【会計士試験】CPA講師・植田先生に聞く! 論文式だん(終了)! 手応えはある?ない? 合格発表までの過ごし方


8月19日~21日に論文式試験を受験された皆さん、暑い中おつかれさまでした!
試験後の手ごたえによっては、これからどう過ごせばいいのか気になる人も多いのではないでしょうか。
そこで、CPA会計学院講師の植田有祐先生に、合格発表までの過ごし方についてアドバイスをいただきました。

自己採点の結果はどう受け止める?

――今年の論文式はどのような試験でしたか。

植田先生 まず初日、緊張感ままならぬ中はじまった監査論では、高難易度の事例問題が牙をむく。
ここに戸惑いながら、続いて租税法だが、適正難易度とはいえどもボリュームは多い。
そして2日目、午前の管理会計は、毎度安定の難しさで受験生を戸惑わせる。
午後の財務会計は、計算の出題の減少と理論の高難易度化で、差がつく構成に。
最後の3日目、企業法でやっと、典型論証・予想論点が出題される。
トリを飾る経営学、予想論点から出題なものの、落とせないワードがあるコワさ。

振り返ってみると、やはり、2日目午後の財務会計が鍵を握る3日間の戦いになったと思いますね。
戦い抜いた皆様、本当にお疲れさまでした。

――論文式試験を終えて、受験生は自己採点をされるものですか。

植田先生 最近は自己採点する受験生が増えているようですね。予備校もすぐに解答速報を出しますが、記述試験なので実際の配点やボーダーラインは正確にはわかりません。
なので、自己採点をしても合格か不合格かという確信までは得られないんですよね。

――そうなると受験生が感じる手ごたえもあやふやなものになるのでしょうか。

植田先生 たしかに不確実ではありますね。唯一の指標となるのが、「全国模試と比べてどれくらいの出来だったか」です。
大手予備校の全国模試を受ける母集団が1回当たり1,000人弱、本試験を受ける母集団が3,500人ほどいます。
単純に、本試験が全国模試と同じ出来具合であれば、全国模試の結果を2~3倍にした順位になるだろう、と考えていいと思います。
合格者は1,300人ほどいるので、たとえば全国模試で300位だった人が、本試験でも模試と同じくらいの出来具合だったなら、600~900位に入るでしょう。
逆に、全国模試より本試験の出来具合が悪かったなら、1,300位に入れない可能性もあります。

――その指標はわかりやすいですね。

植田先生 といっても、やっぱり感覚の世界ですから。基本的にどうにもならないので、忘れましょう(笑)。
実際に僕も論文式を受けた後に自己採点をして、全国模試よりできた感覚があったので、合格していると思いました。
ただ、合格発表まで数ヵ月あるので、だんだんと間違えたところが気になってくるんですね。
なので、自己採点したところで、精神的に安心はできなかったんですよ。もちろん自己採点するのは問題ありませんし、間違えたところがわかるということは、逆に正解できたところもわかるはずです。
要は、どこを正解して、どこを間違えたのかがわからないという人よりも、「あそこでミスしたな」と思い出せる人のほうが、合格に近いと思います。

合格発表までの過ごし方

手ごたえを感じた受験生

――手ごたえを感じた受験生は合格発表までどう過ごせばいいですか。

植田先生 監査法人の説明会に行くのはマストですね。できるかぎり色んな法人を見てもらいたいですが、大きくはBIG4か中小かの2択だと思います。
受講生の話を聞くと、最近は中小の人気も高まっていますよ。

――BIG4と中小のそれぞれの特徴は何だと思いますか。

植田先生 どちらも一長一短あります。最初にBIG4に入れば、中小の監査法人に転職することもできるので、無難だと思います。
正直なところ、中小からBIG4への転職はなかなか難しいと言われているので。かつ、BIG4の場合は、誰もが知っているメジャーな上場企業を監査できる機会が多いという魅力もあります。
一方で、デメリットは埋もれてしまう可能性があること。それこそ、東京事務所だと、同期も100人単位でいて、やりたい仕事をなかなか任せてもらえないこともあるかもしれません。
逆に、中小監査法人のほうが、そういったチャンスが多い、仕事を任せてもらえると言われますよね。
中小監査法人の場合、ネームバリューとしてはBIG4に劣りますが、人数が少ないぶん、早い時期から経験が積めると思います。

――それぞれに向き不向きはありますか?

植田先生 もともとの性格があって「僕は大手がいい」「私は中小が向いている」と選ぶことになると思いますが、あえて言うなら、学生のうちに合格して特に社会人経験がない人に無難なのはBIG4だと思います。
社会人マナーの講習などを含めて研修も充実しています。
逆に、20代後半や30代で合格したような社会人の場合、早くから仕事を任せてもらいたいと考えると思うんですね。そのような人は中小を選ぶといいと思います。
実際、「できるだけ早く経験を積んで独立したい」という人がいるので、「それなら中小がいいんじゃないか」と伝えています。

――勉強面では、どう過ごせばいいですか。

植田先生 手ごたえがあるなら、勉強はしなくていいです。仮に不合格で12月から勉強を再開しても、次の試験まで9ヵ月あるので間に合います。
勉強しないと不安だという人は、苦手科目や苦手分野に絞って勉強するのがいいと思います。
時間があるので、自分の苦手なところと腰を据えてじっくり向き合うといいでしょう。
たとえば、監査論が苦手なら監査論だけ根を詰めて復習する、あるいは財務会計論(計算)の「組織再編」のように復習に時間がかかる分野を整理する、などです。
合格発表までは科目間のバランスは考えなくいいですよ。
苦手科目に集中できる時間は12月以降とれなくなるので、勉強するのであれば今がチャンスと思って取り組んでみてください。

