中島みのる
【編集部より】
学習に取り入れる受験生も増えている「デジタルツール」。とはいえ、‟具体的に何ができるの?”‟勉強に適したアプリはどれ?”など、まだまだ活用しきれていない…という人も多いのではないでしょうか。
そこで、看護師として働きながら税理士試験の簿記論・財務諸表論にダブル合格された中島みのるさん(通称:わんこ先生)にデジタルツールの活用法を教えていただきました。
iPad勉強のすすめ
こんにちは! わんこです!
私は看護師として仕事をしながら勉強し、簿記論と財務諸表論に3回目の受験でやっと合格しました。合格した年は諸角崇順先生の「かえるの簿記論・財務諸表論」を受講し、働きながらいかに効率よく学習するかを模索して、デジタルツール「iPad」を活用していました。
iPadを勉強に導入するメリットは「テキストの一元化」と「時間の有効活用」だと思います。
テキスト、問題集、実力テストなどをすべてiPadで管理し持ち運びができます。
OCR機能でスキャンされたものは文字の検索ができるため、何冊もあるテキストをぺらぺらして探す手間を省けます。
iPadがあれば外出先でちょっとした時間に勉強ができ、スケジュール管理もiPadでできるため勉強のすべてをiPadで完結させることができます。
簿・財の勉強で使用したアプリと活用方法
私が簿記論・財務諸表論を勉強するうえで使用したアプリは主に①Goodnotes5と②暗記マーカーの2つです。
この2つのアプリを勉強でどのように使っていたのかを紹介していきます。
Goodnotes5
私がiPadでの勉強で最も使っているのが「Goodnotes5」というメモアプリです。
Goodnotes5で「テキストの一元化」が簡単にできるようになります。
私の場合、まず科目ごとにファイルを作成し、さらにテキストと問題集、テストなど種類ごとにファイルを作成しています。
また、直前期と直前期以前でも分けていました。
ファイルをたくさん作った結果、目的の場所にたどり着くまでの時間が少々かかってしまうという弊害が生まれてしまいましたが、1冊1冊の中身を探す時間は減りました。
書き込みをするペンの色を分けており、授業のメモは基本的に「青」を使っています。
先生が特に重要と言われたところは「赤」でメモをとります。
自分で勉強するときに考えたことなどは「緑」で書き込み、テキスト内で関連する項目は「ページ数」を書き込みます。
書き込みの色分けはiPadでなくても、紙の教材でもできますね。
また、Goodnotes5では「なげなわツール」と呼ばれる機能でコピーしたい場所を囲むことで簡単にスクリーンショットを撮り、貼り付けることができます。
つまり、手書きでメモしたり、大きさを考えてコピーして糊付けしたり関連ページを何回もめくったりする作業の手間を省くことができ、関連する情報をそのページ内にまとめて「一元化」することができます。
これは退職給付債務の理論のページですが、退職給付債務の意義に出てくる「退職給付」の意味が書かれているページをコピーして貼り付けることで、「退職給付ってなんだっけ?」となったときに探す必要がありません。
割引計算を行う理由も同様に、退職給付に適用される割引率がすぐ分かるように他のページをコピーして貼り付けています。
この方法は問題演習でも便利で、解答解説のページにテキストの該当箇所をコピーし貼り付けています。
まとめノートを作成する場合も同様で、コピーするだけなので何度も同じ内容を書き写す手間が省けます。
これは私もよくやってしまうのですが、時間をかけてまとめノートを作ると、その出来栄えに満足してしまって復習をしないなんてことがよくあります。でも、それではダメですよね…。
「時間をかけて手書きをすることで覚えられる」という意見もあるかとは思いますが、ここでの目的はあくまで、「探す」という無駄な時間を省く、まとめる時間を短縮することが目的です。
もし覚えられないのであれば、何度も書くなど時間をかけて覚える必要はあります。
さらに、Goodnotes5ではマーカーを重ね塗りしても下の文字が消えることはありません。
問題演習を何度もやっていると1回目の時は不正解だったものがだんだん解けるようになってきますよね。
また、逆に、前回は解けたのに今回は間違えてしまった、前回間違えていて理解したはずなのにまた間違えていたなんてことはありませんか?
