【連載】実力チェック!消費税課税判定クイズ:第3回


税理士
川上悠季

こんにちは! 税理士の川上悠季です。

税理士試験の直前期の勉強も佳境に入り、本試験レベルの高難度の問題演習をこなす機会も多くなってきたと思います。

そこで今回は、消費税法の本試験レベルの発展問題の理解度チェックのために、〇×問題を7問出題したいと思います!

本連載では、消費税法の論点の理解度チェックのために、〇×問題を出題します(全4回・毎月下旬掲載予定)。各回の難易度は次のように設定しています(出題数は各回により異なります)。

<連載の難易度(予定)>
第1回:初学者レベルの基本問題
第2回:直前期レベルの応用問題
第3回:本試験レベルの発展問題(今回)
第4回:基礎~発展まで万遍なく出題

それでは早速、今の時点での学習到達度を測るために、今月の7問にぜひ挑戦してみてください!

問題(全7問)

解答後、「送信」ボタンを押すと、ページ上部に「スコアを表示」ボタンが表示され、解答結果をご確認いただくことができます。

解答・解説

問1.×

特定課税仕入れ(事業者向け電気通信利用役務の提供又は特定役務の提供)を行った国内事業者は、リバースチャージ方式による納税義務を負います。「特定役務の提供」は、国外事業者が芸能人として行う映画の撮影・テレビの出演等が該当します。したがって、ファッションショーや雑誌等で服を披露するなど、非居住者からモデルとしての役務の提供を受けた場合、このような役務の提供は、芸能人として行う役務の提供には該当しないため、「特定役務の提供」には該当しません。なお、テレビやコマーシャルへの出演など、モデルとしての役務の提供ではなく芸能人としての役務の提供である場合には、モデルの肩書を有する非居住者が提供するものであっても、「特定役務の提供」に該当することになります。(参考:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A問43-3)

問2.

軽減税率の適用対象となる食品の範囲には、食品衛生法に規定する「添加物」を含むものとされます。パラオキシ安息香酸イソプロピルは、食品衛生法第10条に基づき食品添加物として指定されているため、その販売には軽減税率が適用されます。なお、パラオキシ安息香酸イソプロピルは、醤油、酢、清涼飲料水、シロップ、果実、野菜などの保存料として使用されています。(参考:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問1)

問3.

当社は、手形法上の遡求権(手形が不渡りとなった場合にA社に手形金額の支払いを請求する権利)を行使できないこととされているため、本問の取引は、実質的に当該手形が不渡りになった場合でも当社が額面金額の支払いを担保していることになります。つまり、当該受取手数料150,000円は、実質的に信用の保証としての役務の提供の対価であるため、非課税売上げに該当します。なお、手形法上の遡求権を行使することができる場合の手数料の受取額は、信用の保証としての役務の提供の対価ではなく、単なる手形の取立代行に係る役務の提供の対価として課税売上げとなることに注意しましょう。(参考:質疑応答事例 「手形の買取り等に対する課税関係」)

問4.×

強制換価手続とは、公権力が強制的に債務の履行を実現させる手続きをいいます。事業として対価を得て行われる資産の譲渡は、その原因を問わないため、強制換価手続により換価された場合の資産の譲渡は、事業として対価を得て行われる資産の譲渡に該当します。したがって、強制換価手続により土地が換価された場合は、土地の譲渡が行われたものとして非課税取引となります。(参考:消費税法基本通達5-2-2)

問5.×

鉄スクラップを炉に直接投入できるようにプレス・粉砕して販売する場合は、仕入商品の性質及び形状を変更しないでそのまま販売しているとはいえず、卸売業ではなく鉄スクラップ加工処理業に該当するため、第三種事業に該当します。(参考:日本標準産業分類 大分類E製造業 中分類22-鉄鋼業)

問6.×

販売奨励金が売上げに係る対価の返還等に該当するかどうかのポイントは次の3つです。
①課税資産の販売数量、販売高等に応じたものであること
②課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほかその販売先である小売業者等の取引関係者に対するものであること
③金銭により支払われるものであること
販売代理店F社は、当社製品の販売契約の締結を委託しているだけなので「課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほかその販売先である小売業者等の取引関係者」の範囲に含まれません。代理店助成のために手数料の上乗せとして契約高等に応じて支払われる販売奨励金は、当社が代理店に対して行った課税資産の譲渡等の対価の返還をしているわけではなく、代理店から受ける役務提供の対価として支払われるものであるため、売上げに係る対価の返還等には該当せず、課税売上対応課税仕入れに該当します。(参考:消費税法基本通達14-1-2)

問7.

