学習スタート時に押さえておきたい財務会計”基本のキホン”⑯・完ーワンポイント講義:基礎概念(損益計算)


穂坂治宏(税理士)

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企業の目的と2つの損益計算

企業は利益の獲得を目的にしています。
企業活動を描く企業会計(Q1)が利益をどのように捉えるかは大きな課題でしょう。
株主や債権者,そして証券市場で株式や社債を売買する投資者の関心は一様ではありませんが(Q2),多くの利害関係者は企業の利益に大きな関心を持っています。

利益はどう計算されるのでしょうか。
当初に200円の現金を保有し,そのうちの100円で購入した商品を120円で販売した例を考えてみましょう。
いずれも現金で取引が行われたなら,当初から現金は220円に増えています。

最もなじみがあるのは120円の売上収益から100円の売上原価を控除して利益を計算する方法でしょう。
収益と費用の差額で利益を計算する方法が損益法(Q12)です。
損益法では現金の出入(増減)というフロー,つまり120円の「入」である売上から,100円の「出」である仕入(売上原価)を控除して利益を計算します。
これに対して最後の現金在高220円から最初の現金在高200円を控除して利益を計算する方法もあります。
2時点間の財産の在高,つまり,ストックをもとに利益を計算するのが財産法(Q14)です。

2つの損益計算と会計処理及び会計観

このように利益はフローから(損益法),また,ストックからも計算できます(財産法)。
先の例ではストックが金額のはっきりした現金のみでした。
しかし,その金額がはっきりしない資産ではどうでしょうか。

たとえば取得原価500円の備品について100円の減価償却を行えば備品の帳簿価額は400円になります。
この場合の直接法での仕訳は次のとおりです。

(借)減価償却費 100 (貸)備    品 100

このように先にフローを決めれば残額としてストックが決まります(500円-100円=400円)。
これとは逆に先にストックを決めれば当初のストックとの差額がフローとしての利益です(たとえば500円で取得した売買目的有価証券を400円で評価する例を考えてみてください)。
両者は独立して決まるのではなく,一方が決まれば,他方が自動的に決まる関係にあるのです。
このようにフローである利益の計算とストックである資産の評価は表裏の関係にあり,ここに会計学の中心的な課題があります。
いずれを重視するかが,収益費用観(Q13)と資産負債観(Q15)の違いといえるでしょう。

〈執筆者紹介〉
穂坂 治宏
(ほさか・はるひろ)
税理士試験の簿記論と財務諸表論の受験指導をしている税理士。ネットスクールで簿財(標準)を担当。本誌「会計人コースWEB」への執筆も多数。著書に『ど素人でもわかる簿記・経理の本』(翔泳社)などがある。

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「資産の評価は原価か、時価か-混合測定という考え方」「リサイクリングは何がわかりにくいのか?」など、受験生が理解しにくい論点などの解説が掲載されています。

*本連載は、会計人コース2020年6月号付録「スリー・ステップ式財表理論パーフェクトNavi2020」の一部を再構成したものです。


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