藤木 広
(資格試験のFIN主任講師/公認会計士・税理士)
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繁忙期こそ、計算力に自信をつけるチャンス!
税法科目の計算部分は、答案作成に1時間程度必要となるので、繁忙期には、過去問や専門学校の答練を1から解くほどの時間的余裕はありません。だからといって、1~2ヵ月も総合問題を解かずにいると、「今年もダメかも」という空気を自分で作ってしまうことになります。
ネガテイブな気持ちになりがちな繁忙期におすすめなのが、次の2つの学習方法です。
① 前に解いた問題の「下書用紙」や「答案用紙」を目で追う
総合問題を解くことがどれほど大変かを体が知っているので、1から解き始める気持ちには、なかなかもっていけないものです。それは皆同じで、他の受験生が計算力を落としていく繁忙期こそ、ライバルたちに追いつき、追い越すチャンスです。
そのためには、普段から、計算問題を解いたときの下書用紙や答案用紙を残しておいて、繁忙期には目で追いかけながら、ほば電卓やペンを使わずに解いていきます。
実は、総合問題では、下書きや答案を作成するのに、かなり体力と時間を使います。しかし、下書きや答案を目で追う方法だと、仕事から帰って疲れているときでも、短時間で総合問題を解くことができます。
これからの下書きの書き方を検討するきっかけにもなりますし、何よりも、「仕事の後に、総合問題を1問解いた」「ライバルたちが総合問題を解かない時期に、自分は解いている」という満足感が自信につながっていきます。
② 公認会計士試験の過去問を解いてみる
上記①の方法は、下書用紙や答案用紙を残していることが前提となります。残していない方には、手頃な良問として、公認会計士論文式試験(租税法) の過去問をおすすめします。
消費税法の計算は20分、法人税法は40分程度で解けます。問題と答案用紙は、「公認会計士・監査審査会」のホームページから入手できますし、専門学校によっては、過去の解答解説をホームページに残してくれているところがあるので、解答例も入手可能です。
繁忙期の間に、5年分くらいの公認会計士の過去問を解いて、「自分は、 ここ5年間の会計士試験なら満点を取ることができる」という状態を作ってみてください。すごく自信になるはずです。
繁忙期こそ、今までの理論知識を根づかせる!
社会人なら誰しも、「仕事をしてご飯を食べているのだから、仕事が最優先」という意識をもっているはずです。そして、繁忙期には、「仕事のことで目一杯、とても新しい理論なんか、暗記できない」となります。いや、「今まで覚えてきた理論も見たくない。体が受けつけない」となっている方も多いと思います。
理論の大枠を確認しよう
そんなときにおすすめなのが、「目次を見る」です。理論科目に対しては、かなり有効な方法で、この方法を実践するようになってから、私は、一気に成績上位者になりました。理論のテキストでも、暗記本でもかまいませんが、まず、文字どおり「目次」を見ます。そうすると、当然、全体像が見えます。何を学習しなければいけないか、その要点が目次です。
一通り目を通したら、次の段階である「大見出し」をチェックしていきます。「大見出し」の一つひとつ、すべてに目を通します。私は、同じ色のラインマーカーでなぞっていきました。繁忙期だと、この作業だけで、 1日の学習が終わってしまうかもしれませんが、それでかまいません。「目次」という枠組みの中で押さえるべき項目が「大見出し」になっているわけで、そのことをじっくりと確認できただけでも、大きな前進です。
あとは、同じ要領で、「中見出し」に2色目のラインマーカーを入れ、「小見出し」に3色目のラインマーカーを入れていきます。機械的にラインマーカーを入れていくのではなく、各見出しを噛みしめるように、じっくりと入れてください。この作業で、理論の大枠が確認できるとともに、復習時に、使いやすいテキスト、暗記本になります。
合格答案を作成するためのトレーニング
理論については、テキストや暗記本を見ながらであれば、誰でも、必ず、合格点が取れるはずです。要は、テキストや暗記本を持たなくても、その状態に近づくことができればよいわけです。
そのためには、「目次」→「大見出し」→「中見出し」→「小見出し」が自分の塗ったラインマーカーの色を伴いながら、頭に思い浮かべられるように、そして、それぞれの見出しの段階で、何が書いてあったかを思い出せるように、トレーニングする必要があります。
これはノーヒントだと難しいですが、試験では、思い出すためのヒントとなるキーワードが問題文に散りばめられています。そのヒントを頼りに、「ああ、この論点は、あのページの右上にあったな」というくらいまで思い出せるようになれば、楽に合格答案を作成することができるようになります。
そして、このレベルに引き上げるために効果的なトレーニング方法があります。多くの受験生は、答練を受けて、その復習は、模範解答を読んでおしまいです。ライバルたちがその段階で学習を終えているとすれば、自分はもう一歩、上をいきましょう。
それは、「試験にテキストと暗記本を持ちこめたら、どういった答案を作成するか」をシミュレーションする方法です。実際に答案を書く必要はありません。
頭の中で、「どのような答案を作成するか」、テキストや暗記本のページを何度もめくりながらシミュレーションすることで、そこに書いてある内容を目的意識をもって、何度も確認することになります。私は、この実践的なプロセスが、一番、頭の中に記憶として残ると考えています。
余裕の「ある」「なし」で勉強法を変えよう
一口に繁忙期といっても、よく眠れた週末や朝の通勤途中と、ぐったり疲れた帰宅途中では、コンディションも異なります。余裕のあるときには、「考える」「思い出す」という、少しでも頭を使うアプローチを取り入れて、余裕のないときにはマーカーを引くなどして、勉強から離れすぎない工夫をしてみてください。無事、繁忙期を乗り切って、春からの本格的な学習にスムーズに移行するためのヒントになれば幸いです。
〈執筆者紹介〉
藤木 広 (ふじき・ひろし)
資格試験のFIN主任講師/公認会計士・税理士
1987年に慶應義塾大学商学部を卒業後、当時の6大監査法人の1つ、センチュリー監査法人に就職。同法人に勤務しながら、大手専門学校で公認会計士講座の専任講師を務め、管理会計論、2006年からは租税法も兼任した(監査法人は5年で退所)。大手専門学校を2013年に退社し、資格試験のFINを設立。
※ 本記事は、会計人コース2018年3月号「ムリしないで合格る勉強術 ムリしないで知識をキープする方法」を編集部で再編集したものです。