軽減税率の適用対象である「新聞」は、定期購読契約に基づくものとされており、「定期購読契約」とは、その新聞を購読しようとする者に対して、その新聞を定期的に継続して供給することを約する契約をいいます。ここでいう「購読」とは、「購入して読むこと」をいい、購入した者が「自らの事業に使用すること(再販売することは除きます。)」も含まれるため、ホテルの宿泊客の閲覧用としてロビーに設置するための新聞の購読料も軽減税率の適用対象となります。なお、毎日納品する固定部数部分については、軽減税率の適用対象となりますが、当日の宿泊客数に応じて納品する追加部数部分については、軽減税率の適用対象とならないことに注意しましょう。(参考:消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)問100)

学習到達度とアドバイス

いかがでしたか?

今回は全体的にかなり難しい問題でした。

本試験で出題される難問には①知らないと解けない問題と②よく考えれば解ける問題の2種類があります。

今回は、問1・5・7は知らないと解けない問題でしたが、それ以外の問題はヒント等を頼りによく考えれば答えが導けたんじゃないかと思います。

今回の問題の得点に応じた学習到達度・アドバイスは次のようになります。

6~7点:深い論点までよく学習されていて素晴らしいです!これだけ取れていれば大きなアドバンテージとなるでしょう。

4~5点:本試験で確保したい得点は十分に取れています!基礎・応用論点でケアレスミスがないように注意しましょう。

3点以下:基礎・応用論点がしっかり得点できていれば、今回のような難問の出来が良くなくても合格ラインに乗ることは可能です。落ち込む必要はありません。

難問対策は取扱注意!

本試験では、資格学校のテキスト等で取り扱っていない問題が出題されることがありますが、そのような難問については、受験生の大半が解けないため合否に大きな影響はありません。

資格学校のテキスト等で取り扱っている事項だけ押さえておけば十分合格ラインに達することができるため、資格学校のカリキュラムを超えて独学で難問対策を行うのはあまり得策とはいえません。

難問対策として、国税庁の質疑応答事例や通達、Q&A、実務書、判例などで扱っている事例を学習する場合、事例の内容によっては原則的な考え方と異なる取扱いをすることもあるため、基礎論点を誤解して覚えてしまうリスクがあることや、そのために時間を費やしすぎて肝心な資格学校のカリキュラムの勉強がおろそかになってしまう可能性があること、量が膨大である割に試験で出題される可能性が低いためタイムパフォーマンスが極めて悪いというデメリットがあるので、取扱いには注意が必要となります。

しかし、実務の勉強も兼ねて学習をしている場合や圧倒的高得点での合格を目指している場合、消費税の専門家・研究者を目指している場合などは、資格学校のカリキュラムだけでは物足りず難問対策の勉強もしたいと思っている方も、受験生の中にはいらっしゃるかと思います。

そのような場合は、資格学校のカリキュラムをすでに完璧に押さえており、かつ、今後の学習時間も十分確保できて余力があるのであれば、難問対策を行うリスク等を把握したうえで、国税庁の質疑応答事例や通達、Q&A、実務書、判例などを読んで、実力をさらに高めるのも良いでしょう。

(ちなみに、僕自身が受験生だったときは、ケアレスミスで基礎・応用論点の問題を取りこぼしてしまうことが多く、根っからのおっちょこちょいな性格でどうしてもケアレスミスがなくならなかったため、ケアレスミスによる失点をカバーするために難問対策の勉強をしていました。)

基本的には資格学校のカリキュラムだけで十分合格可能であること及び難問対策の勉強はリスクを伴うこと等を念頭に置いたうえで、今回出題したような難問について、受験対策としてどう取り組むべきかは、個々人の事情に応じて各自で判断するようにしましょう。

【執筆者紹介】

川上 悠季(かわかみ・ゆうき)

慶應義塾大学卒業。
23歳で税理士試験官報合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、事業税)。
2022年日税研究賞入選。2024年新日本法規財団奨励賞(会計・税制分野 優秀)受賞。
自身が税理士受験生だったときにスマホアプリ「消費税法 無敵の一問一答」を開発。「楽しく学ぶ」をモットーに、アプリやウェブサイト、SNSなどを通じて消費税法の知識を広く発信している。
・X(@YukiKawa_Tax 本人アカウント)
・X(@mutekishouhizei 消費税法一問一答アプリアカウント)
「消費税法 一問一答アプリ」公式ホームページ

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