諸角崇順
【編集部より】
本日11月30日(木)、税理士試験の合格発表が行われました。官報合格・科目合格の皆さま、誠におめでとうございます!
科目の結果を待つ人は通知書が届くまであと少し時間がかかると思いますが、届いた後のアクションをどうするかも、受験戦略全体から見ると大事なことです。そこで、初受験の簿・財受験生を対象に、「結果通知書をどう見るか、次に何をするか」について、かえる先生こと諸角崇順先生からアドバイスを頂きました!
<第73回税理士試験結果>(詳細は、国税庁HPをご覧ください)
【簿 記 論】受験者16,093人 → 合格者2,794人(合格率17.4%)
【財務諸表論】受験者13,260人 → 合格者3,726人(合格率28.1%)
【所 得 税 法】受験者1,202人 → 合格者166人(合格率13.8%)
【法 人 税 法】受験者3,550人 → 合格者497人(合格率14.0%)
【相 続 税 法】受験者2,428人 → 合格者282人(合格率11.6%)
【消 費 税 法】受験者6,756人 → 合格者802人(合格率11.9%)
【酒 税 法】受験者463人 → 合格者59人(合格率12.7%)
【国税徴収法】受験者1,646人 → 合格者228人(合格率13.9%)
【住 民 税】受験者462人 → 合格者68人(合格率14.7%)
【事 業 税】受験者250人 → 合格者41人(合格率16.4%)
【固定資産税】受験者846人 → 合格者146人(合格率17.3%)
結果通知書を見るまで
ついに合格発表の日となりました。
受験生の皆さまは「かなり長い間待たされた~」と思っていると思いますが、私が受験生の頃は、国税庁からの税理士試験等結果通知書(以下「結果通知書」とします)の発送が12月20日前後で、雪でも降ろうものなら遅配が起こり、結果通知書が届くのが12月24日という地獄のスケジュールでした(笑)。
もちろん合格していれば、それはそれは幸せな年末年始が過ごせるのですが、不合格なら・・・。
考えただけでも恐ろしかった記憶があります。
さて、私のくだらない受験生時代の話はこれぐらいにして、本題に入りましょう。
まずは、今回の記事で想定する受験生は、以下のような人を対象にしています。また、「簿記論のみ受験した人」、「簿記論・財務諸表論の2科目を受験した人」の2つに大きく分けて、結果通知書の点数ごとにアドバイスをしています。
本記事の想定受験生
2023年の夏、税理士試験の簿記論・財務諸表論を初受験した社会人や主夫・主婦など、受験勉強のみの生活を送れない人
簿記論のみ受験した人
ケース① 結果通知書の点数 → 54点以下
日商簿記2級の内容が完璧に理解できていれば40点前後の得点が可能です。そこに1年近く税理士試験の学習をして得た得点力をもってしても15点の上乗せができなかった、というのは完全に勉強不足です(おそらく日商簿記2級レベルの問題での失点もしているはず)。
よって、すでに簿記論のリスタートをしている人であっても、「もう一度日商簿記2級の復習」をしましょう。その際は、仕訳のもつ意味とその仕訳の簿記一巡の流れの中での位置づけ、そして、その仕訳が仕訳帳に記入されたことによりどのような補助簿に影響が出るのかを意識して復習することが大切です。
もちろん、今年の本試験から合格発表まで簿記論に手をつけていなかった人は、早急に日商簿記2級の復習から開始し、本試験後すぐにリスタートを切っている受験生に追いつくようにしてください。
もしくは、簿記論を最終受験科目として先延ばしして、この夏から学習している科目と心中してもかまいません。ただ、間違っても2科目受験などは考えないようにしましょう。
ケース② 結果通知書の点数 → 55点以上59点以下
今年の本試験後に学習を開始した新しい科目が財務諸表論であり、成績が順調であるならば、財務諸表論に簿記論も加えて来年は2科目受験を考えましょう。
もし、財務諸表論の成績が振るわないのであれば、そのまま財務諸表論のみの学習を継続してもいいし、財務諸表論をやめて簿記論のみの受験に戻るのでもよいと思います。
厳しいと思われるかもしれませんが、10点を11点に上げるのと、55点を56点に上げるのでは、そこに費やす労力には圧倒的な差があります。安易に2科目同時受験を選ばないようにしましょう。
新しい受験科目として、この夏、財務諸表論ではなく税法科目を選択した人は、簿記論に素直に戻って簿記論の必勝を期して臨みましょう。
ケース③ 結果通知書の点数 → 60点以上(合格者)
すでに財務諸表論の学習を開始されていると思います。財務諸表論の成績が順調であり、かつ、昨年より学習時間を確保できそうであれば、酒税法、固定資産税、国税徴収法のいずれかを付け足してもいいと思います(法人税法、所得税法、相続税法、消費税法はボリュームが大きいので除外。事業税は法人税の学習後、住民税は所得税の学習後に選択したほうが効率がよいので除外)。
理論がある科目は学習に際し、必ずしも机を必要としないため、スキマ時間に勉強がしやすく、簿記論受験のときより学習時間の確保がしやすくなるからです(電車での通勤時間中、簿記論の総合計算問題は解けませんが、理論の暗記なら可能)。
簿記論・財務諸表論の2科目を受験した人
簿・財2科目とも不合格
簿記論、財務諸表論の受験のリベンジあるのみ!
