働く母
(40歳、会社員)
<受験情報>
・学習スタイル:CPA会計学院(通信)
・受験歴:短答式(2023年5月)→論文式(2023年8月)
▶︎トップ画像は愛用していた受験アイテム(本人提供)
「会計」を強みにするために再挑戦
私は大学生時代と卒業後2年半ほど公認会計士試験の勉強をしていましたが、道半ばにして挫折した経験があります。
その後運よく投資関連の業界に就職し、何回か転職しつつも、基本的にはミドルバック系の部署で会計に関わる仕事をしてきました。
40歳を目前にして改めて会計士を目指そうと思ったのには、いくつかの理由が絡み合っていたと思います。
まず、自信を持って「会計が専門だ」と言えるようになりたかったこと。
今の職場のメンバーは転職組が多く、皆それぞれ異なるバックグラウンドと異なる強みを持っています。
そのなかで自分の守備範囲が何かと考えたとき、やはりずっと携わってきた会計だと思いました。
一方、自分の業界に関わる部分にはそれなりの知識があるものの、網羅的な知識がないという自覚もありました。
また、数年前に出産した後は時短勤務をしており、出産前にゴリゴリ働いていたときの知識や経験の貯金で仕事をしているのではないか、という危惧感もありました。
ちょうど娘が少し大きくなって気持ちに余裕が出てきたこともあり、何かやらないと、という気持ちが心の奥底にあったように思います。
受験に踏み切れたのは家族の影響
娘の影響は別の面でもありました。
それは、娘が新しい知識を得たときに目をキラキラさせている姿を見て、「ああ、新しいことを学ぶことは本来楽しいことだったんだよなあ」とハッとしたことです。
娘の新鮮な反応を日々目にすることで、学習に対するポジティブな気持ちを無意識に持つようになった気がします。
とはいえ、私は典型的な熱しやすく冷めやすいタイプ。気分が乗ったときは物事を一気に進められますが、長期的に継続することは苦手です。
会計士試験は税理士試験に比べれば短期間での勝負が可能ですが、それでもそれなりの期間にわたって学習を続ける必要があります。
また、私の夫はウサギと亀で言えば亀で、はじめは不器用でもコツコツと地道な努力を続け、確実に勝利を掴むタイプです。
そんな夫と結婚してから長く一緒の時間を過ごすことで、私も夫の影響を受けて以前よりも物事を継続する力がついてきたところがありました。
近年は、会計とはまったく関係のない趣味の分野で、英語の読み書きを使う勉強を1年ほど続けていたほどです。
そうしたなか、ある日ふと、「趣味の勉強とはいえ、英語に苦しみながらもこれだけ続けられたのなら、日本語でできる会計士試験の学習は今なら相対的に楽に感じられるのでは?」と思うようになりました。
これらの思いが私のなかで少しずつふつふつと湧きあがり、予備校の資料請求をして一通り内容を確認したあたりで沸点に達したように思います。
ただ、「会計士試験を受けようかと思うんだけど…」と切り出された夫からしたら突然降って沸いた話だったようで、「いきなり何故!?なんで今!?」と驚かせてしまいました。
夫と協力して学習時間を確保
学習時間は基本的に、出勤日の通勤時間、在宅勤務日の通勤に相当する時間、娘が寝た後の夜の時間、あとは土日でした。
出社する日は通勤時間に講義を1.6倍〜1.8倍程度で視聴していました。
週に半分くらいは在宅勤務だったので、通勤時間が浮いた分は電卓を使う勉強に充てられるのがありがたかったです。
仕事も育児を理由に時短勤務をしているので、繁忙期で多少遅くなっても定時までには終わらせることができ、残業はほとんどありませんでした。
また、有給休暇も自分の裁量で取りやすい状況でした。
家事や育児については夫が積極的に関与してくれており、以前から半々で分担しています。
娘の寝かしつけは夫と1日交代で、夫が寝かしつけを担当する日は1時間多く勉強ができました。
直前期は娘には申し訳ないですが、寝かしつけをしつつiPhoneのWeb問題集で一問一答を解いたりしていました。
加えて、「自分たちが心の余裕を持ってハッピーでいることが結果的には子供のハッピーにもつながる」という考えに基づき、ベビーシッターさんをお願いして自分の時間を作ることも積極的にしていました。
