【論文式試験対策に、そして実務に! 】公認会計士試験3位合格者が教える『会計法規集』の活かし方


【編集部から】
公認会計士試験・税理士試験では「会計基準」の学習が必要不可欠です。
しかし、会計基準は膨大で、どこをどう学習すればよいのかわからないと悩む受験生の声も少なくありません。
そんななか、令和3年公認会計士試験に3位で合格された“はちけん”さんは、会計基準が収録されている『会計法規集』(中央経済社)を活用したことが試験対策において、また実務において大きな武器になったと話されています。
そこで本記事では、“はちけん”さんに『会計法規集』の読みドコロや役立て方をご紹介いただきました。

“はちけん”さんのnoteはこちら! 合格体験記をはじめ、公認会計士試験に関する記事を発信されています。
https://note.com/hachiken_kaikei/

はじめに

はじめまして、はちけんと申します!

令和3年(2021年)公認会計士試験に合格し、現在は監査法人で働いています。

私は中央経済社の『新版 会計法規集』を論文式試験の2~3か月前に購入し、論文式試験まで利用していました。

この記事では、『会計法規集』のどのような点が役立ったのか、試験対策と実務の両方の観点から、私の考えをお伝えしたいと思います。

なぜ受験生が『会計法規集』を活用すべきか? どこを重点的に読む?

『会計法規集』は「会計諸基準編」「会社法編」「金融商品取引法編」「関連法規編」の4セクションから成っています。

このなかで最も重要なのが「会計諸基準編」。各会計基準はネット(企業会計基準委員会のホームページ)でも無料で見られるのですが、必要に応じて検索するだけだと、意識していない会計基準の存在を忘れがちになります。どの会計基準も大事なので、基準が一通り載っている紙媒体を手元に備えることで、会計基準に漏れなく目を通すきっかけになると思います。

また、『会計法規集』を備えれば、好きなだけ書き込みができます。法令基準集は予備校の答案練習で使うため、書き込みがしにくいですよね。私は、写真のような感じで『会計法規集』を使っていました。びっしり書き込んだりはしていませんが、気になった単語に印をつけたり、メモを残したりしています。

◆受験生時代は第11版を使用。

そして、会計士試験受験生にとって『会計法規集』の最大のメリットは、会計基準の「結論の背景」がまとめて読めることです。各企業会計基準には、会計処理や開示のルールを定めた部分の後に、基準の制定経緯や、特定の各会計処理を採用した理由などについて記した「結論の背景」が含まれています。

この「結論の背景」は、試験用の法令基準集には掲載されていませんが、本試験問題にほぼそのまま対応する記述があることも多いです。この部分を読むことは、現行基準の根拠についての理解を深め、試験で記述問題に対応するために役立つと思います。

さらに、法令基準集には掲載されていないものの試験範囲には含まれている「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」も、「関連法規編」に全文が収録されています。概念フレームワークは、試験対策上はもちろん、合格後必ず学ぶことになる国際財務報告基準(IFRS)との対比という意味でも、原文を読んでおくことをお勧めします。

なお、「会社法編」「金融商品取引法編」もあるものの抄録のため、試験範囲を完全にカバーしているわけではありません。企業法の対策としては、別に六法や法令基準集を入手することが必要です。

合格後の実務でも会計基準の「原文」を読む力は大きな武器に!

会計基準の内容は予備校のテキストに一応織り込まれてはいるのですが、自分で原文を読む経験はやはり大事です。合格後の実務では、原文でも明文規定のない論点が出てきますが、判断の拠り所になるのは会計基準の原文です。その際に、必要な箇所だけを抜粋した便利なテキストに頼ることはできません。試験勉強の進捗に余裕のある方は特に、合格だけではなく、合格後の実務にどんな理解・知識が役立つかイメージして勉強に反映させることをお勧めします。

会計基準ははっきり言って読みづらいですが(私も、『会計法規集』を購入後はじめて読んだときはとにかく苦痛でした)、一人前になるまでには避けて通れません。一方、慣れればどんどん楽になるはずです。試験勉強のときから原文になじんでいれば、「プロ」への移行がよりスムースになると思います。

また、予備校のテキストに織り込まれるかはあくまで予備校の判断にすぎません。原文から、テキストでは読み取れない重要な示唆が得られることもあります。原文に直接あたり、自分で納得することが、試験でも実務でも役に立つと思います。

ただし、本書に収録されている会計基準は企業会計原則などと「企業会計基準」に限られ、適用指針や実務指針などは含まれていません。そのため、監査業務では『会計監査六法』(日本公認会計士協会)など、より広範囲の参照が必要になるかと思います。

しかし、『会計監査六法』(3,000頁超)をいきなり使おうとすると分量に圧倒されるので、まずは原文に慣れるために『会計法規集』から始めておくのは、悪くないのではないでしょうか。

◆実際の令和3年公認会計士試験論文式試験の成績通知書

最後に

会計士は、会計基準を理解し、使いこなすだけが仕事ではありません。究極的には、会計基準を時代に合わせて改訂したり、新しく作ったりするのに参加する専門職です。

会計基準に「使われる」だけでなく、会計基準を「書く」側になるんだという気概を持って勉強してみてください。『会計法規集』は、その助けになると思います。


『新版 会計法規集〈第12版〉』

中央経済社編
定価:2,640円(税込)
発行日:2021/07/20
A5判 / 1474頁
ISBN:978-4-502-39301-3
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