税理士試験【法人税法】合格発表をうけて今後の学習アドバイス


廣升健生(税理士)

【編集部より】
さる11月30日(木)、令和5年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!

第72回(令和5年度)の合格率をみて

今年の本試験は、理論問題はグループ通算制度、過大支払利子税制及び金銭債権の貸倒れに関する事項と、比較的特殊な論点が出題されたのに対し、計算問題は比較的オーソドックスな論点の出題であり受験生の自力が試される出題である印象でした。
令和5年度の合格率は14.0%と去年(12.3%)に比べてやや上昇していますが、本年の出題傾向を考慮すると、法人税法の基本から一定規模以上の法人にのみ適用されるような、比較的特殊な論点まで幅広い理解が求められる傾向は今後も続くと予想されるため、幅広い論点の対策が必要になります。

年末から年明けの法人税法の学習について

法人税法は非常にボリュームの多い科目であり、合格発表を受けリスタートを切るにあたり何から手をつけて良いのか迷うことも多いのではないでしょうか。
ただ、学習の進捗は各受験生ごとに千差万別ですので、まずは一度自身の学習履歴などを振り返り、来年に向けて受験対策を講じてはいかがでしょうか。そのために、やることを紹介します。

解答済みの演習問題の誤答を分析する

個別問題: 不正解だった問題に対して、なぜ誤ったかを具体的に振り返りましょう。
誤答パターンの特定: どのカテゴリーやタイプの問題で誤答が多かったかを特定し、課題を把握します。

理論の暗記精度を再確認する

法人税法の理論集を再読し、用語や基本的な規定の理解を確認し理論暗記の精度を再確認しましょう。近年は事例問題に目が行きがちですが、用語の意義など基本的な暗記精度がものをいう論点も多く出題されていますので、まず基本に戻って暗記精度を確認してください。

総合問題での弱点の把握分析

本試験の総合問題を解答すると、一見非常に難解な論点、実務ではあまり出てこないような論点などに目が行きがちですが、論点を分解すると基本的な項目(令和5年度本試験でいえば租税公課や減価償却など)が多く出題されています。
合否を左右するのは、そのような基本的な項目の解答精度であるため、総合問題の中の基本項目に弱点はなかったのかを把握分析しましょう。

改正論点を学習する時間的余裕を作る

改正論点の学習は、毎年多くの受験予備校では演習期から直前期(4~7月)の受験生にとって一番学習論点が多い時期に重なります。
ただし、独自に財務省から発表される税制改正大綱などに目を通す時間的余裕がある方は少数かと思いますので、他の学習論点の精度を高め、直前期に紹介される改正論点を学習できる時間的余裕を確保しておきましょう。

最後に

令和5年度の法人税法の出題は基本的な論点から特殊な論点まで幅広く出題されました。
この出題傾向は続くと考えられますが、合否を左右するのは「日々の演習問題の精度」と「基本的な理論暗記の精度」だと言えます。
そのため、何をすべきか迷った時ほど基本に戻るようにしましょう。そして、自分自身の学習履歴を確認・分析して、来年からの学習に繋げてください。

【執筆者紹介】

廣升 健生(ひろます たけお)

税理士
1978年東京都生まれ。簿・財・法に一発合格。官報合格。元大原簿記学校講師(法人税法)。
著書に『会計事務所クラウド化マニュアル』『会社の経理を全自動化する本』『パン屋が税理士になる方法』がある。
You Tubeチャンネル「升メディアTV」にて税理士試験の勉強法など情報発信中。
Xアカウント(@THiromasu


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