【会計士試験】国見先生に聞く! 12月短答合格発表の結果をうけて、今からどうする? ~5月短答・8月論文の受験生別アドバイス


【編集部】
1月20日(金)は、令和5年第Ⅰ回短答式試験(12月実施)の合格発表日です。これまでは予想合格ラインに基づいて、学習計画を立てていた人も多いと思います。しかし、合格発表の結果をうけて、これからどういう対策をとればよいかを改めて考え直す人もいることでしょう。
そこで、『一生モノの「学ぶ力」を身につける』(中央経済社)が近日刊行される、CPA会計学院の国見健介先生(公認会計士)に受験生タイプ別にアドバイスをいただきました! ぜひ参考にしてください。

いよいよ合格発表! この時期によくある相談とは?

編集部 合格発表の時期によく受ける相談はどんな内容がありますか。

国見先生 「これから何をすればいいですか?」という相談が一番多いですね。
その時に真っ先にお伝えするのは、「ちゃんと本気でやる」ということです。

精神論のように聞こえるかもしれませんが、やはり、やり方云々の前に、「絶対に受かるんだ」という気持ちで、本気で取り組まないと、そもそもの土俵に上がれません。

当然、やり方もすごく大事ですけれども、どんなやり方をとったとしても、「推進力がどれだけあるか」は本人の本気度と比例するからです。

その上で、やはり試験なので、「理解と暗記」に向き合う必要があります。理解と暗記がどういうものかについては拙著でもお伝えしていますが、この2つのバランスを考えた時、今はまだ暗記の時期ではありません。

これは5月短答を受ける方であろうと、8月論文を受ける方であろうと同じことで、今は「理解の強化」と「暗記事項の整理まで」ですね。

5月短答の方であれば、細かい暗記は4〜5月でいいですし、論文生の方でも暗記は4月以降でいいので、3月までは、「この論点はこういうことを言っているのだな」、「最終的にはこういうことをちゃんと覚えないとダメだな」という、理解の強化と暗記の整理がすごく大事ですね。

その上でもう1つ大事にしていただきたい視点は、「理解も暗記も、初見の問題で点数を取るために取り組んでいる」ということです。

なので、「初見の問題で点数を取りにいくために必要な理解って何だろう」、「どういうことを暗記していないと、初見の問題は解けないだろう」ということを考えましょう。ゴールを忘れて、「問題集だけをひたすら反復して解けるようにしました」となると、方向性がズレてしまいます。

編集部 「ゴールの重要性」は著書でも触れられていますね。

国見先生 たとえば、大阪から東京に向かうという時に、手段としては飛行機や新幹線、車などがある時に、もし目的を間違えてしまっていると、せっかく飛行機に乗っているのに、気づいたら香港だったなんていうことになりがちなんです。

「ゴールは何?」というポイントを外さないためには、まず目指す方向を間違えないことですね。やり方はその戦術なので、絶対に飛行機でなければならないわけではなく、人によっては新幹線のほうがよいでしょうし、もしかしたら車のほうがいいのかもしれません。

徒歩で向かうとなると、確かに効率が悪すぎますが、ただ歩いて向かっていても、東京を目指していれば近づいてはいます。

ゴールを間違えず、より効率のよい手段・戦術を選ぶことができるかが重要ですね。

試験勉強において、「理解や暗記をどう取り組むか」は戦術です。そこに意識が向きすぎて、「点数をとる」というゴールを忘れている方も結構います。

正しい「戦略」と「戦術」で、「本気」で取り組むことは、どういう状況の受験生に対しても必ず言える、大事な3つのポイントです。

【近日刊行】国見先生の新刊著書には、20数年にわたり1万人を超える会計士受験生の相談を受けた経験から導いた勉強法アドバイスが凝縮されている。

5→8合格を狙う人へ

まずは、事実をしっかり受け止めよう

編集部 合格発表をうけて、中には予想外の結果になり、5月短答を目指す人もいると思いますが、この場合、何から始めればよいでしょうか?

