思って、どんどん殴り書きでメモしていましたね。
横溝先生 授業中は私も2色しか使っていなかったですもんね。そのほうが、多分頭の整理にはいいのでしょうね。
山本先生 はい。でも、マーカーを使う方は5~6色使ってカラフルにしていると思うんですけど、私は2色のみで、あとは黒文字で書いているぐらいです。それが一番合っていました。
(第2回に続く)
<対談者紹介>