【商業高校出身会計士のキャリア】プロ野球選手を目指した少年が「会計」と出会った場所(後編)
- 2023/10/6
- キャリア戦略
石井幸佑(公認会計士・税理士)
【編集部より】
以前、とあるテレビ番組で「商業高校芸人」がテーマとして取り上げられ、界隈では話題になりました。以前から気になっていた「商業高校出身」の公認会計士にフォーカスするなら今では!?ということで、本企画が立ち上がりました!
一般的には、商業高校卒業後は就職する人が多いというイメージがあると思われますが、今回の企画では、商業高校を選んだ理由から公認会計士を目指すきっかけ、商業高校ならではの強みなどを伺いました。商業高校出身の現役受験生や合格者の方はもちろん、現役の商業高校生にも、将来について考えるきっかけになるはずです!
◆前編はコチラ
新興監査法人からのキャリアスタート
22歳、若くして合格したので、「華々しい会計士生活を手に入れた」と少し調子に乗ってしまい、大手監査法人の就職面接は全敗…。その後に応募した中小監査法人からも良い結果は出ませんでした。
就職難の世代ではありましたが、「試験合格したのに就職先が見つからない」とは夢にも思ってもいませんでした。そのようななか、新興監査法人の就職面接が始まります。
もう後がない私は必死でしたが、あまり相手にされない感じでした。ある法人で、面接官をしていた法人代表が一言、「横浜商業出身か、もしかして野球部?」と。「はい」と頷いた私に、法人代表は「商業高校出身なら、実務もわかっているから安心だな。何よりY校野球部なら体力は大丈夫でしょう。年明けから働きに来なさい」と言ってくださいました。
そうして、私の公認会計士キャリアは何とかスタートを切ることができました。たまたまかもしれませんが、商業高校出身であることがきっかけとなり、この就職難を乗り越えることができました。
大手監査法人→再生医療ベンチャーを経て起業
新興監査法人では、体力の有無を問われた理由がわかるほどたくさん働き、ITベンチャーや日本一決算開示が早い会社の担当をするなど、貴重な経験を積むことができました。
その後、EY新日本有限責任監査法人に転職し、金融監査を中心に経験を積み、最終的に金融部マネージャーまで昇進しました。その後、法人内ベンチャー支援プロジェクトメンバーに抜擢され、再生医療ベンチャーに出向(後に転籍)し、会社立上支援や資金調達、管理体制整備等のCFO業務を行いました。
2019年、これまでの経験を活かして、バイオベンチャー経営管理支援に特化した会社を起業して、現在に至ります。
また、併設している会計事務所では、地元・湘南地域への社会貢献をすべく、青年農家やデザイナーなど、湘南から世の中に何かを発信しようとしている方々の応援をしています。さらに、地元・藤沢市の行政改革委員への就任、地域ロータリークラブの創設に関与し、当該クラブの理事および幹事に就任するなど、地域貢献を意識して活動を進めています。
商業高校出身であることがターニングポイントになった
商業高校出身であったからこそ、「会計」に出会うことができ、「合格後のキャリア」をスタートするきっかけにもなりました。そのように振り返ると、私の場合は、商業高校出身であることが人生のターニングポイントであり、重要な役割を果たしていると思います。
この記事を執筆するきっかけも、同じ横浜商業高校出身の公認会計士である大杉泉さん(会計人コースWebの記事にリンク)と知り合えたことでしたし、商業高校出身という共通のバックグラウンドがあると、お互いにどことなく仲間意識をもって話せるようにも思います。
多くの人が社会に出てから学ぶような商業科目を、高校時代という多感な時期に、通常の授業と同じように学ぶことにより、自然と体に染みついたのでしょう。私の場合は公認会計士という選択をしましたが、現在の仕事では経営全般や管理業務全般の支援を行うなど、商業高校時代に学んだことを土台にサービスを提供しています。「会計」が会社の血液であることを実感し、お客さんにも理解をいただくことで事業拡大にも大きく寄与しています。
商業高校出身の方は「社会の即戦力」として、どの分野でも成功できる可能性があります。興味がある分野について、「どのような仕事があるか」、「起業できる可能性があるか」をより早い時期から考えて調べることは、それだけ成功チャンスをつかむ可能性が高くなるはずです。
私のように失敗を繰り返すことはあまりお勧めしませんが、商業学校は特殊な経験もでき、様々なことにチャレンジすることができます。また、資格試験はもちろん重要ですが、最終的には「個性」や「人柄」が最も大切です。商業高校はたくさんの経験をして、「人間力」を磨く場としてもよい環境だったと感じています。
商業高校出身の受験生、若手会計士をはじめ、現役の商業高校生にとって何か参考になれば幸いです。
<執筆者紹介>
石井幸佑(いしい・こうすけ)
公認会計士・税理士 公認不正検査士
株式会社BioAid代表取締役、石井幸佑会計事務所代表
1982年生まれ。2004年公認会計士試験合格。株式会社アーケイディア・グループを経て、新日本監査法人に入所し金融監査に従事。マネージャー昇格後、再生医療ベンチャーの株式会社メガカリオンに出向(後に転籍)。累計62億円の資金調達成功。執行役員として会社体制構築やIPO準備推進。
2019年に会計事務所設立し、2020年からバイオベンチャー特化の経営管理支援を行う株式会社BioAid創業。ラクオリア創薬株式会社やChordia Therapeutics株式会社の社外取締役、その他複数バイオベンチャー社外監査役としても活動。また、地域貢献活動として、地元・神奈川県藤沢市の行財政改革協議会委員や指定管理者選定委員就任。イノベーションゲートウェイ湘南ロータリークラブ創立メンバー理事、2023-24年度幹事就任。