2020年11月15日(日)に第156回日商簿記検定試験が実施されました。コロナ禍で第155回が中止となったこともあり、今回の試験は特別な思いで臨まれた方も多いかもしれませんね。そんな第156回、受験された皆さんの手ごたえはどうだったでしょうか?
今回は【日商簿記3級うかる勉強法】と題して、ここ最近の出題傾向とそれを踏まえた学習法を、簿記のプロの先生方にお話しいただきました☆
この記事では、平井孝道先生(株式会社M-Cass 代表取締役)にお話をお聞きしています。
12月からはネット試験も始まり、どんどん変化がみられる日商簿記検定。次の受験を考えている方は、これからどんな対策をすればよいか、ぜひ簿記学習の参考にしてみてください♪
Q 日商簿記3級の傾向を教えてください。
A 受験生の苦手な部分を突いてくる!
第1問と第2問に共通して、「少し実務を意識した問題」が出る傾向にあります。たとえば、「旅費交通費等報告書」や「領収書」といった資料が添付されていました。
また、「決算振替仕訳」が出題されている点も注目です。これは、多くの受験生が苦手とする論点なので、試験員も「ここは問いたい!」と思われたのではないでしょうか。
第3問は、「期中の仕訳を問う総合問題」です。これは、典型的な問題であるものの、ボリュームがあるので苦労する受験生が多いです。
第4問は、第156回試験では「帳簿組織」について出題されました。「どの帳簿に記載するのか」という、補助簿について問われたのが、目新しさを感じた点です。
第5問では、新傾向が見られました。今まで日商簿記3級では出なかった「決算整理『後』残高試算表」の作成が、第156回試験で出題されたのです。
この「決算整理『後』残高試算表」は、日商簿記1級や税理士試験(簿記論・財務諸表論)では必須論点ですが、日商簿記3級ではほぼはじめてでしょう。第5問は、「精算表」や「損益計算書」の作成が定番だったので、今後も注意が必要です。
Q これからどう学習すればよいのでしょう?
A 簿記一巡、財務諸表作成ルート、帳簿組織を理解しよう!
まず第1問と第2問は、簿記一巡の流れを頭に入れておくことが重要です。「その仕訳が全体の中でどこにあるのか」がわかっている必要があります。
また、簿記一巡と合わせて財務諸表作成の流れを理解しておくことも大切です。
第156回試験の第5問では、「決算整理『後』残高試算表」を作成する問題が出題されましたが、簿記一巡と財務諸表作成の流れが頭に入っていないと、「これは一体どこで作るものなのか?」と面食らってしまった方もいたのではないかと思います。
第4問についても、そもそも帳簿組織というものを理解することが必要です。
A つまり、簿記の根本を理解することが大事!
いまの簿記教育というのは「試験対策」という側面が強く、第1問対策、第2問対策……というふうに、各問いに対して答えるという練習しかできていない受験生も多いです。
しかし、簿記一巡や帳簿組織、財務諸表作成の流れなど、簿記の全体像を理解していれば、見慣れない問題が出題されても、慌てず対応することができます。
これは3級以外にもいえることですが、「“そもそも”を理解する」ということが重要なのです。どうして会社の会計って家計簿みたいにできないの? なんで左右に同時に記入するの? といったようなことです。
受験生に聞いても、答えられず「そう言われたからやっている」という方が多いです。
とはいっても、大人の脳って「理解」が伴っていないと、記憶しても定着しないんですよね。
「こういうものだから」とわけもわからず問題を解くのではなく、そもそもの簿記の根本を理解することが必要になってくると思います。
Q ネット試験は受けてみるべきですか?
A ネットか紙にこだわる必要はありません。
私としては、ネット試験は絶対に受けてみたほうがいいと思います。ギリギリでダメだったという方がリベンジするのはもちろんですが、まだ自信のない方でも受験されてもいいのではないでしょうか。
ネット試験はいつでも受験ができるので、受け続けていれば問題慣れすることもできると思います(お金はかかっちゃいますが……)。
ネット試験であろうと合格は証明されるので、紙媒体の試験かネット試験かにこだわる必要はないのではないかと考えています。
また、ネット試験でも出題範囲は変わらないとのこと。どんな問題が出るのかはわかりませんが、それでも簿記には「よく出てくる」典型論点があります。ネット試験を受験するとしても、この典型論点の学習を進めることが必要になってくると思います。
<お話を聞いた人>
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass 代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。