国見先生 特に5→8を目指すからといって、何かが大きく変わるわけではありませんが、「12月短答の段階でダメだった」という事実を直視することです。

ダメだった時には、何か原因があるはずです。本来、12月短答に受かって8月論文を理想としていましたが、その原因を分析し、5月・8月までにそれらをしっかり乗り越えられればいいのです。

大きな原因が、「そもそも時間が足りなかったのか」、「点数を取ることに対する意識が弱かったのか」、「理解を軽視しすぎていたのか」、中には、「純粋に暗記が間に合わなかった」という方もいらっしゃると思います。

「何を改善していれば、12月短答で合格ができたのだろう」というところからしっかり分析して、5→8合格に向けて、今度はそこをしっかり改善して臨むことですね。

実は合格まで時間がかかってしまう方は「原因分析が弱い」ことが多いので、自分の課題をきちんと改善できていないのです。理解が弱いのにひたすら反復したり、そもそも勉強時間が足りないのに全く増やしていなかったりします。

他にも、暗記ができないのは、なんとなくしか暗記事項を整理できていないからか、純粋に反復回数が少ないからか、それによって改善策が異なり暗記の仕方が変わってきます。

とてもシンプルなことですけれども、「ダメだった」ことに関してしっかり原因分析をしていくところが、5→8合格を目指す方にはすごく大事なことですね。

成功する確率を上げる

あと、もう1つ言うと、人生うまくいかない時のほうが多いです。たまたま会計士試験でスパっと一発合格してうまくいったからといっても、今後のチャレンジでスパっとうまくいくとは限りません。むしろ、失敗した時にどれだけ腐らずにいられるか。ちゃんと現実を直視して、次は成功する確率を上げられるか。

反対に、そこで課題を放置したり、気持ちが腐ってしまうと、ますます自分で確率を下げることになります。「5→8は大変って聞くので、不安で仕方がないです」というマインドでは、確率を下げる一方です。そして、そこから負のスパイラルに陥るので、むしろ「5→8で受かればいいんだ!!」という気持ちで勉強できる人のほうが強いですね。

「難易度は高いかもしれないけど、必ず合格します!」という姿勢のほうが達成する力が強いので、自分がどう向き合うかも大事ですね。

編集部 メンタル面も大きく影響するんですね。

国見先生 そうです。メンタルのアドバイスって、どうしても精神論のように聞こえてしまいますが、向かっていく気持ちが強くない人が結果を出す可能性は極めて低いです。そういう意味でも、「本気でやれるか」ということにつながります。

ある程度、本気で取り組んでいたから落ち込んでしまうというのもわかるのですが、逆を言うと、「本当に本気ではないから長い時間落ち込む」という面もあります。本当に本気だったら、落ち込んでいる暇なんてないんですよね。

よく「不安でいろんなことを考えてしまう」というのも、本当に結果にこだわっていれば考えないはずというより、そんなことを考える時間が勿体ないので、そのような状況になっている場合には、ゴールに対する気持ちが弱くなってしまっている可能性があります。

原因を自己分析するときのコツ

編集部 原因分析というのは案外難しくて、自分でわかっているつもりになりがちな部分もあるのではないかと思うのですが、何かコツはありますか。

国見先生 それは「結果にコミットしているか」ですね。拙著でもお伝えしていますが、いわゆる‟裏目標”を優先してしまうことが多いので、それには注意したほうがいいですね。

あとは、何事も「その分野のわかる人に聞く」ほうが早いですね。結果にこだわる力が強い人ほど、質問力や相談力があると思うのですが、そうでない人ほど情報交換せずに進めてしまいがちです。

同じことを何度も聞くのは相手にも失礼ですけど、わからないことがあれば1回は早めに聞いてしまってトライして、またわからないところが出てきたら聞く。どの分野でも、成長が早い人は必ずよく質問するし、よく聞く人だと思います。

これはプロとして仕事を始めてからも、わからないことをわからないままにしておくほうが、よっぽどよくないことなので、身につけておきたい力ですね。

どこを目標にするか

編集部 5→8合格を目指す人にとって、ひとまず5月を目標にするのか、8月を念頭に置くのか、どういう捉え方で勉強するとよいでしょうか。

国見先生 それは正直、人によってですね。ただ、何がなんでも5月短答だけ突破したいという方と、5→8両方突破したいという方では、やり方が少し変わってきます。

何がなんでも5月短答という方であれば、多少、理解を軽視して暗記に比重を置いても、たまたま典型問題が多いという試験回であれば受かってしまう可能性もあります。

ただ、論文に受かるとなると、理解していないと絶対的に厳しいので、きちんと理解を強化した上で5月短答に臨めば、5月の点数も安定するし、8月の合格の可能性を高めることができます。

当然、租税法や経営学という論文科目の対策を始めるのも1つですが、もう1つは、短答科目において理解を強化した上で暗記もしていけば、それは論文対策にもつながります。

論文式試験で必要とされる理解ができれば、短答式試験でも点数は安定するようになります。もう少し言えば、論文で三振をしてしまう方は、理解が足りないまま短答に受かってしまって、勉強のやり方をそのまま変えないことが原因であることも多いです。

短答だけなら確かに暗記重視でも受かってしまうこともありますが、ただ、本試験の問題によっては暗記重視だと厳しい戦いになることもあります。

論文式試験を目指す人へ

編集部 8月論文を目指す人は、ここからどんなやり方やモチベーションで進めていくのがいいでしょうか。

国見先生 モチベーションが高い前提であれば、勉強の仕方としては、やはり3月まで理解を強化して、4月以降に暗記ですね。「今から暗記をしないこと」が非常に大事です。

一方で、12月短答の後から勉強に対するモチベーションが上がらない人は、目標に生きてしまっているんですよね。

編集部 「目標に生きる」ですか?

