並木秀明
時に懸命、時に平凡に一途に生きていても、フッと気持ちが止まることがある。感情さえも止まることもある。常に前に歩む足、止まるときもある。
そんなとき、空を見る、足許を見る。右を見る。左を見る。そして、過去を振り返る。
よくぞここまで、来られたものだと思う。そして、微笑み、再び歩き出す。
そんなことをコロナショックのさなか思った。人、死するまで旅人だと感じる。人、生きる。そして、生きていく。
受験生は、そんな感傷にふけっている暇もないが、試験までの短期間、ここまで来られた自分を称えてあげても良いと思う。
試験と運
試験において、運は存在すると思う。読者より長く生きてきた筆者も様々な場面で感じてきたのが運である。意識できた運もあれば、意識できぬ運もあると思うが、運は大地に吹く風と同様に、人の世に吹いていると思う。
幸運もあれば不運もある。幸運を己の実力と見るか、不運を己の実力と見るかで、人の器は変わりゆくような気がする。
短期間でも、一生懸命に勉強し、生きてきたとき、幸運を己の実力と感じた記憶がよみがえる。そして、不運は薄らいでいった記憶もよみがえる。
試験日までの日々
平年より試験日が2週間ほど先になった。さっさと試験を終わらせて休養したい! と思う人、まだまだやり残したことが満載で良かった~と思う人、それぞれであろう。それほどに試験日が近くなったのである。
残り少ない試験日までの日々、優先順位の付け方が勝負を決する時期になった。受験生への最後のアドバイスが優先順位の決定である。
チェック内容は、一般的な総合問題の決算整理事項の順番を基本とし、重要論点は、下記の『会計人コース』のヤマ論点を中心に仕訳が出来るかどうかでチェックするとよい。
●『会計人コース』7月臨時増刊号「税理士試験 理論問題 でる順予想号」
→簿記論の計算、財務諸表論の理論のヤマ論点の確認のため、数回読み込むことを薦める。
●『会計人コース』8月号特集「専門学校6校と講師陣の出題予想をイッキ見」
→ヤマ論点の中に苦手論点があれば優先して確認しよう。
この時期、「過去に学んだ論点は忘れていくものと心得る」を実感されたことと思う。しかし。いま出来ることは試験日の未来を見据えた最終チェックのみである。そして、試験では、過去問解法力と時間内解法力は、切り放すことができない課題事項である。
本試験の問題は、「解けるけど時間がない」または「時間があっても解けない」の判断を必要とする。これを解決する方法はないが、多くを望まず、部分点を拾う練習も効果的である。
これからの日々の積み重ねの苦労は厳しいものである。しかし、積み重ねの苦労を味わったもの、成すべきことを成したものは、スタート・ラインに立ち試験監督の「始め」の声がかかったとき、「無心」に近づくことができ、努力の成果が集中力を生み、そうでないものは不安のまま試験時間の最中に飛び込んでいく。幸運を祈る。
<執筆者紹介>
並木 秀明(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』、『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』、『簿記論の集中講義30』、『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。
※ 本稿は、『会計人コース』2020年8月号に掲載した記事を編集部で再編成したものです。
記事一覧
第1回:恋と愛と会計人コース
第2回:生きていくために必要な力
第3回:筆記具蒐集
第4回:勉強の成果
第5回:合格発表から年末年始
第6回:覚える、忘れる、思い出す
第7回:海外旅行でのエピソード
第8回:出会いがもたらしたもの
第9回:タイムマシン
第10回:季節の変わり目
第11回:本試験までの勉強
最終回:試験日までの最終アドバイス