【編集部より】
読書の秋ですね。本を読むのにぴったりな季節、「何かオススメはないかな~」と探している人もいるのではないでしょうか。
そこで、本企画では、学者・実務家などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「読書の秋の課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載します・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、鈴木まゆ子先生(税理士・税務ライター)に課題図書をお薦めいただきました!
オススメ書籍①『山月記』(中島 敦、文藝春秋ほか)
『山月記』は国語の教科書に載っていた小説です。天才と呼ばれていた主人公が泥くさい努力から目を背けて慢心した結果、人食い虎と化す話。紆余曲折を経た今、読み返すと怖くなります。私も虎になっていたかもしれないから…。話の中で、虎はこれまでの半生を悔い、涙を流していました。
税理士試験の勉強は、地道な作業の連続です。理論暗記と計算を、コツコツとこなさなくてはなりません。先の見えなさから当然、不安は大きくなります。彼我を比べて、かりそめの安心感に浸りたくなることもあるでしょう。そのまま地道な努力から逃げ続けてしまうと、もう合格は難しいです。
『山月記』は20分で読めます。青空文庫の無料本もあります。「自分は他よりデキる。だから合格できるはず」。そう思いたくなったら、この小説を開いてみてください。
オススメ書籍②『消費税法講義録<第4版>」(熊王征秀、中央経済社)
厚み約5㎝、本体価格7,400円(税抜)。「講義録」という重厚なタイトルも相まって、気軽に「買おう」と思えません。私が受験生なら本屋できっとスルーするでしょう。「難しそう。積読で終わるわ」と。
しかし、ページを開くと最初の印象を裏切られます。言葉がやさしい。図解が多い。制度背景をていねいに解説している。専門学校のテキストで理解が進まないなら、この本を手元に置くことをお勧めします。行き詰まりの原因は「なぜそうなっているのか」が分からないからかもしれません。恥ずかしながら、私はこの本で基準期間の意味を初めて知りました。
ぼやき混じりのコラムもおもしろく、息抜きに読むのも一興です。ただし、うっかり時間を使い過ぎないよう、ご用心。
オススメ書籍③『私の起業ものがたり』(本郷孔洋、東峰書房)
私の知る辻・本郷税理士法人OBは皆、「挑戦するが堅実」です。派手に見えても、変な節税は勧めません。そして、経営というものを熟知しています。このマインドの背景を知りたくなり、本書を手に取りました。
国内最大規模の会計事務所の長として知られる著者ですが、順風満帆ではなかったようです。バブル期は事業多角化で失敗。その後は人材流出に苦しみました。立て直し後、辻会計と合併して税理士法人に。地方展開などをして現在に至ります。山あり谷ありの30年を、著者は軽いタッチで綴っています。文体のテンポがよく、約1時間で読めます。
「商売は飽きることとの戦い」、「起業の動機は不純でいい」など、著者ならではの語録も満載。試験勉強に飽きたら、本書で将来の独立像を思い描いてみてはいかがでしょうか。
<執筆者紹介>
鈴木まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター
2009年税理士試験に官報合格、2012年税理士登録。KaikeiZine、朝日新聞「相続会議」、ソリマチ「みんなの経営応援通信」、マイナビ税理士などWEBを中心に700超の税務・会計記事を執筆。最近の著書に『誰でも簡単 インボイス制度がわかる本 (MSムック)』(メディアソフト)がある。
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