国見先生 たとえば、「短答式に受かりたい」とか、「公認会計士になりたい」という期日のある目標に生きてしまっているので、その目標を達成すると燃え尽きたようになってしまうのです。

ここで大事なのは「ミッションに生きる」ことです。たとえば、私だったら、「人の可能性を広げて、人生を豊かにするための応援をする」というミッションがあった時に、そのミッションには終わりがありません。

たとえば、その過程の目標として、会計士のジャンルでは「合格者数ナンバー1のスクールになる」ということは設定しましたが、もしそれ自体が私の目標だったら、達成した途端に燃え尽きてしまう可能性があります。

でも、「人の可能性を広げて、人生を豊かにするための応援をする」というミッションがあれば、その過程の目標を達成したときには、「これでもっと多くの人の可能性を広げることに貢献できる」と、さらにやる気が湧き上がってくるのです。

人それぞれ、そのミッションが自分にとってハッピーだと心から思えていれば、ダラダラしている時間さえもったいなくなるはずです。

オリンピック選手でもメダルを取って燃え尽きてしまう方がいるように、会計士試験に受かってもモチベーションが湧かなくなる人もいるので、目標に生きないということは大切だと思います。

ミッションさえブレなければ、その具体的な実現の仕方というのは、実は100万通りくらいあるんですよね。私だったら会計士のスクールとしてそれを実現したいですけども、別にラーメン屋で実現しても、出版社で実現してもいいわけです。

そうすると、目の前の目標がうまくいかなかったからといって絶望しなくてもよくて、違うやり方を考えればいいだけですよね。

編集部 今もし、勉強に手がつかないという人は、「なぜ公認会計士になりたいのか」を改めて少し考える時間をつくってみてもいいかもしれませんね。

国見先生 そうですね。結局は自分がやりがいをもって生きられればいいわけなので、会計士試験に受かるとか、キャリアをどうするかというのは全て手段です。そこに限られた時間をどう配分していくかだと思います。そう考えると、やる気は出やすいのではないかという気がします。

目標だけに生きていると、12月短答に受かって、「ちょっと手を抜いても大丈夫そうかな」と思ってしまったら、モチベーションが上がらないんですよね。さらに言うと、「受からないかも」と思ってしまったら、モチベーションがゼロになってしまいます。だから、目標に生きるというのは、驕りで油断が出たり、不安でやる気が下がったりするというリスクに常に晒され続けています。

ミッションに生きているのであれば、試験に受かってからの可能性ももっと広がりますよ!

編集部 ありがとうございました! 国見先生の著書をバイブルにぜひ合格をつかみ取っていただきたいですね!!

【お話を聞いた人】
国見 健介(くにみ けんすけ)

公認会計士/CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役
1978年東京都生まれ。1999年公認会計士試験合格、2001年慶應義塾大学経済学部卒業。2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立し、代表取締役就任。2003年1月公認会計士登録。CPAエクセレントパートナーズが運営するCPA会計学院は、2022年公認会計士試験において合格者数606名を輩出し、全合格者1,456名の内、合格者シェア41.6%を達成している。これまで20数年にわたり、1万人以上の会計士受験生から相談を受けた経験に基づいて確立されたメソッドとその実績には、多くの受験生から厚い信頼が寄せられている。
主な著書に『公認会計士の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本』(秀和システム)、『親子で目指す公認会計士受験ガイド』『一生モノの「学ぶ力」を身につける』(ともに中央経済社)がある。

【書籍紹介】
<近日刊行>『一生モノの「学ぶ力」を身につける――国見流結果を導く会計学習メソッド』

『一生モノの「学ぶ力」を身につける――国見流結果を導く会計学習メソッド』
国見 健介著
定価:2,090円(税込)・発行日:2023/01/24・A5判 / 144頁
ISBN:978-4-502-44631-3
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<好評発売中>『親子で目指す公認会計士受験ガイド

『親子で目指す公認会計士受験ガイド』
国見 健介 著
定価:1,760円(税込)・発行日:2022/02/22・A5判 / 144頁
ISBN:978-4-502-41831-0
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