【税理士試験 会計科目から税法科目へ】教えて先生! 最高の税法スタートダッシュをかなえる心構えとは?


8月の税理士試験で会計科目を受験し、この9月から新しく税法科目の学習を始めた方も多いのではないでしょうか。

そのなかには、会計科目と税法科目にギャップを感じてしまい、税法科目への向き合い方や学習法に悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。

そこで、専門学校講師として財務諸表論・法人税法、両方の指導キャリアをもつ岩下 尚義先生(税理士)に、さまざまな受験生のお悩みに答えていただきました。

ここでは、税法科目を学ぶ際のモチベーションや心構えに関するアドバイスをお届けします。

会計科目から税法科目に移行した受験生の皆さんは必見です!

モチベーションダウンの「原因」から「対策」を探ってみよう

税法科目に対してモチベーションが上がりません。まだ本試験まで時間もありますし、受験した会計科目の合否も気になります。

この時期、モチベーションを上げることはなかなか難しいですよね。実際、9月~10月頃はモチベーションに関する相談は多く、私自身も経験しました。

これを突破するためのポイントは、やる気がでない「具体的な原因」を探ること。そして、原因に合った対策をとることです。

【 Before 】

【 After 】

1 「燃え尽き症候群」への対策

本試験を終え、精神的に疲れがたまっているのであれば、リフレッシュできるような行動をしてみましょう。受験勉強は走り出したら、なかなかオフの時間がありません。ここでしっかりとオン・オフを切り替えておくことが、息切れしにくい受験勉強のよいスタートになります。

2 「前回の試験結果が気になる」への対策

残念ながら、12月まではどうしたって結果が気になります。特に解答速報などでボーダー付近にいる方は、一切気にしないというのは無理がありますね。おすすめは、一度とことん、専門学校の模範解答と自分の解答を照らし合わせてみることです。その際は、「振り返るのはこれが最後!」と決めて取り組んでみてください。

3 「まだ試験まで時間がある…」への対策

この思考は、要注意です。たしかに本試験まではまだ時間があります。しかし、受験勉強の期間を「基礎固め」・「応用力の養成」・「直前の仕上げ」と分割して考えた場合、それぞれは数ヵ月しかありません。

会計科目の応用期は、「基礎期の復習をしながら、応用論点を学習する」という位置づけだったと思います。

一方、税法科目の応用期は、基礎学習が定着していることを前提に進みます。復習というよりも「新たに学ぶ論点」がとても多く、この違いこそが受験生を苦しめる点でもあります。

応用期の学習内容に差がある理由は、受験で必要な情報量の差です。財務諸表論などの会計学は、本来、学問としては莫大な情報を学ぶ必要がありますが、試験問題上、ある程度絞って学習します。

一方、税法科目は、実務的に押さえておかなければいけない論点がたくさんあります。基本的に法律には「原則」と「例外」が存在するので、たとえば、基礎期で原則的取扱いやフレームワークを学び、応用期で例外的取扱いやより細かい規定を学び、知識を積み重ねていくという学習になります。

そのため、「試験まで何ヵ月」ではなく「応用期まで何ヵ月」という視点で計画や目標を立ててみるとよいでしょう。

そして全体的に言えることは、初心に返ることです。税理士になりたいという気持ちに再び火を灯すことが大切ですね。

税法科目は「税の専門家」「法律家」としての第一歩

会計科目から税法科目に移ってギャップを感じています。税法科目を学習する際に、心構えとして意識しておいたほうがよいことはありますか?

そうですね。同じ税理士試験でも「まったく別の分野の学習が始まる」という意識づけが必要です。

会計科目の場合、多くの方が簿記3級、2級、簿記論という一連の流れで学習してきたと思います。一方、税法科目は「法学」です。業績を明らかにするための計算や理論が、公平な課税を目的とした条文を理解する学問に変わります。

もしイメージがわきにくい場合には、受験勉強とは別に「税法の読み方」「租税法とは」といった内容の書籍を読んでみるとよいでしょう(私は、税理士になってから定期的に「租税法」がテーマの書籍を読んでいますが、「受験生のときに読んでおけばよかったなあ」とよく思います)。

また、「受験勉強の最中、迷子になってしまった」という相談を受けることがあります。なんのために勉強しているのか、今している勉強はなんなのか、自分はどうなりたいのか。

そんな悩みを抱く方におすすめしたいのは、税理士法第一条(税理士の使命)を読むことです。こちらは、税理士登録時に必ず紹介される条文です。

税理士法 第一条(税理士の使命)
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

税理士は、税の専門家です。実務においてはコンサルティングな面があっても、法律家です。税法科目が始まったということは、「いよいよ法律家になるための知識の習得期間に入った」ということ。そんな脳の切り替えができれば、モチベーデョンもググッと高まるのではないかと思います。

「日頃からの積み重ね」で網羅的に学習を進めよう

会計科目と違って周りの受験生のレベルも高く、不安です。どこまで勉強を進めなければいけないのでしょうか?

税法科目の学習で、壁となる時期は大きく3つあります。

1 基礎期のはじめ
2 応用期のはじめ
3 直前期のはじめ

そして、周りの受験生のレベルが高く感じる理由は4つあります。

1 会計科目に合格したレベルの人が集まっている
2 すでに学習歴のある受験生も多い
3 ボリュームがあるので、学習の差が開きやすい
4 理論と計算の相乗効果が期待できるので、学習の差が開きやすい

このなかで、ポイントは3と4です。

まず、ボリュームのある科目を攻略するカギは、いま学んでいる範囲だけでなく、学習済みの範囲も学習することです。

また、税法科目は理論と計算の相乗効果が大きく、1つの論点で理論をマスターできれば計算力も向上し、一気に周りと差がつきます。逆を言えば、理論も計算も周りと差がついてしまって落ち込んでいる方も、その論点の計算をマスターすることで理論も理解でき、大きく差を縮めることができるかもしれません。

よって、「どこまで勉強するべきか」に対する答えは、すでに学んだ部分を網羅的に学習することです。

たとえば専門学校に通って学ぶ場合、テキスト1の学習時はテキスト1の復習、テキスト2の学習時はテキスト1と2の復習、テキスト3の学習時はテキスト1・2・3の復習……と、どんどん負担が増えていきます(内容も1より3のほうが難しいため、大変な作業です)。

序盤のテキストをさかのぼって復習するには時間がかかりますが、この時間を圧縮するためにも、日頃からの積み重ねが大切になってきます。

後編は「学習法」について

【執筆者紹介】
岩下 尚義(いわした・たかよし)
税理士・ファイナンシャルプランナー
TAC税理士講座にて財務諸表論、4年制専門学校にて法人税法の講師を経験。実務のほか、顧客や税理士向けの研修講師、小学生から大学生まで各課程での租税教室講師を担当。税務の専門誌をはじめ、「お金の専門家」として子育て情報誌のお悩み相談を担当するなど、伝える活動の幅を拡げている。noteにて、税務や子育てに関する記事も掲載中。


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