人気ブロガーが教える 税法大学院はじめの一歩


佐藤憲亮

はじめに

先日の税理士試験合格発表を受け、大学院を検討してみようかなと考えている方は多いのではないでしょうか。
近年は税理士試験科目を一部免除できる大学院を選択する方が増えており、税理士試験後や合格発表後に情報収集を開始する方も多いと聞きます。

本記事では、これから大学院進学をする前に知っておきたいことを5つピックアップして解説します。
税理士になるためのルートを迷っている方は是非参考にしてください。

官報に載るのは試験合格だけじゃない

税理士試験に合格すると官報に氏名が記載されるため、5科目合格者を「官報合格」、大学院で税理士試験科目の一部免除を受けて税理士になる者のことを「院免」と言ったりします。

しかし、大学院で一部科目免除を受けた場合でも官報に試験免除者として氏名が記載されます。
人生で官報に氏名が記載されることはあまりない経験となりますので、その記載される区分が気になるという方もいるかと思いますが、税理士試験を2科目合格後、大学院で一部科目免除を受け、その後、試験で1科目合格すると試験合格者の区分で官報に載ります。
また、残り1科目で税理士試験をクリアできる状況で2科目を受験し、1科目のみ合格した場合は試験免除者の区分で官報に載ります。つまり、税理士になるための条件をクリアした最後の方法によって官報への記載区分が変わるということです。

試験合格でも試験免除でも試験勉強をしていない科目、実務での経験が少ない科目については資格取得後も勉強をし続けないといけないというのは変わりません(受験した科目でも毎年改正があるため勉強は欠かせませんが)。
そうすると、大学院に進学するかどうかの判断要素として、大学院での勉強が税理士の実務に役に立つのかどうかがポイントとになります。

私は一部科目免除を受けられる大学院を修了し、現在は独立開業して税理士事務所を運営していますが、大学院で学んだことは今でも実務で役に立つことは多いですし、当時も新たな気づきを与えてくれることが多かったです。
税理士試験、大学院、いずれを選択したとしても、本気で取り組めば必ず得られるものはあります。

税理士試験と大学院の組み合わせはどうするべきか

大学院を視野に入れていれば、税理士試験を3科目合格すると税理士になることが現実的になってきます。
その場合は、3科目合格前に大学院に行くことも有効ですが、合格科目がゼロの状態で大学院に行くのは少し厳しいと思います。

税理士試験は難易度が高い試験となりますので、大学院へ行く前に3科目合格できるか自身の勉強環境を踏まえて検討する必要があります。

税理士試験へ挑むことへの覚悟や今後勉強時間が確保できるかを検討しないまま大学院に進み、大学院は修了できたが、その後の税理士試験を合格することができず、資格取得を諦めたという人もいます。まずは勉強時間を確保できるかを検討し、勉強するための環境を整えていくことが重要です。

税理士試験が長期化している人ほど考えるべき大学院

税理士試験が終わったら、今までできなかったことに挑戦しようと考える人は多いのではないでしょうか。
しかし、受験生のときは勉強以外のことに時間を費やす余裕はなく、税理士試験が長引けば着手することは年々難しくなっていきますので、試験を少しでも早く終わらせることが何より重要です。

税理士試験の不合格が長期的に続いていて、なかなか結果が出ないのであれば、より税理士になれる可能性が高い大学院を選ぶのが合理的だと思います。
3科目合格している状況であれば、2年で大学院を修了して税理士になることができます。

税理士試験の終わりが見えてくれば将来設計がしやすくなりますので、自分のキャリアや家族のこと、やりたかったことに挑戦するなど、具体的な予定も立てやすくなります。

大学院についての調べ方、年間スケジュール、指導教授について

(1)大学院についての調べ方

税法免除が受けられる大学院は数多くありますが、河合塾KALSで公表されている「税理士税法科目免除大学一覧」が参考になります。

この一覧に記載された大学院が一部免除を受けられる大学院の全てではありませんが、まずは一覧に記載された近隣大学院の資料請求、説明会がある場合は説明会に参加するなど情報を収集していきましょう。

(2)大学院の年間スケジュール

・春入試1月~2月頃(秋入試は9月~10月頃)
・4月~7月 前期開講期間
・8月~9月 夏季休講期間
・10月~1月 後期講義期間
・2月~3月 冬季休講期間

大学院により期間は少し異なるかと思いますが、概ね上記のようなスケジュールで進んでいきます。
大学院によって入試試験の内容や傾向が異なりますので、税理士試験後は入試に向けて過去問など解いておくといいでしょう。
また、入学してから1年目(M1)は必要単位の取得と修士論文のテーマを決定することに多くの時間を使うことになり、2年目(M2)は論文執筆に多くの時間を使います。

(3)指導教授について

大学院により学生の受入人数が異なりますので、1人の学生につき1人の指導教授、複数人の学生に1人の指導教授の大学院もあります。

どちらがいいかは一概には言えませんが、学生の人数が多い大学院では直接教授から指導を受ける機会は少ないかもしれません。
ただ、論文は教授の指導を受けながら執筆していきますので、コミュニケーションを密に取りながら指導に沿って進める必要があります。
そのため、教授との相性も重要になりますので、周りに志望する大学院に行った人がいる場合は、教授についての情報も収集するようにしましょう。

大学院にかかるお金の話

税理士試験にかかる大手予備校の費用は高くても1科目20万円~30万円ほどですが、大学院は2年間で120万円~400万円ほどかかります。
大学院に行くには高い学費がかかるため選択肢から除外されている方も多いと思いますが、奨学金制度を利用することができます。

日本学生支援機構の奨学金を利用すれば、収入や最終学歴における成績によっては、無利息(1種)を利用することができます。
大学院での学業成績により返済免除を受けられる可能性もありますので、奨学金利用なく学費を払える状況であっても、条件が合うのであれば奨学金利用をおすすめします。
なお、1種に条件が合わない場合であっても、利息が生じる2種を利用することが可能です。

2種は在学中利息がかからず元本据置となり、大学院修了の7カ月後に返済が開始します。
それでも奨学金を利用するのは・・・と躊躇する方もいるかもしれませんが、まずは今後税理士試験に費やすであろう時間と費用、予想される得られる知識や経験との比較により総合的に比較検討しましょう。
ただ、税理士になれば収入を増やせる道はかなり広がりますので、個人的には金銭のみの理由で大学院を除外するのはもったいないと思います。

また、奨学金には、授業料だけではなく生活費も含めることができますので、授業料よりも多目に借り、残額を返済に充てれば、しばらくは手元資金が減ることはありません。

その他、大学院生は学割が使えるサービスが多くあり、使えるとちょっと得した気分になります。
一例を記載しますので、参考にしてください。

学割が使えるサービス
・Amazon Prime student
・PC(HP、Dell、NEC、レノボ、appleなど)
・定期券、新幹線、航空券など
・スマホ利用料、音楽配信サービス利用料など
・各アミューズメント施設利用料
・学割対象の飲食店 など

<プロフィール>
佐藤憲亮(さとう・けんすけ)


佐藤憲亮税理士事務所代表。
京都市出身。税理士業界で15年の実務経験を積み、大学院に進学。実務や大学院で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆を行う。
医療系特化事務所、社員税理士を経て、気軽に相談できる専門家として、2023年に京都市中京区にて税理士事務所を開業。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理、財務、税務の支援を得意としている。


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