【編集部より】
税理士試験の税法科目受験生にとって避けて通れない「理論暗記」。悩める受験生が多いことからか、昨年11月末に発売した『税理士試験 税法理論のすごい暗記法』(以下、『すご暗』)は、1ヵ月で増刷が決定しました!
そこで、『すご暗』の著者であるYU ME NO U Eさん(税理士)とSKYさん(税理士)に、税法理論暗記について本書の内容をさらに深堀していただく対談をお届けします。
地道に繰り返すのみ
YU ME NO U E 前編では、計算:理論の比率や暗記の下準備などについて伺いましたが、SKYさんのように2年で受かる人は、そんなに時間をかけずに、1回読んだだけで頭に入っちゃって、さらさら覚えていったんじゃないかと思ってしまいますが、やっぱり時間をかけているんですね~。
僕が一番安心したのは、SKYさんの動画で、5回も6回も繰り返して暗記するのを見て、同じことを自分もやっていたから、「これしかないんだ」と思ったことがあります。
SKY あれしかないですよ(笑)。繰り返し繰り返し、地道にやらないといけないんですよね。だから、受験専念でしたけれども、毎日全力投球していたので、布団に入ったら即寝のような状態でしたもんね。寝ないとダメ派なので、睡眠時間はきちんと確保していました。
YU ME NO U E 暗記の場所はもっぱら電車の中ですか。
SKY そうです。電車で座って勉強するために、朝5時半くらいには乗って、学校に行っていました。
理論暗記本を片手に持って、いつもの車両のいつもの席に座って、毎日「電車の中で絶対ここまで終わらせる」みたいなノルマを決めて、ものすごく集中していましたね。僕にとっては、電車に乗るのが勉強スイッチみたいなものでしたし、しっかり睡眠もとっていたので、眠くなることもありませんでしたよ。
むしろ、「この時間しかこの理論に時間を使えない。ここで集中しないとこの後がマズイことになる」と、勝手に追い込んでいたので、必死でしたね。なんとなくではなくて、ノルマを電車でやりきるという覚悟を毎日持つかどうかが大事ですね。
YU ME NO U E 理論暗記本を見ていると、それだけで勉強している気になっちゃいますよね。
SKY そうなんですよね。本を開いたまま30分電車に乗っているよりも、その30分で「この1題を絶対に覚えるぞ」という気合が大事ですね。だから、細かい時間ごとに目標決めておくことはポイントかもしれません。
僕の場合、起きたらもうその日にやることが決まっていて、電車の中では何をする、講義が終わった後の自習時間の2時間でここまでやるとかを全部決めていました。だから、「今日何しようか」と考える時間はほとんどなくて、毎週、カリキュラムごとにそのノルマを調節していました。
YU ME NO U E 電車の時間も、勉強時間として計画にいれていたんですね。スキマ時間も勉強時間として有効活用したいですね。
暗記スケジュールの固定化
YU ME NO U E 週単位で暗記する内容を決めていたんですか。
SKY そうですね。大きく変わらない時は、2~3週間同じですけど、1ヵ月単位や答練が終わった後、それと学習時期ごとには大きく変わるので、その時に、また1から作り直して、それで1週間、2週間を回して試してみて、「この時間が全然足りない」というようなスケジュール管理をすごく気にしていましたね。
僕の場合は、行きと帰りの電車で理論の回転をして、学校にいる間の毎日1時間だけは新規理論の暗記に取り組んでいたんですが、そうやって覚える時間を固定しているのがよかったですね。
YU ME NO U E SKYさんは専念でしたけど、たとえば働きながら受験勉強されている人でも、通勤時間で絶対ここを覚えきるみたいに決めておくとよさそうですね。
私の場合、特に繁忙期の平日はどうしても机に座って勉強する時間が取れないので、平日は理論、休みの日に計算というように割り切って勉強していました。
理論は仕事前の時間を活用して絶対に毎日取り組んで、計算は週末の講義と一緒に取り組む。時間がないなりにも、「いつ、どこまでやるか」を決めたほうがいいですよね。
よくありがちですが「今週、何時間勉強する」という時間を目標にしてしまうことがあります。でもそれだと机に向かっているだけで勉強をしている気になってしまうんですよね。「どの問題を解く」、「どれを覚える」というところまで決めておいたほうがいいですね。
SKY カリキュラムとか自分で目標決めて、それで、毎日そこだけは絶対覚えていく、何回計算まで終わらせる、分からない論点を明確にさせるところまでやる、など何かしら毎日確実に進捗がないと、なんとなくで「今日は新しい理論覚えよう」、「明日はちょっとこっちやってみよう」とかなると、歯抜けになってしまって、カリキュラムの中でどうしても論点の漏れが出てきますからね。だから、スケジュールは紙に書いて管理していましたよ。
ちなみに、計算も「まとめノート」を作っていて、そのノートを1回転して復習する時間を毎日取っていました。
理論は何回転していた?
