【連載】経理のための実践的勉強法~⑰『初めて使用する会計システム』操作理解の方法
- 2026/2/24
- 仕事術

葛西一成@元上場企業経理部長(経理部IS)
【編集部より】
経理部に配属され、会計のことを勉強しないといけなくなったけど、仕事に直結する勉強法ってどうすればよいの? 担当することになった業務について知りたいとき、どのようにアプローチして、どんな本を読めばいい? そんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
そこで、複数の上場企業で経理の実務経験のある、経理部ISこと葛西一成氏に、経理のための実践的な勉強法についてアドバイスをいただきます。ぜひ、スキルアップにお役立てください!(隔月掲載予定)
はじめに
転職先の会計システムが前職と違い、操作に慣れるまで苦労している。
初めてのシステム操作がわからず戸惑っている。
新しく導入されたシステムの機能を使いこなせていない。
経理部門に配属された方の中には、こうした状況に直面している方も多いのではないでしょうか。
今や経理業務において、会計システムはなくてはならない存在です。日々の仕訳入力から決算書の作成まで、あらゆる業務がシステムを通じて行われています。
ただ、会計システムはベンダー各社からさまざまな製品が提供されており、操作方法や機能は製品ごとに大きく異なります。
今では少なくなりましたが、自社で開発した独自システムを使っている企業もあります。
私自身、これまでの経理キャリアにおいて、異動や転職のたびに異なる会計システムと向き合ってきました。
初めて触れるシステムの画面を前に、どこから手をつければよいのかわからず悩んだ経験は一度や二度ではありません。
今回は、こうした状況に直面している経理担当者に向けて、初めて使用する会計システムの操作を理解するための方法を、私の実務経験を踏まえながらお伝えします。
会計システム操作の理解が必要な場面
会計システムの操作を新たに理解しなければならない場面は、経理パーソンのキャリアにおいて意外と多く訪れます。
新入社員として経理部門に配属されたとき、社会人として初めて触れる会計システムに戸惑うことは珍しくありません。
社内異動で経理部門に来た場合は、他部門では使わなかった専門的なシステムへの対応が求められます。転職で新しい会社に入れば、前職とは異なるベンダーのシステムを覚え直す必要があります。
会社が会計システムをリプレイスしたときは、慣れ親しんだシステムから新システムへの移行に適応しなければなりません。
グループ会社間で異動した場合も、同じグループでもシステムが統一されていなければ同様です。
特に経験が浅い経理パーソンにとっては、初めて目にする会計システムの画面に面食らうことも多いでしょう。
仕訳伝票の入力程度であれば、画面を見ておおよその操作方法は理解できるかもしれません。
しかし、それ以外のさまざまな機能や複雑なマスタ設定については、すぐには理解できないのが実情です。
会計システムの操作理解/2つの実践法
新しい会計システムの操作に慣れるには、受け身ではなく自ら動くことが欠かせません。
具体的には、次の2つを実践していくことが必要となります。
●会計システムのマニュアルの保存場所を確認する
●会計システムを触って慣れる
会計システムのマニュアルの保存場所を確認する
マニュアルは、ないよりあったほうがいい。
当たり前のことですが、これを軽視している人は少なくありません。
実際のシステム習得においては、システムを触りながら操作を覚えることに比重を置くべきですが、触っているだけではわからない機能も存在します。
マニュアルを見なければ絶対にわからないような、いわば隠しコマンド的な操作も少なくありません。
だからこそ、どうしても困ったときに試行錯誤しながら悩み続けるのではなく、すぐにマニュアルを参照できる状況にしておくべきです。
そのためには、マニュアルがどこに保存されているかを事前に把握しておく必要があります。
確認すべきマニュアルには、大きく分けて3種類あります。
まず、ベンダー提供のマニュアル。
システムの基本操作や標準機能の説明が載っています。
システムのヘルプ機能やベンダーのサポートサイト、導入時に提供された資料などから確認できます。
次に、社内で作成された操作マニュアル。
自社の運用に合わせた詳細な操作手順書です。
共有サーバーの経理フォルダや社内ポータル、前任者からの引継ぎ資料に含まれていることが多いです。
そして、疑問解決ページやよくあるご質問(FAQ)サイト。
よくある質問とその回答がまとまっています。
システムから直接アクセスできるリンクがあったり、ベンダーのユーザーコミュニティで情報を得られたりします。
加えて、ヘルプ窓口の連絡先(メール問い合わせや電話番号)も把握します。
実務では、このレポートはどうやって出力するのか、この設定はどこで変更できるのか、といった疑問が頻繁に発生します。
このとき、レポート出力のメニュー選択方法や設定変更手順を記載したマニュアルが保存されていると助かります。
歴代の経理担当者が作成した、スクリーンショット付きの操作マニュアルが共有フォルダに保存されていることも多いため、経理部門の共有フォルダは必ず確認しておきましょう。
なお、マニュアルの存在を把握していても、必要なときに見つけられなければ意味がありません。
保存場所を確認したら、すぐにアクセスできるようブックマークしておくか、よく使うマニュアルは手元にコピーを保存しておくことをおすすめします。
このように、さまざまなマニュアルがどこにあるのかを事前に把握し、いつでも確認できる状態にしておくことが、システム操作の理解を早めることに役立ちます。
会計システムを触って慣れる
会計システムの操作を理解するには、やはりシステムを実際に触ってみるのが一番です。
ただし、目的もなく闇雲に触ってみたところで、操作方法を効率的に習得することはできません。
システムにはどのような機能があり、その機能がどういった働きをするのか。