そのため、社会人で育児中とはいえ、比較的安定的に学習時間を確保しやすい環境だったと思います。
ただ、論文期になると理論科目の学習にも基準集の参照が必要になり、答練に割く時間も増えるなど、通勤中にはできないことが増えたため、家での学習時間をどうにか捻出するのに苦心しました。
学習進捗を管理するなかで合格目標を1年前倒し
最初にExcelで各科目の講義の配信予定や受講状況をまとめた管理表を作り、進捗管理を行っていました。
当初は2023年12月短答受験、2024年論文合格目標コースでしたが、可能な限り前広に進めていった結果、同じペースで進めていけば2022年12月の短答受験に間に合うことがわかりました。
配信速度を追い越しそうになっていたこともあり、途中で2023年論文合格も狙えるコースに切り替えました。
2022年12月短答受験を目標にしてからは、予備校で配られる標準日程表を見て週ごとにおおよその計画を立てながら学習を進めました。
財務会計論で得点できず12月短答には不合格
2022年12月の短答は8点差で不合格でした。
財務会計論の平均点が例年よりかなり高かったのですが、取るべき問題を取れず、合格に必要な点数を大きく下回ってしまいました。
他の3科目ですべて合格得点率を上回っても、配点が大きい財務会計論で大きく失敗するとリカバリーが効かず、「やはりこの試験は財務会計論が勝負なんだ」ということを思い知りました。
これまでの人生でも経験したことがないくらい悔しかったですが、40歳になってここまで悔しい思いができるのはむしろ得難い経験だと考え、自分を励ましました。
気持ちを切り替え、その後は2023年5月短答、そして8月論文に絶対合格するつもりで学習を進めました。
5→8合格に向けた学習の流れ
5月短答から8月論文を受験するという、いわゆる「5→8(ゴハチ)」での合格を目指すにあたっては、とにかく時間が足りないのは明白です。
そこで、まずは「5月短答までに何をやって何をやらないか」を決める必要がありました。
私は何がなんでも8月に全科目合格したかったので、論文科目の対策を行うことは必須で、科目間のバランスをどうするかが問題でした。
3月頃まで:短答・論文対策を並行する
まずは、論文のみの科目である租税法と経営学は5月短答後に回し、3月くらいまでは短答科目で短答・論文の双方を視野に入れた学習を進めました。
(論文のみの科目を後回しにしたのは、ガイダンス等で、経営学はボリュームが少ないため5月短答後でも間に合わせられる、租税法はボリュームが多いため一度手を出したら計算のメンテナンスに時間を割く必要がある、と言われていたからです。)
ただ、企業法以外は短答・論文の双方に役立つような学習がしやすいですが、企業法は短答と論文で学習方法が大きく違うため、それぞれに時間を割く必要がありました。
とはいえ、企業法の論文対策としては、短答前は論文答練をいくつか受け、形式に慣れるくらいのことしかできませんでした。
会計学の計算については短答前に完成させるつもりで、しっかり進める必要がありました。
短答後は租税法と経営学で手一杯になり、会計学に割く時間がなくなることが予想されたためです。
私はテキストの例題を解くのが好きではなく、短答問題集を回転させてしまっていたが故に、12月短答では基本的な問題を落としてしまったという反省がありました。
CPAの「コンプリートトレーニング」という問題集形式の回転教材は、かなり内容が重いので容易に手出しすべきではないと言われていますが、自分には合っていると思ったので、財務会計論はこれをメインで使いました。
結果、短答と論文の両方に役立つ計算力の土台が身についたと思います。
4月・5月:短答対策に絞る
4月・5月は短答対策に専念しました。
短答終了直後に5営業日連続で有給休暇を取って論文対策のスタートダッシュを切るつもりでしたが、最後の短答答練の成績が思わしくなかったため予定を変更し、5日のうち2日を短答前に持ってきて最後の詰め込みを行うことにしました。
結果、5月短答ではボーダー予想を大きく上回る79.8%の得点率を得ることができ、合格発表におびえずに論文対策に臨むことができました。
6月~8月:租税法・経営学の学習を進めつつ模試を受ける
