渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)
2021年6月13日、第158回日商簿記検定が実施されました。新方式となってからはじめての統一試験(ペーパー試験)。受験された皆さん、いかがだったでしょうか?
特に今回は3級が難しく、また試験時間が短くなったことから、例年より苦しんだ受験生が多かったように思います(Twitterで「簿記3級」がトレンド入りしたとか)。
今年度から試験のルールが改定されたため、それに合わせて私たちも学習方法を変えていく必要があります。
この記事では、今後「日商簿記3級」をどのように学習したらよいのか、新しい試験の傾向に合わせた戦略をお伝えします。
第1問・第3問で合格ラインを目指そう!
従来の試験から大きく変更されたのは「試験時間」です。従来は3級・2級ともに120分でしたが、現行の試験では3級が60分、2級が90分と短くなりました。
そのため受験生には、解答の「スピード力」と「正確性」の両方が求められるでしょう。スピード力を高めると正確性を損ない、逆に正確性を高めるとスピード力を損ないます。
「スピード力」と「正確性」、双方のスキルを高めるためには、問題の演習量を増やし、日々鍛錬を積むしかありません。
特に3級は従来の出題形式と大きく異なるため、学習方法をしっかり見直す必要があります。現行の出題形式を見てみましょう。
第1問:45点
仕訳(一部、証憑書類あり)15問
第2問:20点
① 勘定記入・補助簿・伝票・理論
② 補助簿の選択・証憑書類
第3問:35点
精算表・決算整理後残高試算表・財務諸表
試験対策としては、第1問と第3問の配点が大きいので、ここで合格点の70点以上を獲得することを目標に学習してください。
解答順序や時間配分としては、第1問(20分)→第3問(20分~30分)→第2問(10分~20分)でしょうか。
具体的な目標点数としては、第1問が36点~39点、第2問が8点~12点、第3問が28点~31点とするのがよいかとお思います。第1問の仕訳は、可能なら満点を狙ってもよいでしょう。
とにかく第2問は、どの論点が出題されるのかわかりませんので、第1問と第3問で点数がとれなかった部分を補填するという位置づけにしてください。
第2問は「仕訳」×「転記」で効率的に対策
第2問では「勘定記入」の問題が出題されます。そのため、仕訳に関する例題を学習する際、解答となる仕訳と一緒に略式の元帳を作成し、転記の練習も行うとよいでしょう。このように「仕訳」と「転記」を同時に学ぶことで、学習効果がより高くなります。
特に、すべての取引を整理すると時間もかかりますので、法人税等、剰余金の配当、固定資産の取得・決算・売却、収益・費用の前払・前受、収益・費用の未収・未払など一連の取引となる問題については、元帳転記も合わせた学習がオススメです。
また、学習用のテキスト・問題集ですが、出題範囲そのものは従来と大きく変わってはいないため、市販のテキスト・問題集で十分です。
ただ、模擬試験など実戦的な問題となると、過去問が利用できない点、問題用紙の持ち帰りができない点から対策が難しいです。特に第2問は、模擬試験で出題されていない論点が本試験で出題される可能性があります。
このことからも、学習方法としては、第1問・第3問でしっかりと合格点を獲得できるようにすることが大切です。第1問・第3問は、出題形式がある程度は定まっているので学習しやすいと思います。
それ以外は従来どおり、仕訳など基礎力を身につける学習を進めてください。
現在では、QRコードが記載されていたり「Clicker」といったアプリを使ったり、動画を閲覧しながら学習できる教材もあります。また、スマートフォンで仕訳ができる問題演習アプリなどもありますね。
このようなICT教材は、スキマ時間の学習にとてもオススメです。問題演習量を増やすためにも、ぜひICT教材の利用も検討してみてください。
ネット試験を受ける? 11月の統一試験に再チャレンジ?
今年度から3級・2級は、あらかじめ試験日が決まっているペーパー試験(統一試験)と、いつでも受験できるネット試験の2つが実施されています。
そのため、今回6月の統一試験がダメだったという方で、ネット試験を受けるべきか、次回11月の統一試験に再チャレンジするべきか悩んでいる方もいるかと思います。
今回の試験で50点~60点台など「あと少しだった」という方は、ぜひネット試験にチャレンジしてみてください。ネット試験は、その場で合否がわかります。仮に7月にネット試験に合格したら、11月の統一試験までの4ヵ月は、2級の学習ができるかもしれません。より早いステップアップのためにも、ネット試験を利用してみましょう。
今回の試験で20点~30点台など点数があまりとれなかった方は、まず基礎力を身につける必要があります。11月の統一試験を目標に、簿記の基本を押さえることを最優先してください。ただ、問題に慣れるという意味では、適宜ネット試験を受験してみることもオススメです(受験料と別に手数料がかかりますが・・・)。
いま一度、自分の点数や理解度を振り返って、今後の学習戦略を考えてみてください。
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