【編集部より】
読書の秋ですね。本を読むのにぴったりな季節、「何かオススメはないかな~」と探している人もいるのではないでしょうか。
そこで、本企画では、学者・実務家などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「読書の秋の課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載します・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、原口健太郎先生(西南学院大学准教授・公認会計士)に課題図書をお薦めいただきました!
普段は大学で教員を務めていますが、少し前まで公認会計士受験生も兼任?していました。
このコラムを読むのは、おそらく、会計の学習を進める若手の方が多いでしょう。
私が20代だった時に読んだ本や、受験生生活を思い出しながら、研究室の本棚から数冊引っ張り出してこのコラムを書いています。
執筆にあたっては「編集部が予想しないようなもの」を紹介してほしいとのリクエストがありましたので、会計学以外の本をご紹介しようと思います。
また、受験生の方は多忙と思いますので、片手間に読めるように、できるだけ平易な文章で書かれており専門知識なく読み進められるものを選定しました。
オススメ書籍①『自助論』(サミュエル・スマイルズ著、竹内均訳、三笠書房)
最初はサミュエル・スマイルズの『自助論』(原題:Self-Help)です。
著者名や書名は社会の授業等で聞いたことがあるのではないでしょうか。
たくさんの翻訳書が出版されていますが、ここでは東京大学名誉教授・理学博士の竹内均先生が翻訳されたものをご紹介します。
簡単に言えば、「昔から、結果を出す人は、例外なくとんでもない努力をしていたんです」ということを、多種多様な実例に基づき解説した本です。
難関試験に挑戦し、さらにその後も会計専門職等として困難に立ち向かうであろう皆さんのモチベーション維持に最適です。
オススメ書籍②『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著、井手正介訳、日本経済新聞出版)
次にバートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー』(原題:A Random Walk Down Wall Street)です。
本書は、株式市場の歴史や、経済学の最重要学説の1つである「効率的市場仮説」、さらには現代の主流投資戦略であるインデックス投資の利点について記載されたもので、学術上・実務上共に大変重要な内容です。
そして、本書の中には、正しい理解のためには会計学の知識を要する箇所が多く含まれます。
会計学を習得する大きな意義の1つは、その知識を活用することにより様々な領域の文献へのアクセスを可能とする点で、本書はそれを証明する格好の題材の1つです。
世界的に有名な教科書ですので、事前の知識がなくても読むことはできますが、読者の皆さんの普段の学習内容を活用すれば、より正確に読み取ることができるはずです。
会計学が多様な知識習得のための大きな武器になることをぜひ体感してください。
ところで、本書の内容には、個人投資家にとっても大変有益な内容が多く含まれます。
もし、株式投資をやってみたいという方にも、大切なお金を投資する前に、本書の一読を強くお勧めします。
ここまで書いてみて、やっぱり「会計人コースWeb」の記事であることを踏まえ、会計学の本もご紹介したほうがよい気がしてきました。
そこで、前言撤回して会計学の本を2冊セットでご紹介します。福井義高先生の『たかが会計』、そしてバルーク・レブ+フェン・グーの『会計の再生』(原題:The End of Accounting and The Path Forward for Investors and Managers)です。
オススメ書籍③・④『たかが会計』(福井義高著、中央経済社)、『会計の再生』(バルーク・レブ+フェン・グー著、伊藤邦雄監訳、中央経済社)
ご覧の通り、まったく別の先生方によって書かれた本ですが、タイトルがちょうど対になってるようにも見えますね。
これらは、会計学が経済社会において果たす意義を、それぞれ異なる方向から分析した書籍です。
前者は、例えば公認会計士受験生で企業法の学習を進めている方にお勧めです。
わが国では、会社法をはじめとした様々な規定に基づき、社外取締役の登用が推進されてきました。
それでは、社外取締役を登用したら、どのようなご利益があるのでしょうか?
論文式試験の受験生の方は、きっと関連条文の意義を諳んじることができるでしょう。
しかしながら、その内容は、学術的にはどのように検証されているのでしょうか。
実は、私たちが普段学習している内容は、必ずしも確たる証拠に裏付けられているものとは限らないのです。
本書にはそのようなトピックが数多く紹介されています。
後者は、近年会計学の関連学会で特に議論の的となっている内容です。
会計情報が企業の時価総額に与える寄与(つまり、時価総額を会計情報で説明できる度合い)が年々低下している、という大変興味深い分析結果をもとに、あるべき情報開示の仕組みや投資戦略に言及する内容です。
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本当はもっとたくさんの書籍をご紹介したいのですが、紙幅の制約もありますので、ここまでにしておきます。
またどこかの機会で、皆様に続きをお話できることを楽しみにしています。
<執筆者紹介>
原口 健太郎(はらぐち・けんたろう)
西南学院大学商学部准教授
博士(経済学)、修士(理学)、公認会計士、米国公認会計士(Guam, inactive)
九州大学大学院理学府修士課程修了後、NTTデータ・長崎県庁・会計検査院での勤務の傍ら、九州大学大学院経済学府博士課程を修了して現職。専門は経営分析論や公会計等。日本会計研究学会学術奨励賞等受賞。
学内に原口公認会計士事務所を開設するとともに、公認団体サークル「第一国家試験準備室」の顧問を務め、公認会計士・税理士育成にも注力している。
Xアカウント:ふくふくさん(Ph.D., CPA)@CpaFukuoka