【未来予想図2035】「個人事業主専門」税理士、SNSの活用と仕事の変化


【編集部より】
生成AIの進化などによって、私たちの生活や仕事も大きな影響を与えられています。現在の公認会計士受験生や税理士受験生が、実務家として第一線で活躍する頃にはどのような世界になっているのでしょうか。
そこで本企画では、約10年後の未来を予測し、期待や危機感、それに対する準備などについて、実務家や学者4名の方々からアドバイスをいただきました。(掲載順不同)
「合格の先」を見据えることで、受験勉強を乗り越えるエネルギーにもなるのではないでしょうか。

Interview:河南恵美先生(税理士)

これまでの10年について

以前(2021年)のインタビューでは、独立当初、「個人事業主専門の事務所にする」というと周囲から心配されたというお話を伺いました。開業されて約10年の今、当時からの変化はありますか。

河南先生 私が独立開業した当時は、特に「個人事業主」に特化した事務所はほとんど存在しませんでした。

しかし、最近では税理士事務所も働き方や事務所のスタイル、経営方針がより多様化してきていて、特定の分野に特化するというアプローチは珍しいことではありません。

スタッフを雇用して事務所を拡大するという従来のスタイルや、「ひとり税理士」というスタイルも選択肢として浸透しています。

また、SNSを活用するインフルエンサーのようなアプローチもあります。

様々な税理士事務所が、独自の方法でビジネスを展開しているということを感じています。

また、実務の観点からは、クラウド会計の進化が顕著です。

クラウド会計が始まった当初はこの業界内でまだポジションを確立しておらず、「使い勝手が悪い」というような声もありました。

しかし、今では、Freeeやマネーフォワードのようなクラウド会計は当たり前の存在になっているといえるでしょう。

それに加えて、以前はYouTubeなどのプラットフォームを活用してビジネスを展開すること自体が珍しいことでしたが、それも今や一般的なことです。

私の場合は、大企業を中心とする副業解禁や「自分で稼ぐ力」に対する一般の人たちの意識が高まってきたという時代の流れもあって、個人事業主専門という戦略に有用性があったと感じています。

SNSの変化について

-河南先生のSNS総フォロワー数は25万超と注目度がとても高く、現在は「Voicy」でも発信されています。この10年というスパンでみても、SNSも様々なサービスが生まれていますが、これらの活用や今後の可能性をどのように思われますか。

河南先生 SNSは活用したほうが絶対に有益だと思っています。SNSによって、まるでもう一人の自分を生み出せるような時間的なストックや、信用のストックをすることができるからです。

たとえば、YouTubeで私のビジネス知識が共有されることで、視聴者は知識を蓄積でき、私の人柄や考え方にも触れることができます。

また、Voicy(音声メデイア)は、声だけで情報を届けるので、他のSNSよりも私の人柄や雰囲気がよりリアルに伝わると思います。だから、ごまかしが効かないですよね。

長期的なストックという視点でも、YouTubeやVoicyは過去のコンテンツに簡単にアクセスできるので営業ツールとしても有効です。

今後も、新しいSNSやプラットフォームが登場する際には、ビジネスの展開を広げる絶好の機会となるので、柔軟に取り入れたいですね。特に、これから独立開業する人は、こういったサービスが始まるときは伸ばし時でもあるので、積極的に導入して情報を入手しておくとよいのではないでしょうか。

働き方の変化について

-SNSでは働くお母さんとして、仕事と家事についても言及されています。現在、生成AIなど技術の進歩もめまぐるしく、業務効率化にも影響を与えていますが、税理士の仕事にはこれらの技術をどのように活かすことができるでしょうか。

河南先生 私たちが日常的に面倒だと感じる小さな作業が、AIによって効率化される可能性は十分にあります。例えば、会計ソフトにAIが導入されることで、仕訳や税務申告の一部が自動化されることが考えられます。

私の場合は、YouTubeのタイトルや概要を作成する時や、フォーマルなメール文面を作る必要がある時などに、実際にChat GPTを使うと効率的に作業が進むことを実感しました。

しかし、税理士の仕事が完全になくなることとは考えにくく、AIの台頭によって仕事の性質が変わる可能性があります。

AIによる仕事の自動化に関しては以前から議論されており、特にAIが税理士業務にも影響を与えると言われています。

例えば、正しい仕訳をしたり、申告書を自動作成したりする機能も考えられます。しかし、その最終的な確認や判断は依然として人の手が必要とされる可能性が高いです。

また、相談者が事前に、AIを活用して一次的な情報を収集し、それをもとに専門家に相談するパターンは出てくるでしょう。

このようなケースでは、AIを通じて得られた情報の正確性を専門家が確認し、相談者に説明することが求められるかもしれません。

―最後に、受験生へメッセージをお願いします。

今後、AIを活用した情報提供やSNSを通じたコミュニケーションがますます重要となることを考えると、若い士業へのニーズが高まるということでもあります。

ぜひ、めげずに受験勉強を頑張ってください!

<お話を聞いた人>

河南恵美(かわみなみ・えみ)

河南恵美税理士事務所代表。業界では珍しい自営業専門の税理士。独立起業に必要不可欠な”経理・税金・確定申告”の情報をSNSで発信中。総SNSフォロワーは25万人超。YouTubeのチャンネル登録者は16.6万人(2023年現在)。”オンライン上で税理士を味方につける”をコンセプトにしたオンラインサロンを、新しい顧問契約の形として運営中。
著書に『税理士TikTokerの経理&節税Q&A』(ぱる出版)、『30分でスパッと分かる!インボイス制度Q&Aブック』(宝島社)がある。
プライベートは、旦那と息子の3人家族。仕事と家庭の両立をしながら働く女性起業家。


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