短答後はまず、6月末の論文模試に向けて、租税法と経営学をなんとか形にすることを目標にしました。
模試は総合C判定でしたが、租税法と経営学が模試を受けた時点より伸びている実感があったので、このペースで行けば合格できるはずだという自信になりました。
その後は消化できていなかった論文模試を消化しつつ、穴を見つけては塞ぐ、という作業の繰り返しでした。
水漏れしまくっている船を修繕しながら走らせているような状況でしたが、そもそも「5→8」で完璧に仕上げられるはずがないので、どれもこれも間に合っていない状況が当たり前と考えて、やぶれかぶれでも走り抜けるしかなかったです。
受験の必需品
iPad miniとGoodnotes
仕事と両立するうえで、私にとって絶対必要だったのがiPad miniでした。
膨大な量のテキストはGoodnotesに取り込み、マーカーをひいたり書き込んだり加工をしました。
過去に通信講座を受けていたときは紙のテキストにDVD視聴だったので、通勤中に講義を見ながらテキストに書き込みができるというテクノロジーの進歩に感動しました。
ボディドクター ザ・シート(シートクッション)
はじめて短答答練を受けに行ったとき、硬い椅子に1日中座ってお尻が痛くなったため、耐圧分散効果のあるシートクッションを購入しました。
以後、すべての答練と短答・論文の本試験にもこれを持参しました。
ジェットストリーム アルファゲル
論文期には、ボールペンも様々なものを試しました。
私はペンを強く握りがちだったので、最終的にグリップの当たりが柔らかいこれに落ち着きました。
受験で大事にしていたマイルール
ガイダンスで言われたことを守る
予備校のガイダンスの動画はきちんと見て、そこで言われていたことは基本的に守っていました。
予備校の先生方の分析や経験から得られる話は有益なので、しっかり参考にしたほうがいいと思います。
SNSで得られる情報にも有益なものはありますが、人によって状況は千差万別なので、自分とまったく状況が違う人の意見である可能性もあります。
まずは予備校で基本的な情報を把握したうえで、その他の情報源を上手く使うのがいいと思います。
答練をスケジュール通りに受ける
論文期は無理でしたが、基本的には答練をスケジュール通りに受けることとし、答練をペースメーカーに学習を進めていました。
特に社会人の場合、可処分時間が少ない分、的確な現状分析と対策が必要になりますが、答練の受験は現状分析のために非常に有用だと思います。
目標を明確にして行動する
最短距離でゴールに向かうことを目的にしていたので、日商簿記や税理士試験の簿記論・財務諸表論は受けませんでした。
とにかく時間がなかったので、目標を明確にし、その目標のために適切な行動をすることを意識しました。
モチベーションの保ち方
夫や娘が応援してくれていたので、それが心の支えでした。
直前期以外はそれなりに週末に家族で出かけたり旅行に行ったりもしていましたが、さすがに直前期はそうもいかず、私の勉強時間を作るために夫に負担をかけたり、娘に我慢してもらったりしたこともあります。
試験当日の朝、「がんばれ!ママなら大丈夫!」と送り出してくれた2人の笑顔を思い出すと、12月短答不合格のときは本当に切ない気持ちになりました。
2人の応援に絶対に報いたいという気持ちで頑張りました。
受験生の方へ
私は学生時代や既卒で受験したときはまったく戦えないレベルで終わりましたが、社会人かつ育児中で明らかに以前より忙しい今回のほうがスムーズに学習できました。
可処分時間と脳年齢では勝てない分、仕事で培った事務処理能力や知識、自分が自由に使えるお金、折れないメンタルなど、持てる武器をフルに活用して戦えた、ということかと思います。
学生時代あまり真面目に勉強ができなかったので、頑張っている学生さんたちを見ると心からすごいなと思います。
また、専念の方は専念の方で、また異なるプレッシャーがあると思います。
皆それぞれ違う状況で、違う武器を持っていると思うので、自分の武器を見極め、それを磨いて合格への道を歩まれることを祈ります。
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