修了考査合格後、なぜあえて会計士登録をしなかったのか?〜その理由と資格の魅力


伊藤七海
(株式会社英⽂IR研究所代表取締役社⻑CEO)

【編集部より】
公認会計士として活動するには、公認会計士試験に合格後、いわゆる最終試験である修了考査に合格し、登録する必要があります。そのような数々の難関試験を突破したにもかかわらず、「あえて会計士登録をしない」という選択をする人も中にはいます。
本記事の執筆者である伊藤七海さんもその一人。なぜ登録する必要がないと思ったのか、登録しなかったからこそ感じた公認会計士の強みとは何か。これまでのキャリアを紐解きながら、その理由と資格の魅力を教えていただきました。

会計士を目指したきっかけ・監査法人時代

みなさん、こんにちは。伊藤七海と申します。私は大学在学中に公認会計士試験に合格し、その後修了考査にも合格しましたが、あえて公認会計士登録は行っていません。
今回は、私のこれまでのキャリアと、登録しないという選択をした理由についてお話します。

私が公認会計士の道を志したきっかけは、大学入学時にキャンパス前で配られていたティッシュでした。何気なく手にしたそのティッシュに印刷されていた「公認会計士」という文字に惹かれ、気軽な気持ちで説明会に参加したことが、この職業を目指すきっかけとなりました。

また、会社経営者である父が公認会計士にお世話になっていることを知り、公認会計士という職業の重要性を認識したことが、この道を選ぶ後押しになりました。

試験合格後は、監査法人の金融事業部で働き始めました。国内外の大手の金融機関がメインクライアントでしたので、経理担当の方も社内チームメンバーも非常に優秀で、刺激的な日々を送りました。
入社早々に監査先の役員クラスの方々と話す機会もあり、信頼感を得るためのプロフェッショナルとしての所作を学んだのもこの時期でした。

一方で、監査という業務を通じてでは、自分で営業をしたり、事業を企画したりと、実際に事業サイドとして関われないことに、もどかしさも感じていました。この時期はとにかく様々な方に話を伺い、「公認会計士」に囚われないキャリアの選択肢を模索していました。

金融業界でのキャリア

その後、証券会社や投資ファンドへの転職を決意します。営業、財務分析、市場分析、投資検討など、幅広い業務に携わることで、会計の知識だけでなく、ビジネスの現場で必要とされる実践的なスキルを身につけていきました。監査法人時代に比べ、「オーナーシップ(自主性)」をもって働くことが求められ、働く時間も長くなりましたが、その分、頭を使って働くやりがいを感じました。

金融業界で働く中で特に印象的だったのが、オーストラリアのシドニーで過ごした9ヵ月間です。仕事と家庭のバランスを大切にしながらも高い実績を上げる現地の方々の姿勢に感銘を受け、自分自身の働き方についても見直すきっかけとなりました。

職場の人とマラソンをしたり、ビーチを散歩したり、サーフィンをしたりと、遊びも非常にアクティブで、毎日の生活が充実していました。

動物園にコアラを見に行った帰りのフェリーにて

現在

これらの経験を経て、私は、自分の専門性を社会に役立てながら、充実したプライベートも大切にするというライフスタイルを実現したいと考えるようになりました。現在では、好きなプロダクトのマーケティング部署で働きながら、自分の会社「英文IR研究所」も立ち上げています。

「英文IR研究所」では、2025年に義務化された英文での決算開示の支援を中心に、会社が海外投資家とのコミュニケーションをスムーズに行えるようなサービスを提供することを目指しており、セミナーなどにも登壇予定です。

“あえて” 会計士登録をしなかった理由

私がこれまで会計士登録をしてこなかった理由は、「公認会計士」という枠に収まることなく、幅広い分野で経験を積みたかったからです。

「公認会計士」という印象がつきすぎてしまうと、どうしても会計関連の仕事を任されるようになってしまいます。しかし、これまで公認会計士という肩書に囚われずに仕事をしてきたおかげで、金融やマーケティングなど多岐にわたる業務を経験することができました。

そしてこれらの経験を踏まえ、ついに、近々会計士登録をすることを決めました。自らの会社を設立し、公認会計士としての価値を発揮できる基盤が整ったことで、お客様からの信頼を得るためにも、この資格が必要不可欠だと判断したからです。

上場企業のIR担当者の方々等とお話する中で、「公認会計士」であることの重要性を日々感じています。

さいごに

最後に、みなさんへ。公認会計士の資格は、会計・監査の分野だけでなく、どんなビジネスにおいても強力な武器になります。また、クライアントからの信頼や、多様な働き方の選択肢も得ることができ、仕事や人生をより豊かにする礎ともなります。

公認会計士試験へのチャレンジは、新たな扉を開く第一歩です。恐れずに飛び込んでみてください。応援しています!

<執筆者紹介>

伊藤七海(いとう・ななみ)

株式会社英⽂IR研究所代表取締役社⻑CEO
慶應義塾大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。卒業後、監査法人トーマツの金融事業部にて監査・アドバイザリー業務に従事し、会計・監査の実務経験を積む。その後、UBS証券投資銀行部門のTMTセクターに転身。IPO支援、IR支援、M&A、資金調達支援など、幅広い業務に関与。さらに、EQTパートナーズ株式会社インフラストラクチャー部門にて、シドニーと東京の両オフィスで投資検討業務を経験。その後、株式会社英文IR研究所設立。


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