YU ME NO U E 理論の回転ってどれくらい回していましたか。
SKY 週に1回転ですね。僕の場合、習っていない論点も含めて理論暗記本を最初から最後まで通して読みつつ、覚えた論点は暗唱して1回転していました。
なので、1年間で、9月~翌7月まで8月を除いてざっと44回転。本試験が近づくにつれて回転スピードを上げているので、全論点少なくとも50回転くらいは回したと思います。
当然、新規理論を暗記するときは、その週に同じ論点に対して毎日1時間は時間をとって、覚える作業を7日間続けるので、その時点で7回転以上は繰り返していました。実際は、1日に何回も回しているので、多分その倍以上はやっていますね。
YU ME NO U E 「いつ試験が来ても大丈夫」と思えるようになったのは何月頃ですか。
SKY 理論は直前期の5〜6月ですかね。
YU ME NO U E 早いですね! だいたい多くの受験生は、ゴールデンウィーク明けくらいから理論の回転を本格的にはじめる感じですよね。
SKY そうですよね。でも、自分の場合は交際費などの定番理論は9月からもうずっと回しているので、5〜6月には本当に目をつむって「交際費」と思っただけで、条文がばって出てくるようになっていました。
YU ME NO U E 本当にすごく高い精度で暗記していたんですね!
僕の思う普通のペースは、だいたい年内に重要理論を10題覚えられていたらいいほうで、そこから4月頃までで、残り30〜40題を覚えるのを1つ1つ繰り返して、そのあとゴールデンウイークあたりから回転サイクルに入って、ギリギリ間に合わせるようなイメージです。
SKY そうですよね。それが、一般的なペースだと思います。
多くの受験生は、年内は計算:理論の割合が8:2〜7:3で、年明け頃から6:4〜5:5になって、ゴールデンウィーク明けからは逆転して理論の割合が高くなるような感じですよね。
僕の場合は、1年目の消費税法で理論暗記がしんどすぎて、つらかったので、理論暗記を後ろに持ってきたくなかったんです。どうせ辛いってわかっているなら、最初にやっておこうと気づいたので、2年目はカリキュラムを無視して理論暗記を進めていました。
あと、直前期に計算が難しくなりますよね。本試験レベルのものが出てくるので、その時期に新規の理論暗記に時間を取られてしまうと、回転もできなくなるので、4月頃まではしんどいけど、新規理論は1回でも2回でも覚えておかないと、5月以降に新規理論をいっぱい覚えようというのは無理でしたね。
YU ME NO U E そうですね。だから働きながらの受験生であれば、これから繁忙期ですけども、少なくとも新規理論は絶対覚えるとか、覚えた理論の回転だけは絶対やるとか、どちらかはやらないと、1〜3月が仕事で忙しいからといって、一旦、理論を全部頭からシャットアウトしてしまったら、いざ、春以降に「よしやろう」という時に思い起こす作業がしんどくなってしまうと思います。
僕は消費税法の2年目の時は、年内は勉強をしていなくて、相続税法を勉強していたんです。なので、年明けから消費税法の理論をもう1回覚え直すような感じでしたが、すっかり忘れていたので1からやる気持ちで覚えないと無理でしたね。やっぱり忙しくても理論はずっと回転しておいたほうが良いと思います。
今から3月~4月頃までには、頑張って新規理論を覚えて、ゴールデンウィーク明けから理論の回転に時間が使えるようにしてほしいですね!
