目指せ2022年合格! 公認会計士試験 学習ロードマップ


9月になり、来年の公認会計士試験に向けて勉強を本格化させた方も多いと思います。

ここでは、毎年多くの合格者を輩出している福岡大学「会計専門職プログラム」で公認会計士試験の受験指導をされている井上 修先生に、これから1年間の「学習ロードマップ」を作っていただきました。

近年の本試験や受験生の傾向を踏まえた学習アドバイスもあり、公認会計士を目指す方は必見の内容です!

井上 修
(福岡大学准教授・公認会計士)

本記事では、公認会計士を目指す皆さんに向けて、今年12月の短答式試験合格から一気に来年8月の論文式試験に合格するための学習戦略をお伝えしたいと思います。

ここでは、今年8月までに選択科目以外のインプットは終了していることを前提とします。

はじめに、来年8月の論文式試験までの学習ロードマップを見ていきましょう。

2022年合格を目指す学習ロードマップ

ロードマップにおける矢印の太さは、おおまかではありますが、学習量を意味するものと考えてください。

点線の矢印は、「まったく勉強しない」というわけではありませんが、学習量は「ほどほど」となります。ただし、人によっては「まったく勉強しない」ということもありえます。

まず、12月短答式試験と8月論文式試験は、選択科目の有無以外にも大きく異なるという点を理解してください。特に短答式試験の勉強は、かなり戦略的に進めていくことが求められます。

ただ、全体を通して言えるのは、「全科目のバランスをとって苦手な科目を一切なくす」ことを心がけてください。

というのも、「計算科目に偏重した勉強」は、近年の本試験を考えた場合には注意が必要です。

一般的には「計算が最も大事」といわれますが、計算は「守り」に過ぎません。

「短期一発合格」を主眼に置いた場合、すべての範囲において計算力を応用レベルまで高めるのは費用対効果が悪いと考えています。すべて勉強しおえた後に計算力をさらに高める、というのはかまいません。

むしろ計算については、基礎的なレベルに絞って、「常に知識を維持、正確性を重視」すべきです。難しい問題ができるようになる必要はありません。

そのぶん、理論科目にエネルギーを回すようにしましょう。そうすることで、全体的にバランスがとれてきます。

イメージとしては、「いま本試験を受けたら全科目で50%とれる→60%とれる→70%とれる」となっていくと、間違いなく「確信」と「自信」が備わってきます。

【短答式】計算は、「知識の維持」と「正確性の重視」

学習ロードマップを踏まえると、今から12月の短答式試験までは、財務会計論(計算)は個別論点を中心に学習を進めてください。

連結会計(ときどき、企業結合会計)は、総合問題で出題されることを想定し、基礎レベルの問題を網羅的に解いてください。

財務会計論の計算は、「常に知識を維持、正確性を重視」で十分です。ただし、余裕があれば、いくらでも問題を解いてください。

管理会計論(計算)は、会計基準の枠内にある「原価計算」を中心に計算力を高めましょう。少しひねられると途端に難易度が跳ね上がる「管理会計」領域は、守りに徹してください。

【短答式】理論は、論点をなるべく多く確認! 細かい論点はまとめておこう

理論については、本試験に向けて徐々にウェイトを上げていくようにしてください。

全科目のバランスが短答式試験を突破するカギとなります。もっと言ってしまえば、短答式試験は「監査論」と「企業法」で決まると言ってもよいでしょう。

次の計算と理論の勉強割合を示したグラフを見てください。

短答式試験の理論科目は正誤判定です。基礎的な理解があることを前提として、論点を確認すればするほど、最後の最後まで得点を伸ばすことができます

ただし、財務会計論の理論は、監査論や企業法と異なり、計算と重複する部分があります。そのため、監査論や企業法ほどやり込む必要はありません。問題数も少ない傾向にあるので、監査論や企業法の半分くらいの時間でカバーしていくのが効率的です。

できないところや些末な論点があれば「後回し」にしましょう。とりあえず簡単にまとめておき、直前に確認することで一気に実力を向上させる、という大胆な戦略が有効だと思います。

同じく、管理会計論の理論も、最後にまとめて覚えることをオススメします。

監査論や企業法についても、最初の段階から些末な論点に取り組む必要はありません。後半に向けて徐々に細かい論点まで確認するようにしていきましょう。

ただ、試験直前3週間くらいにまとめて確認できるような「目印」は必要となります。「付箋をつける」でも「ノートにメモ」でもかまいません。些末な論点を「まとめる」という準備は、今の段階から意識して進めておきましょう。