――復習用の教材としては、普段から使っていたものでいいですか。

植田先生 普段から使っていた教材だけで十分です。このとき、体系的な理解が必要な論点を押さえたいですね。
要は、さらっと復習できる論点ではなく、自分自身で整理することが必要な論点です。
ずっと使ってきた教材を見ながら「まとめ」を改めて作り込むイメージで復習するといいと思います。

手ごたえを感じられなかった受験生

――手ごたえのない受験生は合格発表までどう過ごせばいいですか。

植田先生 まずは、会計士を目指す以上、「絶対に合格する」と決めてください。要は退路を断ってほしいんです。
いわゆる“新卒カード”という言葉もありますが、「会計士になりたい」という気持ちが強いなら、“新卒カード”は捨ててもいいと思います。
博打のような試験ではなく、正しいやり方で勉強を継続すれば合格できる試験です。正しい努力さえすれば、もう1年で合格できます。
まずは「会計士になりたい」という思いを優先して、勉強に専念しましょう。

――モチベーションを失わないことからスタートですね。特に大学3・4年生は進路の大きな分かれ道ではないでしょうか。

植田先生 僕自身の経験を話すと、僕は論文式試験に一度落ちて、フリーター期間を経て合格しています。
ただ、フリーターだったので、当時は働きながら勉強しようと思ったんですね。
EY新日本監査法人に短答式試験合格者の採用枠があったので、「働かせてください」と大阪事務所に行きました。
そのとき、当時のリクルート担当のパートナーに、「ここで君を雇うのは簡単だけれど、あと1年勉強したら確実に合格する試験。今焦って働いて、中途半端に勉強しても合格可能性は下がるよ」と言われたんです。
「1年勉強に専念して確実に合格するほうが、君の人生にとってプラスだよ」と。
当時はまだ22~23歳で、とりあえず「わかりました」と言って勉強に専念しましたが、あとから考えたら、あの人が言っていたことは正しかったんだと思いました。
たしかに、そのときはとんでもなく長い1年に感じるんですよ。
周りは就職しているし、できるだけ早く働きたいと思ってしまうのですが、今は「あの1年があったから、今の人生がある」と思えます。
僕は「最後の1年にしてやる」という気持ちで勉強したのが大きかったので、皆さんにも、そんな気持ちで勉強してほしいです。
やっぱり追い込まれないと、なかなか合格できないのでね。
「合格したらラッキー」くらいの気持ちで合格できる試験ではありません。
「これだけ勉強したんだから、これで不合格ならもうどうしようもないよね」くらいの年に合格します。他の道を考えるよりは、今目指している道だけを見ましょう。

――勉強面では、どう過ごせばいいですか。

植田先生 手ごたえがない人も苦手科目に集中してください。
おそらく5月の短答式試験に合格して8月の論文式試験を受けた人は、ほとんど手ごたえがないと思うんですよ。
それはきっと、論文科目の租税法や経営学が苦手だからです。なので、そのような科目から復習するのが無難だと思います。

――手ごたえがない場合も、復習用の教材は普段から使っていたものでいいですか。

植田先生 基本的に今までの教材でいいと思いますが、本当に手ごたえがない人は、もう一度講義を聴き直してもいいですよね。
ペースメーカーになりますし、それこそ苦手科目だけだけでいいので、心機一転、講義を聴いてみるのがいいと思います。

――学習計画は、来年8月に向けて作り直したほうがいいのでしょうか。

植田先生 いや、合格発表までは綿密な学習計画は考えなくていいです。
科目間のバランスは気にせず、苦手科目や苦手分野に特化して学習しましょう。
12月以降は、予備校のカリキュラムが始まるので、それに乗っかってもらえば十分です。
合格発表が境目になりますね。

――受験生が次に進むためには、どういったマインドでいるといいでしょうか。

植田先生 論文式試験の場合、自己採点の結果と実際の結果がそれほどぶれることはありません。
短答式試験には“サプライズ”があって、普段から成績がよかった人でも落ちることもあるのですが、論文式試験は“実力勝負”です。
たしかに、1つのミスもなく3日間を終わらせることは絶対にできないので、合格できる実力のある人も「本当に大丈夫かな」と不安になっていると思います。
けれども、これまでやってきたことに自信をもっているなら合格できます。
逆に、「普段から常にE判定でした」というような人が合格することは、それほどありません。
実力が反映される試験だからこそ、正しい努力が大切ですね。

――ありがとうございました!

<お話を伺った人>
植田 有祐(うえだ ゆうすけ)

公認会計士・税理士。CPA会計学院講師。
同志社大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、新日本監査法人にて、主に金融商品取引法監査、会社法監査、アニュアルレポート作成業務に従事。その後、植田有祐公認会計士事務所を設立し、決算早期化コンサルティング業務(棚卸規定の整備、引当金見積の精緻化)や、原価計算導入コンサルティング業務(原価要素の集計、標準の設定、現金収支予算、労務規定の整備など)を行う。
・野原監査法人パートナー
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Twitter(@newjapancpa)


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