受験資格のポイント【その2】-受験資格の要件が州ごとに異なる
第2のポイントは、受験資格の要件が州によって異なるという点です(居住地に関係なくどの州に申請するかは基本的に自由です)。つまり、受験資格として大学における会計系科目やビジネス科目の単位修得が求められるという点では共通していますが、「何をどれだけいつまでに」という要件が州によって異なるのです。
大学卒業前に受験可能な州も
例えば、「いつまでに」ということでは、ほとんどの州では大学を卒業してからでないと受験できませんが、西谷ゼミでも申請しているグアム準州はとても条件がゆるく、卒業までに18ヶ月以内になった時点で単位修得要件を満たしていなくても見込みさえあれば受験可能になります。
18ヶ月以内ということは、大学3年生秋学期から受験できるということなので、受験までの勉強時間を踏まえるとちょうど良いタイミングということになるのです。アラスカ州やメイン州でも在学中の受験が可能ですが、単位修得要件を満たした上で大学4年生秋学期からになってしまいます。モンタナ州でも理論上大学1年生から受験できるのですが、単位修得要件として上級生向けの会計系24単位が設定されているので、実際にはせいぜい大学4年生春学期ぐらいからしか受験できないようになっています。
他方、「何をどれだけ」ということでは、レベルに関係なく会計単位15単位だけというアラスカ州やメイン州(ただし監査論は必修)のようなところから、上記で紹介したグアム準州のように多様な分野が指定された上で会計系24単位とビジネス系24単位というようなところまで様々です。
卒業学部が経営学部や商学部ではない場合、単位修得要件の科目数が少ない州で申請する方が負担も少ないということになりますが、試験合格後に厳しい単位修得要件を課してくる州もありますし、そもそもどの州でも試験合格後にライセンスを申請するためには150単位必要になる点には注意しておかなければならないでしょう。
受験資格はNASBAを自分でチェック
各州の受験資格については、日本の受験資格予備校のWebサイトでも紹介されていますが、アメリカらしく変更もしばしばありますし、なによりかなりの部分が省略されてしまっているので、自分できちんとUSCPAの受験を管轄している組織であるNASBAのWebサイトをチェックしておくことをオススメします(もちろんNASBAのWebサイトはすべて英語で書かれていますが、それを読むのを嫌がるようではUSCPAにはそもそも向いてません)。
例えば、同じ立命館であっても、西谷ゼミのある大阪府の立命館大学経営学部と、国際認証AACSBを取得している大分県の立命館アジア太平洋大学国際経営学部の学生では、適用される受験資格が異なる州もあったりしますが、そうした情報はやはり英語で生の情報を自分でチェックしないとわからないのです。また、受験予備校や通信教育から取得した単位の今後の取りあつかいについては議論もあるようです。
英文での各種書類が必要になる点にも注意!
最後に、受験資格の申請をする際には、日本の大学で取得した単位についてはたとえ英訳されていたとしても、そのままでは申請できないことに注意する必要があります。英文成績証明書や英文卒業証明書を発行してもらえない大学は現在ではほとんどないとは思いますが、アメリカ以外の大学から発行された成績証明書については、例えばNIES(上記NASBAの審査サービス部門)などで申請の前の学歴審査を受ける必要があります。
そこで、アメリカの大学で取得したのと同等の単位であるという証明を受けるのです。アメリカの視点からすると、アメリカ以外の国にある怪しげな大学が発行したような成績証明書をそのまま受け取るわけにはいかないというわけです。
もっとも、基本的に日本の大学は高い信用があるようです。ただ、どうも英語下手なところがあって、講義科目の英語名称が上手く伝わらず、トラブルになることも多いです。例えば、上級生向けの会計科目なのに入門科目として判定されてしまったり、ファイナンス科目なのに経済学科目として判定されてしまったりして、受験資格が想定通りに満たせなくなってしまったりすることもしばしばあります。そういう場合は、英語で交渉することになるわけですが、代理人を立てるとそれだけで費用が発生しますし、交渉の結果として大学が発行する英文シラバスを要求されることもあります。
日本語で提供されている授業に対して、科目名称はまだしもシラバスまでは英語で用意している大学はほとんどないため、しかもそれが10年前や20年前に卒業した人の英文成績証明書をめぐる場合には、大学が対応してくれるかどうか、対応してくれるにしても何日かかるのか、いくらかかるのかをめぐってトラブルになるケースもあるようなので注意が必要です。
【この記事を書いた人】
西谷順平(にしたに・じゅんぺい)
立命館大学経営学部教授。防衛調達審議会委員(防衛装備庁)、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス社外取締役などを兼任。立命館大学の公認会計士教育プログラムを開発し、合格者ランキング上位常連校に導いた。現在は、大学カリキュラムとしてのUSCPA教育プログラムを開発中。主な著書に『新版 財務会計の理論と実証』(共訳、中央経済社)、『保守主義のジレンマ』(単著、中央経済社)など。