アウトプット力が高まる! 税法理論の覚え方


河原 肇(税理士)

【編集部より】
年明けから理論暗記を本格化している税法受験生も多いのではないでしょうか。始めてみたものの、何をどこまで意識して覚える必要があるのかわからず、手探り状態が続いているかもしれません。
そこで、資格の大原で長年の講師経験もある河原肇先生(税理士)に、理論暗記の土台づくりについてアドバイスを頂きました。本試験で実力を発揮できるように、アウトプット力を意識した理論暗記を進めましょう!

アウトプットを意識した理論暗記

本試験まで半年を切り、理論暗記を本格的に行う時期になってきました。
理論は地道に暗記する必要がありますが、暗記がなかなか捗らない方もいらっしゃるかと思います。

そこで、今回は理論の暗記方法を3つ挙げてご紹介します。

方法1 条文の骨格を暗記し、その骨格に肉付けする
方法2 計算過程からフィードバックさせて理論暗記をする
方法3 本法規定か措置法規定かを意識しながら暗記する

方法1 条文の骨格を暗記し、その骨格に肉付けする

各理論で書かれていることの「骨格は何か」を見つけ出し、骨格を完全暗記することから始めます。

例えば、減価償却資産の償却計算の一部について説明しましょう。

〔1〕減価償却費(法31①、令63①)
・損金算入
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき、その償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度においてその償却費として損金経理した金額のうち、その内国法人が選定した償却方法に基づき計算した償却限度額に達するまでの金額とする。
・手続規定
償却費として損金経理した金額がある場合には、一定の明細書を確定申告書に添付しなければならない

上記の理論の骨格は、太文字部分となります(各専門学校の理論テキストでも色分けしているものもありますので、そちらを参考にするのもいいかもしれません)。さらに、「内国法人」を「当社」「その事業年度」を「第10期」「損金経理した金額」を「会社が経費計上」に一旦置き換えます。

すると、以下のようになります。

〔1〕減価償却費
・損金算入
当社の減価償却資産につき、第10期の損金算入する金額は、第10期に会社が経費計上した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とする
・手続規定
会社が経費計上した金額がある場合には、明細書を確定申告書に添付しなければならない

半分程度の量になり、暗記しやすくなりますので、まずはこの骨格を暗記します。

骨格が暗記できたら、一度理論用紙等に書いてみます。完璧に書けていたら、残りの部分を肉付けして理論暗記を完成させます。

最近の税理士試験では、理論をベタ書きさせる傾向が少なくなっていますが、条文の一部を書かせる問題は多くなっています。もし、減価償却の理論を書かせる出題がされた場合、上記の骨格部分が書ければ、配点の半分近く(場合によっては半分以上)の得点ができる可能性があります。

方法2 計算過程からフィードバックさせて理論暗記する

理論の中には、計算で学習した「計算過程」からフィードバックさせて暗記できるものがあります。

例えば、外国子会社から受け取る配当等の益金不算入等の一部について説明しましょう。

〔1〕益金不算入(法23の2①⑤⑥、令22の4②)
・内容
内国法人が外国子会社から受ける剰余金の配当等の額がある場合には、その剰余金の配当等の額からその金額の5%相当額を控除した金額は、各事業年度の益金の額に算入しない
・手続規定(省略)
〔2〕外国源泉税等の損金不算入(法39の2)
〔1〕の規定の適用を受ける場合には、その配当等の額(略)に係る外国源泉税等の額は、各事業年度の損金の額に算入しない

一方、「外国子会社配当等の益金不算入」及び「外国子会社の外国源泉税の損金不算入」の計算過程は、以下のとおりです。

〔外国子会社配当等の益金不算入〕
(1) 配当等
外国子会社から受ける配当等の額
(2) 控除費用
    (1) × 5%
(3) (1) - (2) = ××× → 外国子会社配当等の益金不算入額(減算・課税外収入)
〔外国子会社配当等の外国源泉税の損金不算入〕
上記の配当等に係る外国源泉税額 → 外国子会社配当等の外国源泉税の損金不算入額(加算・社外流出)

このように、計算過程が理解できていれば、その計算過程を文字に直すことで、理論暗記が容易になります。

方法3 本法規定か措置法規定かを意識しながら暗記する

理論暗記する上で、理論の条文が本法規定か措置法規定かを意識して暗記することをお勧めします。

各専門学校の理論テキストでは、タイトルの横に条文番号が記載されているものもありますので、そちらを参考にするのもいいかもしれません。

過去には、「租税特別措置法に関する規定については述べる必要はない」といった出題もあります。

そのような問題に対し、措置法の規定を解答しても得点はできないので、注意が必要です。

ただ、条文番号をガチガチに暗記する必要はありません。本法か措置法かがわかる程度で結構です。

また、本法と措置法の違いが見えてくると暗記もしやすくなることがあります。

例えば、本法の圧縮記帳は、「内国法人」で始まるのに対し、措置法の圧縮記帳は「法人」で始まるとか、本法の圧縮記帳には「備忘価額」がある措置法の圧縮記帳には「備忘価額」がないといったことに気が付けば、理論暗記も捗ります。

この他にも、理論暗記のテクニックはいくつかありますが、まずは上記の3つから始めてみてはいかがでしょうか。

<執筆者紹介>
河原 肇(かわはら はじめ)

税理士
1967年愛知県生まれ。1990年に青山学院大学文学部卒業後、1993年まで和光証券株式会社(現・みずほ証券株式会社)に勤務。
1993年に税理士試験の勉強を開始。1997年~2021年、名古屋大原学園にて非常勤講師(法人税法・所得税法)を務める。
1998年、税理士試験に官報合格(簿・財・所・法・相)。
2000年に税理士登録ののち、2001年に河原肇税理士事務所を開業。


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