沖縄へ移住し開業
沖縄県宜野湾市、自宅兼事務所で夕日を眺めながら仕事をしているひふみ税理士事務所の酒井です。
妻であり税理士でもある大城由香(旧姓で税理士登録)、パートのNさんと3名で開業し2年が経過しました。北海道出身で地元の商業高校卒業後、「自由に行動できるのは今しかない」と何も考えず沖縄の西表島へと移住 (場末のスナック、住み込みで働く) 。
このような私ですが、縁もゆかりもなかった沖縄で税理士として開業し現在に至ります。『会計人コース』の読者の皆様にはどうぞ受験勉強の合間にでも気楽に読んでいただければ嬉しいです。
高校時代「税理士になろう」と決める
高校時代にカウンター8席と座敷が少しだけの小料理屋でアルバイトをしました。そこで出会った常連さんたちの多くがなぜか中小企業の社長さん。そしてこの社長さんたちがみんな格好良く映ったのです。佇まい、そして金払いがいい! そんな社長さんたちが小料理屋の大将とカウンター越しの会話の中で「うちの税理士がダメだと言うから〜」と何度も税理士というワードが出てくるではありませんか。こういっては失礼かもしれませんが恰幅がよく、ちょっと強面の社長さんたちでも税理士のアドバイスは素直に聞いている…なんだ税理士って職業は? となったのです。
小さな頃から集団行動がどうも苦手で、公務員には向いていないとわかっていたものですから、当時はまだ漠然とでしたが「将来は税理士になろう!」と、心に秘めたのがこの頃です。
2年で5科目合格を目指す
とはいうものの、まだまだ遊びたい年頃。
高校卒業後は沖縄県西表島で1年、その後に沖縄本島へ移りそこでも1年暮らします。が、覚えたことといえば沖縄方言と泡盛だけ! ということに気付き、「これではいけない、社会復帰ができない…」と悟り実家へ帰省。
そこから一念発起し大原簿記札幌校へと通います。オリエンテーションで講師から「数年前、2年5科目合格した方がいる」ことを聞き、無謀にも挑戦してみよう! と簿記論・財務諸表論、消費税に挑みますが、遊び癖が抜けていない私が受かるはずもありません。
なんとか簿記論だけは合格することができましたが、消費税は特にボロボロで理論暗記が全くできず…計算は得意でしたが、理論に大の苦手意識を持ってしまいました。
試験に挫折、2度目の沖縄移住
それでもやはり不合格は悔しく、歯を食いしばり理論暗記を重点的に猛勉強。友人と遊ぶことと、お酒を控えました。まだスマホもない時代。私は集中力が足りなく、これから受験するのであれば間違いなくスマホを解約しているでしょう(スマホは便利ですが使い方には気をつけましょう)。
そんな受験生活の2年目は財務諸表論・法人税法の2科目に絞ってどちらも合格。
3年目は相続税法・消費税法の2科目を受験、どちらも手応え充分で冬の合格発表を待たずして札幌市内の大手税理士事務所に入所。「2年は無理だったけど3年でなんとか合格できる見込みだからよしとするか」と自己満足(結局、消費税法のみ合格)。
その当時はまさかその後合格までに10年以上も費やすなんて夢にも思っていませんでした。というのも税理士という仕事に想像以上に「ハマった」からです。働いてみると前述した高校時代から思い描く税理士像とほぼ一致し、中小企業の社長のために何ができるかを一緒に考え、時には涙を流し、一緒に笑う。
そこに試験勉強に費やすという時間はありませんでした(という言い訳)。まだまだ残業も多い時代で大原の夜間学校にも通えず、このままでは合格できないという危機感と、やはり暖かい沖縄で暮らしたい、という想いが重なり2度目の移住を決断します。
諦めずに受験を続ける
沖縄でも就職先はすぐに見つけることができました。中堅どころの税理士事務所で、北海道時代よりも顧問先との距離が身近に感じられ、アットホームな環境が私には合っていました。
土地柄なのか会食の機会も比べものにならないくらい増加。後は想像通りでございまして、ここでもどっぷり仕事に浸かります。
相続税法の不合格通知は数えること計10枚(年)!
派手に落ち続けました。何件かの顧問先様には毎回、忘年会とあわせて「残念会」を開いていただきましたが年々恥ずかしくなり、挙句の果てには「恒例行事だね」というお言葉も。
ただ、振り返ってみますと受験を毎年続けたことが結果良かったと感じます。これが1年でも空けるとそのまま受験せず、間違いなく税理士にはなっていないでしょう(合格ラインに達していなくても会場へ行き、緊張感を忘れないのも大切)。
怪我の功名、顧問付きで独立
沖縄の税理士事務所では約10年在籍。周りの知人が独立していくなか正直、焦りや羨望はありました。それでも合格していなければどうしようもありません。
その代わり実務はとにかく学びました。税務調査を数多くこなし、相続、医療法人成り、時には社長さんのプライベートなご相談までも。これは相当自信になりました。
また、担当替えの少ない事務所だったので顧問先様とのお付き合いも相当長くなり、独立時にはほとんどの方がついてきて下さるという嬉しい誤算も(暖簾代などの支払いはありませんでした)。
読者の中で現在お勤めになりながら合格できないよ、という方がいらっしゃれば、現状に嘆くのではなく、将来をイメージして楽しんでみましょう。
どんな税理士、生き方をしたいのか
現在は中小企業が主な顧客です。訪問時には次回予定を決めますが、ある程度調整することができますので毎月1週目を中心にカレンダーに空白期間をつくります。
そこへ趣味である旅行を組み込み、国内外問わず毎月どこかへ行き、その先々で気付きを得て仕事にも役立てております。
これは私の一例ですがブログ・各種SNS上では情報発信される税理士さんが多くいらっしゃいます。あんな税理士もいればこんな税理士も。M&A・相続・医療の専門など。
迷いますよね。あれをしよう、でもこれも取り込まなきゃ、と。どうぞ大いに悩んでください。そして開業された際には色々挑戦し、是非あなた色の生き方を見つけてください。楽しい世界が待っています!
私の事務所
ひふみ税理士事務所
所在地:沖縄県宜野湾市(詳細非公表)
事務所から水平線に沈む夕陽がみえます
ブログ:https://123zeirishi.com
私の略歴
1997年 札幌市内の高校卒業と同時に西表島移住
1999年 札幌市へUターン→大原簿記学校へ
2002年 札幌市の大型税理士事務所へ入所(3年3ヵ月)
2007年 沖縄県内の税理士事務所へ入所(10年3ヵ月)
2015年 税理士試験合格(登録は2016年)
2018年 独立開業
本稿は、『会計人コース』2020年5月号に掲載したコラムです。
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