【編集部より】
この秋から、簿記検定や公認会計士試験の受験勉強をスタートするという学生・社会人も多いのではないでしょうか。国家資格には興味があるけど一歩踏み出せない人から、簿記検定の勉強からステップアップしたいと考え始めた人まで、さまざまな思いがあるはずです。
そこで、LEC人気講師の影山一人先生(公認会計士講座)と種田有紀先生(日商簿記検定講座)に、資格試験の勉強法について横断的に伺いました!(全3編構成)
小さなモヤモヤをスッキリ解消して、勉強に向かうきっかけになるはずです。
小さな目標をどこに置くか?
―公認会計士試験の受験勉強を秋から始める場合、どのような学習スケジュールを組めばよいでしょうか。
影山先生 基本的に秋から会計士受験をスタートする場合、その翌年12月の短答式試験を目指すというカリキュラムが一般的です。つまり、最初の目標は1年2ヵ月後で、少し期間が長いので、短期目標として途中に簿記2級を受けることは一つの手段だと思います。たとえばLECのカリキュラムでいえば、入門講座が翌年3月頃に終わるので、春頃に簿記検定を受験するとモチベーション維持にもつながります。
種田先生 簿記2級なら今はネット試験で、いつでも受けられるのでスケジュールも組みやすいですね。
でも、逆にズルズルと先延ばしになりがちなので、「受験する日を決めましょう」とよく受講生にも伝えています。
目安としては、一通りのインプットを終えた後、1ヵ月以内には受験してほしいです。
影山先生 ただ、本音を言えば私自身は、会計士受験生に対して簿記検定の受験を積極的に推しているわけではありません。
「短期的なモチベーション維持のためになるのであれば受験は構わない」というニュアンスで受講生には話しています。
学生など時間が十分にあればよいですが、特に社会人のような限られた時間で受験勉強をしているのであれば、「簿記2級の対策にあてる時間がもったいない」という気持ちは正直ありますね。
―そうすると、会計士受験生が簿記検定を受験するにしても、できるだけ効率よく対策したいわけですが、種田先生がオススメの勉強法はありますか。
種田先生 会計士受験生が簿記検定を受験するとしたら、インプットの勉強自体には特別な対策は必要ありません。
アウトプットについては、市販の問題集やネット試験対策サイトなどでそのレベル感や内容を確認し、それに合わせて微調整する程度で十分だろうと私は思っています。
LECのカリキュラムで言えば、会計士入門講座の終了後なら簿記2級、上級講座を受けた後なら簿記1級は、むしろ簡単に感じるようなレベルなのではないでしょうか。
ただ、それぞれ出題形式が異なります。会計士の短答式試験は記号で解答しますが、簿記1級は金額を数字で書きます。そういった意味では、簿記1級は正確に数字を出す練習にもなるかもしれませんね。
秋から始める会計士受験のスケジュール
―これから会計士受験勉強をはじめる際のスケジュールを教えてください。
影山先生 たとえば、翌年12月短答式試験を目指すカリキュラムなら、1年前のちょうど今頃から秋スタートの講座が始まり、カリキュラムの入門講座が3~4月頃に終わります。
入門講座の期間は、計算学習に集中するので、計算科目をいかに得意にするか、苦手にしないかが短期合格のポイントになります。
そして、リハーサルとして5月短答式試験をお試し受験した後、8月頃までは計算中心で学習を進めつつ、6〜9月頃の上級講座で理論科目も含めて対策し、9月頃からは理論を詰め込み、直前期はひたすら覚えて知識を増やしていくというイメージです。
ただ、このカリキュラム通りに計算力が仕上がる人はなかなかいないので、どこかのタイミングで見切りをつけて理論の学習を始める必要があります。
―いつ頃までに理論に切り替えるとよいでしょうか。
影山先生 遅くとも10月頃には、理論の学習をある程度始めないと、全体の点数は取りにくくなると思います。
直前期における比率は、理論8:計算2くらいですね。計算は答練の復習を中心にして、自習時間は理論の詰め込みにあてるのが私は理想かなと思っています。
おそらく、理想通りには進まず悩ましいでしょうが、直前期に理論2:計算8だとかなり厳しいので、だからこそ入門期に計算をきちんと固めておく必要があります。
社会人はスキマ時間の活用が王道!
