税理士 伊東修平
【編集部から】
2021年4月7日、第1回目の緊急事態宣言から1年。
社会全体で、身の回りで、さまざまな変化がありました。
税理士試験・公認会計士試験・簿記検定試験の受験生のなかには、学習環境がガラリと変わり、モチベーションが下がってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、「会計人としてどんなことができるのだろう」と、キャリアに対して疑問や不安をもたれた方もいるかもしれません。
そこで、そんな皆さんの夢を少しでも応援することができればと思い、第一線で活躍する会計人の方々にメッセージをいただきました。
※本日から4月13日まで、5人の実務家にご登場いただきます。
経営者と悩みぬいた1年
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たち税理士のクライアントである中小企業の経営を一変させました。緊急事態宣言の発令等によって人の流れが抑制され、私の事務所のクライアントでも売上がほぼ0になったところもあります。そのようななかで、どのように事業を継続させ、従業員をはじめとした関係者の生活を守っていくのか、経営者と一緒に悩んだ1年でした。
また、当事務所では創業支援に力を入れてきました。そのため、開業から日が浅く、前年同月比を条件としていた国の支援策を受けられないクライアントも多くいました。徐々に条件は緩和されてきましたが、それでもいまだに公的な支援を受けられないクライアントは少なくありません。税理士として、「国の支援策を伝えるだけでは足りない」と実感した1年でもありました。
コロナ禍の取り組み―クラウドファンディング支援と、事務所の働き方改革
コロナ禍においては、特別融資や給付金・補助金の対応を行いつつ、積極的にクラウドファンディング支援を行いました。たとえば、当事務所がある東京・板橋区の産業振興公社と協働し、区内の事業者からの相談に数多く対応いたしました。
クラウドファンディングは、単なる資金調達手段でなくプロモーションやマーケティングにも活用できる仕組みです。そのため、アフターコロナを見据えた成長戦略として捉え、今後も事業の柱として積極的にクラウドファンディング支援に取り組むつもりです。
また、コロナ禍においては、従業員の働き方もどんどんアップデートさせています。多くが在宅勤務で、働く時間や休日はほぼ自由。時間に縛られない働き方をするようになりました。
税理士だからできること
税理士として、私が常に意識していることがあります。それは、「税理士の存在意義と提供すべき価値」です。皆さんは、税理士が提供すべき価値とは何だと思いますか? 私は、クライアントの「事業の継続と成長」と考えています。
毎月真っ先にクライアントの経営状況を把握する税理士だからこそ、また、さまざまな業種や地域の事業者と付き合っている税理士だからこそ、気づくことがあるはずです。
当事務所では、税務にかかわらず、資金繰りや販路開拓、人事戦略などについても、毎月の面談の際にヒアリングを行い、事例として蓄積しています。このデータベースをもとに、クライアントに提案も行っています。税理士として、経営者と一緒に成長戦略をつくっていくことは、とてもやりがいを感じる仕事です。
今後、IT技術の進歩により、税理士に求められることは大きな変化が訪れるでしょう。当事務所では記帳を自動化するAIの開発に着手し、単純業務は機械が、経営戦略策定は人が行う体制をつくっていく予定です。
税理士がもっとクライアントの経営のために力を使えるようになることで、中小企業が元気になり、経済の発展に資すると信じています。
<執筆者紹介>
伊東 修平(いとう・しゅうへい)
BR経営コンサルティング/伊東修平税理士事務所代表
商社に勤務しながら2016年に税理士試験合格(3科目独学)、2017年に開業。現在は、法人・個人の経営コンサルティング業務、税務会計業務を行う傍ら、IT企業を自ら立ち上げ、販路拡大サービスやクラウドファンディング事業なども展開する。また、小学校でのプログラミング教室、大学のビジネスコンテストの審査員など、「夢を応援」するための様々な取り組みを行っている。
BR経営コンサルティング/伊東修平税理士事務所
黒船イノベーションズ株式会社
士業クラウドファンディング支援協会