【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
IT系企業勤務を経て50代前半で社労士に
皆さま、こんにちは。東京都文京区で開業しております、ITと人の好きな社会保険労務士の柴田ひろみと申します。
IT企業勤務を経て、40代半ばで一念発起。50代前半で資格を取得して独立しました。
ここでは、私の資格取得~独立までについて書かせていただきます。キャリアに悩む方のお役に立てれば幸いです。
IT業界でインド人エンジニアの入退社の管理を経験、社労士にお世話になる
新卒で旅行会社に入社し、旅行カウンターの窓口や営業、コールセンターでの勤務を経験しました。
旅行が好きで、人と接する仕事に魅力を感じ、「これが一生の仕事だろう」と思っていました。
ところが、1996年、米国で1年間語学留学をした際、インターネットの可能性とIT業界の目まぐるしい成長を目にします。そして、2000年の「IT革命」流行に触発され、IT業界へ転職を決意しました。
IT業界での最初の仕事は、外資系ITハードウェアメーカー企業での営業でした。
成果主義の評価制度のもとで、全国の営業社員と競い合いながら働いていました。
急な環境の変化に戸惑いもあったものの、上司や同僚に恵まれ、新しい環境に適応して楽しく仕事をしていたのですが‥‥‥‥。
突如として日本支社が閉鎖されることになります。
思いがけず、整理解雇の立場に立たされました。
しばらく派遣社員として働いた後、インドでオフショア開発を行い、日本国内の大手メーカーにインド人エンジニアを派遣する会社に転職しました。
その会社では、管理全般を任せられたのですが、インド人エンジニアの入退社が毎月相次ぎ、四苦八苦しました。
その時、大変社労士にお世話になり、その資格の存在をはじめて知りました。
運命に導かれるように社労士を志す
その後、前職の上司にお誘いをいただき、国内のセキュリティソフトウェアメーカー企業に転職、営業管理職として業務管理や組織改善に取り組みました。
新入社員の育成にも関わり、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントの資格を取得しました。同時に、副業としてキャリアコンサルティングの仕事も始めました。
マネージャーとしての経験を積んでいましたが、40代半ば。
女性としては年齢も役職も社内では一番上でした。
会社も仕事も好きでしたが、「会社員としての限界」を感じるようにもなりました。
将来のキャリアを真剣に考えたとき、「独立したい」という気持ちがあることに気が付きました。
独立できる資格を考えたとき、社労士を思い出しました。
IT業界でのキャリアを中断し、試験勉強に取り組む
思い立ったら即行動派の性格です。
キャリアを中断することに戸惑いもありましたが、思いきってIT企業を退職し、残業の少ない新たな職場を見つけ、試験勉強をしながら、勉強と仕事を両立させました。
途中、コロナ渦に突入し、また職場環境にも家庭環境にも変化が生じたため、勉強に集中できない時期もありましたが、夜間や週末に勉強を続け、社会保険労務士の資格を取得しました。
IT企業を退職してから3年の月日が経った頃でした。
合格後、ご縁があってすぐに仕事を獲得。独立開業を決心
資格取得後は、「いつ独立するか?」という不安と迷いに直面しました。
友人や知人などに相談していた矢先、ある社労士の先輩から、「事務所を探しているなら空いているところがあるから紹介するよ」とお声がけいただきました。
さらに、元上司に久しぶりに会い、資格を取得した旨を伝えたところ、「ちょうど人事労務に困っている会社があるから助けてあげてよ」と言われました。
まだフルタイムで勤務中、そして開業登録前でしたが、「お役に立てるなら」とすぐさま、人事労務コンサルティングの契約を締結し、相談を受けることにしました。
こうなったらもう後には引けません。
ご縁と勢いに乗り、独立開業することを決意しました。
今となっては周りの方に背中を押していただいたと本当に感謝しております。
ご縁を大事にすることで仕事がつながっていく
独立後しばらくは、前職の仕事も業務委託で続けることができました。
独立開業資金など全く準備していなかった私にとって、大変ありがたいことでした。
前述の人事労務コンサルティングをお引き受けした会社との取り引きは、現在も続いています。
また、顧問先が同じである税理士からの紹介で、新たなお客様とのご縁をいただいき、何とか社労士としての活動が出来ています。
人生には様々な出会いがあります。
これまでのご縁に感謝しつつ、また今後のご縁も大切にしていくことが、独立開業に大事なことなのでは、と感じています。
社労士・キャリアコンサルタントとしてリスキリングを支援していくことが目標!
最近、「リスキリング」が注目されています。
私自身が40代後半のリスキリングでキャリアチェンジしたので、その経験を活かし、人々が新しいスキルを身につけ、さまざまな職業や働き方を選びやすい環境をつくる支援をしていけるようになりたいと思っています。
社労士として、またキャリアコンサルタントとして、企業と個人の両面からこれらのお手伝いをすることが目標です。
もちろん、ひとりでできることはとても限られていますが、この理念を実現するため、今後も日々努力していきたいと思っています。
おわりに
40年以上も前のお話ですが、私の母親が若い頃、公務員だったそうです。出産を機に周囲に反対され、働くことの継続が難しくなり退職したと、小さいころからよく聞かされてきました。
その影響もあって、「女性としてライフステージが変わっても働き続けられる仕事をしたい」という気持ちが強くありました。
新卒で入った旅行業界も、当時から女性が活躍してましたし、IT業界は新しい業界ということもあり、比較的ジェンダーギャップは少なかったように思います。
そして、社労士として開業した今も同様で、男女関係なく働き続けられる仕事だと感じています。
人生は選択の連続です。
皆さまが、素敵な人生の選択をされることを願っています。
<プロフィール>
新卒で旅行会社に入社し営業職を経験、その後、IT業界に転職し、営業管理職として経営視点に基づいた課題を認識しながら監査対応やIPO関連業務に携わる。その際、オペレーションの重要性を再認識し、業務プロセスの改善や営業マーケティング業務に携わるとともに、社員の育成や教育に力をいれる。企業の成長過程における各種システム導入(人事、勤怠、ERP、SFA、MA)や運用管理にも従事。キャリアコンサルティング、人事労務コンサルティングを副業で請け負う。在職中に社会保険労務士国家試験に合格。
2022年8月、東京都に社会保険労務士事務所CareHRを開業し独立。
HP:https://www.carehr.jp/
Twitter:@carehrshibata
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