【連載】中小企業の経理スキル大全~第2回:社内規程


ぶーちょ

はじめに

会計人コースweb読者の皆様、こんにちは。
ぶーちょです。

中小企業の非上場グループ企業で13年、上場グループ企業で3年、合計7社を転々としている野良の経理マンです。
平たく言えばそこらへんに転がってる普通のオッサン経理マンです。

本記事では、中小企業経理部の実態について解説したいと思います。

まずは前提条件です。

本記事は、次のような環境の中小企業経理部を想定しています。

● 非上場会社(上場会社の関連会社でもない)
● 中小企業(売上10億円~300億円)
● 社内に内部監査の機能を持つ組織はない
● 経理スタッフは自分を含めて5名以下

つまり、私がこれまで働いたことがあるような「ふつうの中小企業経理部」が前提です。

「俺がルール」の非上場の中小企業

非上場会社では「俺(社長)がルールだ!」で仕事が回っています。
日本の企業は9割以上が同族会社と言われており、所有と経営の分離がされていません。
つまり社長=株主です。社長の言葉が会社のルールになっています。

それでも株式会社である以上は、定款は絶対に存在しますし、常時10名以上の従業員が働いていれば就業規則の用意も必要です。

どんなに「社長の言葉は絶対」であっても、法律から外れた行為はできません。
売上規模が10億円を超えたり、従業員が50名を超えるような規模の会社になれば、一般的には社内規程はそれなりに整備・運用がされています。

社内規程は「誰の仕事」なのか

「社内規程」と聞くと、人事や総務の仕事、もしくは上場会社のようなキッチリした会社だけが用意すべきもの、というイメージがあります。

たしかに、各種規程を管理する部門は人事総務部が多いですし、上場会社では上場審査の基準を満たすために一定以上の整備が必要です。

しかし、実務の現場では、経理部が社内規程に触れる機会がとても多く、「ルールを守らせるのは経理部の仕事」くらい重要なものです。

経理パーソンが規程を把握しておくべき理由

経理の業務は、決して「経理部が勝手に決めて進めている」わけではありません。

例えば、支払業務ひとつ取っても「いつまでに支払いをするのか」「どの勘定科目で処理するのか」「そもそも、この請求書は支払っていいのか」といったことは、社内規程で定められている内容です。

経理パーソンが「昔からこのやり方だから」では、会社として危うい状態です。
経理として実務をやる以上、ひとつひとつの処理の根拠となる各種規程類は、知っておくべきルールになります。

社内規程の全体像

社内の規程類は、大きく次の5つに分類されます。

1.会社全体の規程
2.人事・総務系の規程
3.経理系の規程
4.営業・購買系の規程
5.その他の重要な規程

それでは以下、経理の目線で要点を書いていきます。

会社全体の規程

会社の「ルールのルール」を定める規程です。
主な規程類は次のとおりです。

規程内容
定款会社の名称や事業の内容、会計期間を定めている
取締役会規程株主総会の次に重要な会社の意思決定機関の運営について定めている
組織規程社内の組織を定めている規程
職務分掌規程組織ごとの役割について定めている規程
職務権限規程会議体や役職によって決裁できる金額、範囲について定めている規程

このなかでも重要な規程が「定款」です。
そして、この定款のルールについて、取り決めをする場所が株主総会です。
株式会社は株主の所有物ですので、会社の重要なルールは株主の投票によって決まります。

また、経理の実務においては、最初の例に挙げた支払業務で「部長の承認があれば支払っていいのか」「取締役会の決議が必要なのか」といったところは、職務権限規程で確認することになります。

人事・総務系の規程

就業規則や給与規程、重要な会議体など、働く上での基本的なルールを定めている規程です。
主な規程類は次のとおりです。

規程内容
就業規則労働日数や労働時間、休暇、退職手続き等の「働き方」について定めている規程
旅費規程旅費の範囲や金額について定めている規程(就業規則に定めている会社もある)
給与規程(賃金規程)給与の決定方法や計算方法、支払日を定めている規程
会議規程社内の重要な会議の開催方法を定めている規程

