髙嶋のぞみ(税理士)
【編集部より】
例年、税理士試験の合格発表前後には、税法科目免除を目的とした大学院進学を検討する受験生が増えるようです。実際に大学院ではどのようなことを学ぶのか、受験勉強で身につく力とはどう違うかについては、経験者でなければわからないことも多いでしょう。
そこで、2022年3月に大学院を修了し、税理士登録をした高嶋のぞみ先生に、大学院進学を考えたきっかけ、大学院で学んだことをエピソードを交えてご紹介いただきます!
幼稚園教諭から税理士へ!
はじめまして! 現在、東京都八王子市の税理士法人で所属税理士をしている髙嶋のぞみと申します。
2022年3月に東亜大学通信制大学院(山口県下関市)を修了し、2023年1月に税理士登録をしたので、税理士人生をスタートしてもうすぐ1年が経ちます。
税理士事務所で勤務する前は、地元・北海道で幼稚園教諭として11年勤務し、延べ250組を超える園児や保護者の方々と関わってきました。幼稚園教諭の経験は顧問先と信頼関係を築く礎となり、税理士の仕事にも非常に活かされています。
今回は、私がなぜ大学院ルートで税理士登録をめざしたのか、また大学院で学んだことについてお話しします。
なぜ、税法科目免除の大学院に進学したのか
ご存知のとおり、税理士になるためには、国家試験である税理士試験に合格しなければなりません。この税理士試験は、会計学に属する科目2科目(簿記論と財務諸表論)と税法に関する科目7科目(消費税や法人税、相続税等)のうち3科目、合わせて5科目を合格する必要があります。
ただし、試験科目免除の大学院に進学し、大学院において税法、若しくは会計学に属する科目等の研究により学位を授与されれば、試験科目を一部免除するという制度があります。
この制度による税法科目の免除を目指して、私は東亜大学通信制大学院への進学を選択しました。その理由は2つあります。
勤務先の税理士法人代表が大学院出身だったから
現在、私が勤務する税理士法人の代表は、大学院(税法科目免除)出身の税理士です。
論理的思考や対話力、執筆力などが秀でていて学ぶことが多くあり、大学院等で知り合った教授や仲間(現司法書士、弁護士など)とのつながりを今でも大事にしています。
その姿を間近で見るうち、「税法科目免除を目指して大学院へ進学することは、税理士試験5科目合格とはまた別の何かを得られるのではないか」と考えるようになりました。
仕事・家事・育児の合間で効率よく勉強できるから
大学院への進学を考え始めた私は、ちょうど子育ての真っ只中。
私の実家は北海道、夫の実家は四国のため、親族などからのサポートは得られず、仕事・家事・育児に追われて慌ただしく過ごす日々でした。
「子供達が寂しく感じないように子供達の相手をできるだけしたい。」
「税理士事務所でのキャリアを身につけたい。」
「税務の勉強をしたい。」
やりたいことがいっぱいの私は、「どう時間をとっていくか」が大きな課題でした。
税法科目免除大学院に興味はあったものの、「子供の体調不良や用事で通学できないのではないか」という懸念があり、一歩を踏み出すことができませんでした。
そんなときに、東亜大学通信制大学院の存在を知り、「通信制ならやりきれるかも!」と思い、進学を決意しました。
いざ! 修士論文を書き始める‼
私が入学した令和2年はコロナ禍により、入学式やスクーリングが中止・延期になるなど、例年とは異なる状況でのスタートとなりました。
秋になり、ようやくゼミの仲間とはじめて集うことができ、通信制のため、同期は全国各地にいて中々会うことはできませんが、大学院のことを相談できる同じ志の仲間と出会えたことで、大学院生活に彩が増しました。
いよいよ2年次から修士論文の作成が始まります。この論文執筆が大学院生活での正念場となります。
論文のテーマは、「手垢がついていないこと」と「新規性」が求められました。普段から税務に関する図書を読み込んで問題点を考えていたならば、テーマ選びはそんなに難しいことではなかったかもしれませんが、当時の私はテーマ選びから苦戦しました。
無我夢中に執筆に励んでいた2年次の9月に開催されたスクーリングで、指導教授から「論文が全身複雑骨折している」と指摘され、目の前が真っ暗になった記憶があります。
このように私の論文執筆は順風満帆ではありませんでしたが、指導教授の熱心なご指導のお陰で、先行研究や裁判例を踏まえた判断基準を結論として導き出すことができました。
公聴会(修士論文の最終報告)のギリギリまで丁寧にご指導いただいた先生方には、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
修了しても続く大学院とのつながり
令和4年3月20日、はじめて山口県下関市の東亜大学院へ行き、学位記授与式に参加しました。学位記授与式の後はふぐの会を開き、同期達と大学院修了を喜び合いました。
これで私の大学院生活が終わり…ではなく、実は今でも関係が続いています!
というのも、東亜通信制大学院には、卒業生の同窓会の場であり、租税法の研修・研究の場でもある「東亜大学租税法研究フォーラム」という組織があります。
私はこのフォーラムの理事(学年のとりまとめ役)を担うことになり、理事会の参加などを通して大学院との関りが続いています。
大学院生活で学んだもの・得たもの
勤務先の代表税理士に、「髙嶋さんは大学院に行って良かった。仕事ぶりが変わった」としみじみと言われることがあります。
税務の判断に迷ったときに、その税務に関わる税法の条文を読み込み、拘束性のない通達ではどのように示されているか、裁判例ではどのような判断がされているかを調べ、それらを包括的に熟考し、どんな根拠からどのような判断をしたかを明示すことができるようになりました。
大学院での学びを通して、「読み解く力」「調べる力」「考える力」、そして「ロジカルシンキング」が身についたからだと思います。
また、大学院生活で出会った仲間達は、私の大きな財産となっています。同じ志をもっている分、税務のこと、仕事のことなど、共通の話題が多く、私の心強い相談相手でもあります。
税理士業界で努力をしながら活躍している仲間たちに追いついていけるよう、今後も「研鑽する税理士」でありたいと思っています。
<執筆者紹介>
髙嶋 のぞみ(たかしま・のぞみ)
幼い頃からの夢であった幼稚園教諭として勤務中、幼稚園の経理担当者の勧めで、簿記の勉強を始めたことから、日商簿記1級、全経簿記上級を取得し、税理士資格まで取得するに至る。幼稚園を退職後、複数の会計事務所に勤務し、所得税、法人税・相続税等の業務に携わり経験を積む。幼稚園教諭時代の経験を活かし、誰にでも解る楽しい会計・税務をモットーに活躍中。令和6年4月、「会計がやさしく見えてくる。」を基本理念として開業予定。