設定はどうなっているのか。これを見極めるという目的を持って触ることで、おのずと操作にも慣れていきます。
具体的には、次のような内容を順番に試してシステム操作の理解を深めていきます。
レポート出力機能を試す
まずは、システムからどのようなレポートが出力できるのかを確認します。
経理業務ではさまざまな帳票を出力する機会が多いため、この機能の把握は欠かせません。
出力可能なレポートの種類を確認します。仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳、合計残高試算表、決算書など、どこまで対応しているかを見ておきます。
さらに出力形式の選択肢も確認しましょう。
Excel、CSV、PDFなど、どの形式で出せるかによって、その後の作業のしやすさが変わります。
画面上のレポートから仕訳伝票へドリルダウンできる機能があるかどうかも見ておくと便利です。
さらにシステムによっては必要な情報を自由に組み合わせてオリジナルのレポートを作成できる機能もあります。
こうした便利機能の有無も確認します。
仕訳入力画面を確認する
経理処理の入り口ともいえる仕訳入力について、画面構成はどうなっているか、どのような入力方法が用意されているかを確認します。
基本的な仕訳入力の操作方法に加え、仕訳インポート機能の有無とそのインポート用のExcelフォーマットも確認しておきます。伝票の種類として入金伝票、出金伝票、振替伝票、決算伝票などが用意されている場合、自社でそれらの伝票をどのように運用しているかも調べておきましょう。
さらに、仕訳伝票の承認や転記の機能とワークフロー、仕訳の修正や削除の操作方法、履歴管理の仕組みも押さえておきたいところです。
マスタ体系を把握する
勘定科目や部門などのマスタ体系を把握することで、自社の会計処理の全体像が見えてきます。
まずは、システムに設定されている勘定科目と補助科目のマスタ体系を確認します。
システムによっては補助科目が存在せず、代わりに勘定科目が細かく設定されていることもあります。また部門マスタの体系と、損益実績管理がどの粒度の部門で行われているかも確認しておきます。
実務では部門別損益データを出力・加工し、上司への報告資料を作成する場面も多いため、しっかり部門体系は理解しておきたいところです。
さらに、企業によっては、部門別・事業本部別の貸借対照表を作成していることもあります。これが作成されている場合、貸借対照表の勘定科目の入力は複雑になりがちですので注意が必要です。
そして、経理処理の中でも非常に重要となる消費税マスタの設定状況として、税区分の種類、インボイス対応、税率の自動判定ロジックなども把握しておきます。
テスト環境の有無を確認する
テスト環境が用意されていて、そこで自由に操作を試せるのであれば、積極的に活用させてもらいましょう。本番環境では試しづらい操作も、テスト環境であれば気兼ねなく実行できます。
適当なサンプルデータを入力して、仕訳入力から仕訳インポート、レポート出力まで一連の流れを試してみると、システムがどのような動きをするのかを体感的に理解できます。
新機能やAI機能の確認
最近では、AIで仕訳起票をサポートする機能など、新しい技術を活用した機能が搭載されているシステムも増えています。自社で使用している会計システムにこうした新機能があるのか、それをどのように活用しているのかも確認しておくと、業務効率化のヒントが得られることがあります。
まとめ
初めて使用する会計システムの操作を理解するには、「会計システムのマニュアルの保存場所を確認する」、「会計システムを触って慣れる」、この2つを実践する必要があります。
まずは、会計システムのマニュアルの保存場所を確認すること。
ベンダー提供のマニュアル、社内作成の操作マニュアル、Q&Aサイトの所在を把握し、困ったときにすぐ参照できるようアクセス方法を整理しておきます。
次に、会計システムをひたすら触って慣れること。
レポート出力機能、仕訳入力画面、マスタ体系を順番に確認していきます。
テスト環境があれば積極的に活用し、一連の操作を体感的に理解します。新機能やAI機能の導入状況も確認しておくとよいでしょう。
新しい会計システムの操作に苦労されている方は、今回解説した2つの実践法を参考にしてもらえたらと思います。
<執筆者紹介>
葛西一成@元上場企業経理部長
東証プライム・グロース上場2社で経理部長を経験後、独立開業。独立後は上場企業の決算業務支援、会計関連システムの開発導入サポート、経理実務セミナーや執筆活動に注力。
著書に『経理のExcelベーシックスキル』(中央経済社)、『組織を整え人材を活かす強い経理の作り方』(税務研究会出版局)がある。
株式会社IS経理事務所 https://www.is-keiri.com/
Xアカウント「経理部IS(@keiri_IS)」
【「経理のための実践的勉強法」バックナンバー】
第1回:スキルアップを目指そう!
第2回:前払費用の実務
第3回:賞与引当金の実務(前編)(中編)(後編)
第4回:固定資産実務をマスターするまでの道のり
第5回:固定資産の実務における基本的な理解(前編)(後編)
第6回:法人税等の計算スキルを身につける(前編)(後編)
第7回:税効果会計の勉強の進め方<基礎スキル>(前編)(後編)
第8回:税効果会計の勉強の進め方<実務スキル>(前編)(後編)
第9回:リスタートにあたってのイントロダクション
第10回:一人前の経理になるためのステップ事例(中小企業編)
第11回:一人前の経理になるための勉強ステップ事例【中堅・大企業編】
第12回:経理業務におけるタイムマネジメントのしかた
第13回:経理実務の勉強スケジュール
第14回:まともな引継ぎがない場合の経理実務キャッチアップ方法【前編】
第15回:まともな引継ぎがない場合の経理実務キャッチアップ方法 (中編)
第16回:まともな引継ぎがない場合の経理実務キャッチアップ方法 (後編)











