会計事務所QUEST~9月の章~いつわりの会議費…じつは交際費!?


日々の仕訳や法人税申告書の作成の中で必ず出てくる「交際費」。

領収書を見て、「これは交際費でいいのかな」「会議費や福利厚生費にできないのかな」と迷う場面は多いですよね。

今回は、交際費の意義と損金不算入制度について、「いまさらだけど知っておきたいポイント」を整理してみます。

それでは、早速みていきましょう!

交際費はなぜ損金不算入なの?

交際費は営業経費として必要な部分があるものの、原則として大企業では損金不算入とされています。この理由は、以下のようなものがあります。

・交際費を多く使える資本力のある大企業が、交際費をたくさん使えない企業に比べて競争力が不当に高くなるのを防止するため
・大企業の交際費は膨大な額になりやすく、損金算入を認めれば法人税収が大きく減ってしまうため
・交際費と称して役員や社員の飲食・娯楽費とするような、過度な経費計上を防ぐため

一方で、中小企業は取引先との関係作りに交際費は欠かせません。そこで中小企業には一定額の損金算入を認める特例を設けて、競争条件をならす政策が取られているのです。

この特例については、意外に思われるかもしれませんが、法人税法の本法ではなく、租税特別措置法61条の4に規定されています。

「租税特別措置法」は特定の政策のための期限付きであることが多いですが、交際費の特例規定は20年以上も前から、期限が切れるごとに延長されてきました。そのため、本来は特例であるにも関わらず、今ではすっかり「中小企業は800万円まで経費になる」という考え方が定着しています。

でも、交際費はあくまでも原則、損金不算入!これを念頭に置いておきましょう。

損金算入が認められる中小企業

それでは、大企業と中小企業の線引きはどうなっているのでしょうか?

現行制度では、「期末時点の資本金または出資金」(以下、「期末資本金等」)によって、以下の3つに分けられています。

  • 期末資本金等が1億円以下
    ⇒800万円(事業年度12ヶ月の場合)または接待飲食費の50%を超える部分が損金不算入
  • 期末資本金等が1億円超~100億円以下
    ⇒接待飲食費の50%を超える部分が損金不算入(800万円基準はなし)
  • 期末資本金等が100億円超
    ⇒全額が損金不算入

多くの中小企業は資本金が1億円未満ですので、①についてもっと詳しくみていきましょう。

交際費とは?接待飲食費とは?

800万円基準は知っているけど、そもそも交際費ってどう見分ければよいのでしょう?

「交際費と判断するポイント」として、次の3つがよく挙げられます。

・支出の相手方 
⇒事業関係者である(取引先だけでなく自社の役員・従業員・株主なども含む)

・支出の目的
⇒事業関係者との親睦を密にして取引関係を円滑にするため

・行為の形態
⇒接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為である

※供応…「きょうおう」と読み、酒食を振る舞いもてなすこと。接待とほぼ同義語。

ただ、この3つに該当するかどうかを日々の仕訳でいちいち考えるのも難しいですよね。

そこで、次のようにケース分けしておくとよいのではないでしょうか。

・取引先との飲食代で一人当たり1万円超であれば、交際費
・一部の従業員に限定した、会議目的ではない、社内の者だけの飲食代(「社内飲食費」という)は、交際費(1万円基準はなし!)
・全従業員を対象とした、慰労目的の旅行やイベントに係る費用は、福利厚生費
・取引先に対するお中元・お歳暮など贈答品の購入費用は、交際費(ビールなどお酒は消費税8%)
・取引先の慶弔時における祝儀・香典などは、交際費(消費税は課税対象外)
・新規顧客向けの宣伝用粗品の購入費用は、広告宣伝費

やはり特に注意すべきなのは、飲食代です。
一人1万円以下なら会議費、と考えている人も多いでしょう。

しかし、交際費から除かれる会議費は「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」と記されています。
※国税庁HP「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

つまり、会議費・交際費の見分け方は、「その飲食の目的が会議なのか、親睦を密にするためなのか」という目的が重要で、じつは金額判定は関係ないのです。

飲食代が年間800万円を超えるような企業に対しては、飲食代について「参加した人数、参加者は社内か社外か、その目的は何か」などを記録した書類を保存しておくよう、アドバイスしておきましょう。

また、「交際費は800万円までOK」というのはみなさん知っていますが、「接待飲食費の50%」との選択適用であることは忘れがちです。交際費のうち、接待飲食費が1,600万円を超える企業では、こちらの要件を使った方が有利になることも覚えておきましょう。

さいごに

交際費の損金不算入規定は法人税法に限ったもので、個人事業主(所得税法)への適用はありません。ただし、個人事業主ではそもそも「事業の必要経費か、事業と関連のない家事費か」という観点があります(2月の章参照)。

余談ですが、他にも経費で損金不算入規定があるものは、「寄附金」です。今回は触れていませんが、興味を持った人はぜひ調べてみてくださいね!

<著者紹介>
定岡 佳代(さだおか かよ)

税理士
兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。
関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。
硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。


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