暗記するときのスタイルと出だしを覚えるコツ
編集部 ちなみに、Twitterを見ていると、『すご暗』でYU ME NO U Eさんが紹介していた「ステッパー暗記」を実践する方もいるようですよ!
YU ME NO U E カッコいいステッパーを使っている人もいるようですね♪
SKYさんはどのようなスタイルでしたか。
SKY 僕は着座スタイルですね。自習室でも修行僧のように着座していたので、他の人から見たら、多分じっとしているようにしか見えなかったと思いますよ。むしろ、目を瞑っている時もあったので(笑)。
YU ME NO U E 僕が受験生時代に自習室でそんなSKYさん見てたら、「あの人絶対に寝てるわ。あの人には勝ったな」と思っていたと思いますよ(笑)。
最後に、1つだけテクニック的なことを聞いて良いですか? SKYさんが『すご暗』でも書かれていましたが、理論は出だしの言葉を覚えるのが難しいですよね。逆に出だしの言葉が出てくるとそのあとの文章がスラスラとでてきたりするじゃないですか。そこで、出だしの言葉をを覚えるコツがあれば教えてください。
SKY やっぱり出だしが相当難しくて、「出だしなんだっけ?」というので悩んだ記憶が今でもあるくらいですね。
最初の一文が出てくるとその後も続くんですよ。最初の1文、もっといえば1文節の主語が何か、「個人または…」とか、その最初の一言目ですよね。
僕の場合は、『すご暗』でも書いたように、いわゆる“柱”を暗記していたので、それとセットで覚えるようにしていました。ちなみに、“柱”については、『すご暗』p.12でYU ME NO U Eさんが説明されていますね。
だから、「課税売上が5億円を超える場合等」というのがあれば、その柱と一緒に出だしの言葉「1の場合において~」というところまで覚えるんですよね。そうすると、柱とセットで出だしの言葉も覚えられました。特に消費税法とか法人税法では出だしで迷うことがあったので、よくやっていました。
あとは、もうどうしても出てこない時は、重要な内容だけ先に思い出して、その前に1行くらい空けておいて、要件とかだけをとりあえず先に書くこともありました。文の途中から書き出して、「ここからは言えるんだけどな」みたいな時があって、書いていると思い出すこともあったので、あとから空いている行に書き足したこともありますね。
YU ME NO U E 「柱とセットで出だしの言葉を覚える」。これは実践的な方法で参考になりますね!
そのほかのいろいろなテクニックも『すご暗』の中で紹介しているので、時折読み返すなどして、ぜひ参考にしていただけると嬉しいですね。 本日はどうもありがとうございましたー!!
【対談者のプロフィール】
YU ME NO U E
税理士・中小企業診断士・社会保険労務士(試験合格)
トヨタ自動車(株)に10年間エンジニアとして勤務。仕事のなかで携わった中小企業との出会いがきっかけで、中小企業支援に関心を抱き、エンジニアとしての勤務のかたわら社会保険労務士試験、中小企業診断士試験に合格。2017年、35歳にして退職、実務経験ゼロで税理士法人へ転職。故郷である静岡県に戻り、中小事業者の力になれるよう、第2の人生のスタートラインに立っているところ。2014年から税理士試験を受験し、2020年に官報合格。勉強法や等身大の受験生活の日々を綴ったブログ「資格の先のYU ME NO U E」が大人気で、アメブロ資格ジャンルのランキング上位常連。
著書に『社労士試験 この勉強法がすごい!』(単著)、『税理士試験 税法理論のすごい暗記法』(共著)(ともに中央経済社)がある。
・Twitter:@Kenichiro44
SKY
税理士
2017年度官報合格。受験期間2年(1年目に簿記論・財務諸表論・消費税法合格、2年目に法人税法・相続税法合格)。1年目の途中までは働きながら、その後受験専念。
著書に『税理士試験 税法理論のすごい暗記法』(共著、中央経済社)がある。
受験ブログ「SKYの税理士受験記」
YouTube「SKYの税理士試験受験対策チャンネル」
・Twitter:@sky_zeirishi
【書籍紹介】
『税理士試験 税法理論のすごい暗記法』
YU ME NO U E 編著/SKY・くまお・芹・フジハラ 著
定価:2,420円(税込)・発行日:2022/11/30・A5判 / 192頁
ISBN:978-4-502-44431-9
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