このうち、就業規則や給与規程は、人件費の計上額や支給額の根拠となる規程を定めており、経理の実務においては重要な規程類になります。

例えば、賞与引当金は、給与規程(賃金規程)で定められたルールに則って引当金を計上しますし、出張旅費の日当は就業規則で金額が定められています。

この他にも規程を管理するための「規程管理規程」のような、社内規程の運用ルールを定めている基本規程も人事・総務系の規程に含まれています。

人事総務系の規程類は、働く上での基本的なルールを定めているだけあって、とても範囲が広いです。

経理系の規程

経理にとって最も重要な規程類で、財務諸表を作成するためのルールを定めています。

主な規程類は次のとおりです。

規程内容
経理規程仕訳や伝票処理、支払業務などの経理実務全般の取り扱いについて定めている規程
勘定科目処理要領勘定科目の体系や定義を定めているマニュアル
原価計算規程直接費・間接費の区分や配賦基準を定めている規程
固定資産管理規程固定資産の取得や台帳の管理、償却方法について定めている規程
予算管理規程予算の目的や策定手順、管理する組織を定めている規程

経理系の規程は、財務諸表の信頼性を担保するためのルールが定められており、内部統制の中核となる規程類です。

非上場会社では聞き馴染みのない内部統制ですが、ミスや不正を防ぐための重要な仕組みです。「ルールを守らせるのは経理部の仕事」と言われる理由は、経理部が内部統制の運用において中心的な役割を担っているためです。

営業・購買系の規程

売上や仕入、在庫といった販売活動のルールを定めています。

主な規程類は次のとおりです。

規程内容
販売管理規程販売や見積、納品、請求書について定めている規程
購買管理規程仕入や発注、検収、支払いの手続きについて定めている規程
外注管理規程外注をする判断基準や品質、納期の管理について定めている規程
棚卸資産管理規程在庫の保管や管理、廃棄について定めている規程
実地棚卸実施要領在庫をカウントするためのマニュアル

商品の受け払いや販売時の入金、在庫の管理は、ミスや不正が起きやすい領域です。経理としては業務フローを理解しておく必要があります。

一方で、中小企業の販売活動はスピード感が命です。ガチガチのルールにして販売の機会を失ったり、お客様や取引先様に迷惑をかけたり、そもそも現場でルールが守られないようであれば、規程として定める意味もありません。

販売に関係する規程類は、現場で運用されるような作り方が必要になります。

その他の重要な規程

人事や経理、販売活動の他にも、重要な規程類はたくさんあります。
非上場会社だと整備していないこともありますが、重要性はとても高い規程類です。
主な規程類は次のとおりです。

規程内容
内部監査規程内部牽制制度を補完するための規程
与信管理規程売掛金の限度額や回収条件について定めている規程
契約管理規程契約書の作成や保管、更新について定めている規程
情報セキュリティ管理規程アクセス権限や情報漏洩について定めている規程

「その他の重要な規程」とはしていますが、経理部門では、与信管理規程は資金繰りへの影響は大きいですし、契約書管理規程は収益認識基準やリース会計などにも直結する規程類です。

なかでも内部監査規程は、非上場会社でもコンプライアンスへの意識が高まっており、経理部門が旗振り役となって規程が運用・機能しているかどうかを定期的に見ていくことになります。

まとめ:社内規程は「俺(会社)」に事故を起こさせないための安全装置

社内規程は、会社で働く従業員を縛り付けるものではありません。
会社に事故を起こさせないための安全装置です。

前回の記事で「年次決算の作業はバックオフィス業務のすべてが詰まっている」と書いたとおり、ヒト・モノ・カネ・情報、社内で起きたすべての取引が財務諸表に集約されます。

社内規程が曖昧な会社ほど、不正の意識がなくても財務諸表に悪い影響が出やすくなります。
財務諸表を作成する経理部門にとって、社内規程を機能させることも重要な役割の1つです。

なんでもやるのが経理パーソンです。

社内規程の理解が深まれば、より高い視点で仕事ができるようになります。
経理パーソンとして実力もキャリアの幅も、間違いなく上がります。

【プロフィール】
ぶーちょ@野良経理


窓際にも座らせてもらえないバツイチ野良経理
経理歴17年/上場会社・経理財務部長
京都府出身。1985年生まれ。
経理部のコピー係からキャリアをスタートし、業務システムメーカー、町工場の一人管理部を経て上場会社へ転職。東証グロース・スタンダード上場の2社を経験したのち、現在の会社へ。
X(旧Twitter)やnoteでは、うだつの上がらない30代のオッサン経理マンに向けて、非上場会社の経理実務について発信。

X(旧 Twitter):@buchok_dojo
note:https://note.com/buchok_dojo


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