―学生と社会人ではそもそも勉強時間が違うと思いますが、その点はどのようにアドバイスされていますか。
影山先生 よく言われることですが、特に社会人は時間が限られているので、「いかにスキマ時間を使うか」です。
移動時間や入浴時間などのスキマ時間で理論を覚え、机に向かえる時間は電卓を使った学習をするということですね。
社会人で早く合格する人を見ていると、たとえば講義の休憩中も問題を解いたり、講義が終わった後も問題を解いてから帰ったり、「少しでも時間を無駄にしない」、「1問でも2問でもスキマ時間を使って解く」というスタンスで取り組んでいる印象があります。
―いつ、何をするかを前もって決めていないとできないことだと思いますが、どんな準備をしておくのがオススメですか。
影山先生 スキマ時間がどれくらいあるかは自分でわかるはずなので、「1日に何題解く」という自分のルーティンは決めたほうがいいと思います。
専門学校に通学しているのであれば、「授業の休憩時間が何分あるか」、「昼休みはどれくらいの時間が取れるか」などを把握し、その時間で何題解けるかを逆算できるでしょう。
さらに言えば、授業中に「この問題を解いてください」と時間を設けることもありますが、指示された問題が解き終わったら、別の問題を解いて待っている人もいます。
そういった「意識の差」が取り組み方に表れ、「見えない努力の積み重ね」で合格が早くなりますね。
簿記検定受験生も同じような特徴があるのではないでしょうか。
種田先生 ありますよ。今、影山先生が仰っていたように、教室に早く来て、前回の復習をしたり、授業後に習った例題を自分で解いてから帰ったりする人ですね。
この小さな違いが毎回の授業ごとに積み重なって、大きな差になります。
―ウェブ講座の場合、消化することに集中してしまったり、授業中の演習時間はスキップして問題を解かなかったり…ということもありえますよね。
影山先生 それはダメな受験生の典型で、場合によっては頭を使っていない可能性はありますよね。
何か主体的にアクションを起こすことが、脳に刺激を与えるので、その時間をいかに増やすかが大切です。
ある社会人合格者の人に聞いた話では、仕事中に少し手が空いたら問題集を解いていたという人もいました。
さすがに業務中までは推奨しませんが、「公認会計士になる」と決めたのであれば、始業前の少しの時間や休憩時間にも勉強するという意気込みやスタンスが合格には欠かせません。
時間のある学生は社会人の勉強ラインに合わせない!
―学生の場合はどうでしょうか?
影山先生 学生の場合は十分に時間があるので、社会人受験生のそういった姿勢を見習ってほしいと思うこともあります。
というのも、講義内では「社会人の方はここまで、学生や時間のある方はここまで復習してください」と伝えるのですが、社会人のほうに合わせてしまう学生が時々いるんですよね。
こちらとしては、そういうつもりで分けているわけではないのですが、「最低限ラインがここなんだな」と思ってしまうみたいで…、難しいところです。
種田先生 簿記検定の場合、特に2、3級はネット試験によりいつでも受験でき、また、きちんと勉強すれば合格する内容です。ですので、社会人や学生でそこまで明確な区別はしていません。
ただ、簿記の勉強は、テキストの仕訳を眺めているだけではできるようにならないんですよね。
だから、「テキストの例題は自力で解けるようにしましょう」とは、常々アドバイスしています。
その次に、問題集の基本問題を早く・正確に解けるように反復練習しておかなければ、試験には合格できません。
(後編に続く)
<お話を聞いた人>
影山一人(かげやま・かずと)先生
LEC東京リーガルマインド公認会計士講座専任講師
平成21年 公認会計士試験合格。LEC専任講師として、公認会計士講座の短答講座から論文講座まで、全範囲におよぶ財務会計論を担当。講義外においても、丁寧な質問・相談フォローで、受講生から厚い信頼を得ている。柔道二段。
種田有紀(たねだ・ゆき)先生
LEC東京リーガルマインド日商簿記検定講座専任講師
大学在学中に日商簿記検定1級合格。在学中は大手資格予備校での教室運運営などに従事。卒業後は、会計事務所勤務中にセミナー講師や内部統制の相談、クライアントの経理指導等を経験。その後、商工会議所の教室で日商簿記検定講座や日商PC検定を含むパソコン講座で受講生の学習指導・サポートを経験。現在は株式会社東京リーガルマインドの専任講師として日商簿記検定講座を担当。
Xアカウント:種田有紀(@boki_taneda)・#たねだぼき(@tanedaboki_now)