ちなみに、些末な論点というのは、計算問題にも存在します。

出題可能性が低い論点は、1問だけサンプル問題を用意しておくとよいでしょう。それを直前に確認することで、簡単な問題が出題された場合に正答できる準備をしておきます。

要するに、日々の学習のなかで、「あとで確認する些末な論点」をいかに集約しておけるかが、とても重要です。

【12月短答式受験後】パターン別の学習法

12月の短答式試験後は、受験生はさまざまなパターンに分かれます。場合によっては、5月の短答式試験を受験する人もいるでしょう。12月の短答式試験後の動きとしては、主に3つのパターンが考えられます。

「手ごたえアリ」の場合

ぜひ論文式試験の勉強を進めてください。租税法、経営学(ここでは選択科目を「経営学」とします)も最低でも「ファイナンス」の勉強を始めるべきだと思います。

「あと一歩だった」場合

12月短答式試験で「あと一歩だった」という人は、些末な論点を知っていれば合格できたというより、基礎的な部分の理解が足りていなかった場合が多いと思われます。

ただし、この場合も、論文式試験の勉強にとりかかりましょう。8月の論文式試験の合格に近づくだけではなく、5月の短答式試験を突破する大きな糧になります。

とはいえ、3月からは租税法と経営学の勉強は一旦休止してください。そのうえで、学習ロードマップの「10月」を「3月」に置き換え、同じことを繰り返して5月短答式試験に挑んでください。

「まったく歯が立たなかった」場合

12月短答式試験を受けて、「まったく歯が立たなかった」という場合は、学習が追いついていません。

選択科目の勉強は後回しにして、学習ロードマップの12月短答式試験に向けた部分をもう一度繰り返しましょう(「9月」に該当する部分は「2月」と読み替えてください)。

12月短答式試験後から2月までは、いま一度、苦手なテーマ別にインプットしなおしてください。この場合、計算7割、企業法・監査論3割で進めていくのがよいと思います。

【論文式】理論科目が合格のカギ

まず、論文式試験で計算科目が大事であることは間違いありませんが、それは必要条件に過ぎません。

理論科目の割合が大きくなっている昨今の論文式試験では、理論科目を重視した学習が求められます。

計算科目は、学習ロードマップにあるように、常に「知識の維持」と「正確性の向上」に目的を絞った学習をしてください。

ただし、論文式試験においては、連結会計や管理会計についてもしっかり手を回し、バランスよく取り組んでもらいたいです。

あとは、どれだけ理論科目で安定して点が取れるかにかかってきます。論文式試験においても、「監査論」と「企業法」が合格のカギを握ると思います。

個人的なデータで恐縮ですが、12月短答式試験に合格し、論文式試験合格レベルにいた学生が論文式試験に失敗した原因のほぼ100%が「監査論」でした。逆に、「監査論」に科目合格した人は、翌年の論文式試験に100%合格しています。

企業法についても、これに準じたことが言えます。学習ロードマップで、企業法と監査論の矢印が太くなっているのはそのためです。

また、近年、短答式試験を重視するあまり、「文章を書く」ことに高いハードルを感じている人が多くいるように思われます。その結果、短答式試験には合格できても論文式試験に合格できない人が多くなっています。

こうなるのは本当にもったいないことですし、悔やんでも悔やみきれません。ぜひ、最初から論文式試験の合格を見据えた勉強を心がけてください。

なお、12月短答式試験に不合格となり、その後も5月短答式試験の勉強に特化しなければならず、論文式試験の勉強が後回しになる人もいると思います。

そのような場合は、ぜひこちらの記事を参考にして、絶対に諦めずに8月の論文式試験合格を目指してください。

「計算」と「理論」の関係は?

以上で、2022年公認会計士試験合格に向けたお話は終わりとなりますが、最後に、公認会計士試験における「計算」と「理論」の関係についてお話させてください。

公認会計士試験に短期で合格するコツは、とにかく「全科目のバランスをとって苦手な科目を一切なくす」ことです。

計算科目が仕上がっていないので他の科目をまったく勉強しない、もしくは復習もしないというのは、少しもったいないように思います。少なくとも私は、学生たちに対してそのような指導はしていません。

計算科目は演習量が絶対的に必要ですが、それだけではできるようになりません。

逆に、理論科目で“地頭をよくすること”で読解力や論理的思考力が身につき、結果的に計算科目が伸びる人が多いです。

また、好きな理論科目ができると、勉強のコツを覚えて、相乗効果で他の科目がそれに並んできます。

公認会計士試験は総合的な得点によって合格が決まるので、ぜひ、科目ごとのバランスを重視した学習を心がけてください。

今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。これから1年間、頑張りましょう!

〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
福岡大学准教授・公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。研究分野は、IFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究。福岡大学では「会計専門職プログラム」の指導を一任されている。当プログラムでは、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験 簿記論・財務諸表論に在学中に合格を果たしている。本プログラムから2018年は10名、2019年は5名、2020年は6名が公認会計士試験に合格。


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