下の画像は簿記論の総合問題の間違えた箇所にマーカーを引いたものです。
このページではピンク、オレンジ、ブルーのマーカーを使っています。
(グリーンは配点箇所なので気にしないでください。)
問題演習の1回目がピンク、2回目がオレンジ、3回目がブルーです。
間違えた箇所にマーカーを引いているだけですが、これによって自分の特徴がわかります。
(1) | マーカーなし | このレベルの問題であれば何度解いても正解できる。 自信をもってよし! |
(2) | ピンクのみ | 1回の復習で正解できるようになった。 |
(3) | ピンクとオレンジ | 2回の復習で正解できるようになった。 |
(4) | ピンクとオレンジとブルー | 3回演習しても解けるようにならなかった。 |
(5) | オレンジのみ、ブルーのみ、もしくはオレンジとブルー | 実力が不安定。なにかしら解けない理由があるため理由を探す必要がある。 |
(1)~(3)では、自分の成長を見ることができます。
周りの受験生のレベルに絶望するのではなく、少し前の自分と比べて成長しているのかを見ていきましょう。
特にX(旧Twitter)には優秀すぎる受験生がたくさんいるためモチベーションの管理には注意が必要です。
(4)は全然理解できていない内容、または、今のレベルでは太刀打ちできないレベルの難問です。
理解するために時間をかける必要がある問題であれば時間をかけて勉強して、いわゆる捨て問であれば放置で大丈夫です。
ここで問題となるのが(5)の状態です。
何が問題かというと1回目、つまり初見のときは解けている問題を間違えているということです。
問題文を読み飛ばしたり、電卓ミスをしていたり、問題文の指示違反をしていたりすることで、各単元の理解とは違うポイントで失点している可能性があります。
ここには試験本番で「わかっていたのに失点した」と涙を流す可能性が高い理由が隠れており、自分の失点しやすい傾向として対策が必要となります。
私自身、簿記論の2回目を受験したとき、減損損失の仕訳をする問題で答えの数字は出ているのに減損処理後の簿価を書いてしまい「59点」で落ちています。
その後、勉強中に何度も頭をよぎるほどトラウマになり、問題文を読み間違えないように試行錯誤していきました。
ほかには、解答解説に間違えた理由に加えて問題を解いたときの自分の感想なんかも書き込むと問題を解くときの思考が安定してくると思います。
解けない問題のときは、「こんな問題解けるかよ!」と文句を言いながら「ムリ」と書き込んでいました。
また、実力テストや答練を解いたら間違えたところをまとめると思いますが、Goodnotes5ではそれぞれのテストで作成したまとめの内容をコピーして「有価証券」や「固定資産」など単元ごとにまとめ直すことが簡単にできるため、復習の効率を上げることができます。
私は継続してGoodnotes5を使っていますが、最新バージョンのGoodnotes6内ではリンクを張ることもできるようになっており、さらに便利になっているようです。
暗記マーカー
「暗記マーカー」は財務諸表論の理論暗記のために使っていたアプリです。
暗記マーカーの特徴としてはマーカーの場所を自分で決められる、マーカーの個数が表示される、正答率が表示される、付箋機能がついている、付箋を色分けして文字を打ち込むことができるといったところでしょうか。
正答率が表示されるため自分が弱いところがすぐに分かり、そこを重点的に覚え直していました。
また、付箋の色分けができるため理論の重要度で色を分けていました。
理論テキストの重要度の星3はオレンジ、星2はイエロー、星1はブルーにして、グレーの付箋には単元名をいれていました。
iPhoneでも使用できるアプリのため、iPadで作成しiPhoneにデータを送りiPhoneで理論暗記をすることもできます。
iPhoneであればiPadよりも持ち運びが簡単でちょっと早く職場についたときやトイレに行ったときなど暗記マーカーをフル活用し、とにかくスキマ時間の5分、10分を拾い集めて理論の暗記をしていました。
デジタルツールでスキマ時間を活用しよう!
今回はiPadの活用方法を「テキストの一元化」と「時間の有効活用」の観点から書かせていただきました。
社会人として仕事をしながらの試験勉強はとにかく時間が足りないので少しでもスキマ時間を活用していくことが試験合格のカギとなります。
ぜひ、一緒にiPadを使い倒していきましょう!
<執筆者紹介>
中島 みのる
長崎県生まれ。熊本大学卒業後、看護師として精力的に働くなかで会計に興味を持ち、独学にて日商簿記2級を取得(学習期間10ヵ月)。学習中に簿記の理論的背景等も学びたい、との気持ちから税理士を目指す。2023年の本試験にて簿記論・財務諸表論にダブル合格。「かえるの簿記論・財務諸表論」の諸角崇順講師のもと、2024年夏から日商簿記3級・2級を対象とした「わんこのちょこっと日商簿記」を開講予定(教材は全てPDFにて配布)。
・Xアカウント(@SakuraSakuWanko)