その際、やはり日商簿記2級の復習からリスタートです。仮に両科目とも59点で不合格だったとしても、安易に税法科目を加えて3科目受験を考えないようにしましょう。
簿記論のみ合格
ケース① 財務諸表論の結果通知書の点数 → 54点以下
おそらく、本試験後、税法の学習を開始されているかと思います。簿記論に合格したということは、合格に必要な学習時間が確保できており、また、学習習慣が身についているということになるでしょう。
しかし、簿記論に合格したのに財務諸表論が54点以下ということは、おそらく理論に関しての学習時間が絶対的に足りなかったのだと思われます。よって、その学習している税法科目が酒税法、固定資産税、国税徴収法のいずれかであれば、財務諸表論を加えて2科目受験を考えてもよいですが、学習している税法が、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法であるならば、財務諸表論の受験に専念するほうがよいでしょう。
ケース② 財務諸表論の結果通知書の点数 → 55点以上59点以下
おそらく、本試験後、税法の学習を開始されているかと思います。簿記論に合格したということは、合格に必要な学習時間が確保できており、また、学習習慣が身についているということなるので、その学習している税法科目に財務諸表論を加えて2科目受験を頑張ってみましょう!
ただし、学習している税法が、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法であるならば、簿・財受験のときの学習時間の1.5~2倍の学習時間が必要となるということは覚悟しておいてくださいね(たとえ財務諸表論の受験経験があっても、です)。
財務諸表論のみ合格
ケース① 簿記論の結果通知書の点数 → 54点以下
基本的に、【簿記論のみ受験】ケース①と同じです。厳しいことを言いますが、財務諸表論に合格したのは、理論(丸暗記)に助けられたのと、財務諸表論では簿記一巡や帳簿組織をそれほど意識しなくてよいためパターン学習で計算の得点力を上げることができたからだと思います。
簿記論の得点が54点に達しなかったということは、「簿記」の基礎ができていなかったと謙虚に反省し、日商簿記2級の復習から始めましょう。そして、財務諸表論に合格したことには自信を持って、すでに学習し始めている税法科目との2科目受験を頑張ってみましょう(理論のある財務諸表論に合格しているため、理論のある科目を複数抱えずに済むので2科目狙いやすいです)。
ただし、学習している税法が、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法であるならば、「簿・財受験のときの学習時間の最低でも2倍の学習時間が必要となる」ということは覚悟しておいてください(簿記論の受験経験があっても54点に達しなかったのだから、事実上、簿記論はイチからのスタートです)。
2倍の学習時間の確保ができないのであれば、簿記論 or 税法科目の1科目受験にしておきましょう。
ケース② 簿記論の結果通知書の点数 → 55点以上59点以下
上記の【簿記論・財務諸表論受験】<簿記論のみ合格>ケース②と基本的に同じです。
簿・財2科目とも合格
本試験後、学習している税法が法人税法、所得税法、相続税法、消費税法であるならば、そのまま頑張ってください。
もし、本試験後、学習を開始した税法科目が、酒税法、固定資産税、国税徴収法のいずれかであるならば、もう1科目税法(酒税法、固定資産税、国税徴収法のいずれか)を付け加えてもよいと思います(例:固定資産税の学習を開始していて、さらに酒税法を足すなど)。
*
「結果」が出ました。
それはあなたのこの1年の学習時間と学習方法に対する評価です。
科目合格した人は、自分を信じて来年も頑張ってください!
不合格だった人は、「何か」を変えないといけないわけです。それが、学習時間の増加か、学習方法の変更か、そこを自分で冷静に分析しておかないと、また同じ悔しい思いを1年後にすることになります(合否を決めるのがあなた自身でなく国税庁である以上、あなたが国税庁が望む合格者像に合うように変わらないといけないからです)。
「自分の価値観が絶対」とは考えず、資格学校の講師(もしくは合格者)のアドバイスに謙虚に耳を貸し、改めるべきところは改めましょう。
今回の記事では、冒頭に想定受験生を示しましたが、学生や専念生の方はもっと学習時間がとれると思うので、上記記事内容とは異なる選択もあると思います。
通っている資格学校の講師に個別で相談し、最善のルートを決めてください!
独学の人は、XなどのSNSで受験経験者などにアドバイスを求めてもよいかもしれません(ただ、基本的に講師と受験経験者では相談を受けた絶対数が異なるので、可能な限り講師に相談しましょう)。
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」