経理部IS
現役の上場企業経理部長が教える!
会計士・税理士・簿記検定の受験生の中には、事業会社の経理への転職を視野に入れる人も多いでしょう。
そして事業会社の中でも「上場企業で経理の仕事をしてみたい」と考えている方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、いま上場企業ではどのような経理人材を求めているかについて解説していきます。
現役の上場企業経理部長が、経理人材に求めるスキル、経験について具体的に説明をしますので、これから上場企業の経理を目指したいと考えている方はぜひチェックしてみてください。
いま欲しい上場企業の経理人材はこんな人!
上場企業の経理でほしい人材は、ずばりこんな人です。
- 連結決算や決算開示のスキル、経験がある。
- 四半期、期末決算実務の経験がある。
- 難しい会計実務(固定資産減損や税効果会計)のスキル、経験がある。
- 法人税・消費税の計算、申告書の作成ができる。
- 監査法人対応や税務調査対応の経験がある。
- コミュニケーション能力が高い。
- システムが得意(苦手意識がない)。
このようなスキルや経験を持っている人は、上場企業の経理で採用したい人材です。
連結決算や決算開示のスキル、経験がある。
上場企業の経理では、必ず連結決算や決算開示業務を行わなければなりません(一部中小の上場企業では連結決算がないところもあります)。
連結決算・決算開示ができないと、そもそも上場企業としてやっていけません(決算開示できなければ上場廃止になってしまいます)。
そのため、これらのスキル・経験がある人は、上場企業の経理で必須の人材となっています。
四半期、期末決算実務の経験がある
連結決算の経験がなくても、会社の決算実務を経験し、決算を締めることができる人も上場企業の経理で求められています。
上場企業では子会社を多く抱えている場合もあります。
そのとき、この子会社の決算をチェックしたり、実際に子会社の決算を締めることができる人が必要とされています。
難しい会計実務(固定資産の減損や税効果会計)のスキル、経験がある
上場企業の経理では、会計基準に従った難しい会計実務を行わなければなりません。
特に、固定資産の減損や税効果会計など、内容が難しい会計実務については、実際に実務を経験している人が少ないため、貴重な人材として扱われます。
法人税・消費税の計算、申告書の作成ができる
中小企業では、法人税や消費税の計算、申告書作成は顧問税理士に依頼している場合がほとんどです。
一方、上場企業では経理担当者が計算、申告書作成まで行う場合が多くあります。
また、納める税金が増えた(減った)理由を関係者に説明するもの経理の役目であり、その説明をするには、税金計算方法を理解している必要あります。
そのため、上場企業の経理では、法人税、消費税の計算や申告書作成ができる人材が必要とされています。
監査法人対応や税務調査対応の経験がある
上場企業の経理では、監査法人の監査対応が必要となります。
この監査対応の経験があれば、どのように監査法人と接すればよいか?がわかり、スムーズに監査対応を進めることができます。
また税務調査を実際に経験し、税務署職員との接し方がわかっている方はスムーズに調査対応ができます。
しかし、監査対応や税務調査対応は、誰でも経験できるものではありません。だからこそ経験している人は貴重な人材として扱われます。
※監査法人対応は、単に監査法人に資料を提出するだけの経験ではなく、監査法人と一緒に会社の会計処理方法を検討するなどの経験が必要とされています。
コミュニケーション能力が高い
経理でもコミュニケーション能力は必須です。
上場企業の経理では、所属する経理部門のほか、社内の事業部門、監査法人、税理士法人、さらには税務調査の担当者といった社内外の関係者と協力して仕事を進めていかなければなりません。
実際のところ、社内外の方々と接する機会が多いのが上場企業の経理です。
社内外の方々と接する際には、人の話を聞き、わかりやすく説明するといったコミュニケーション能力が求められ、これができる人ほど、仕事をスムーズに行うことができます。
だからこそ、上場企業の経理では、コミュニケーション能力が高い人を求めています。
システムが得意(苦手意識がない)
上場企業の経理では、会計システムのほか、基幹システムや固定資産システム、原価計算システムなど、さまざまなシステムを駆使して経理処理を行っています。
システムが得意な人は、各システムの内容を見ただけでおおよその操作を理解でき、すぐに仕事に慣れます。
一方、システムが苦手な人は、なかなかシステム操作を理解できず、仕事に支障をきたしてしまいます。
上場企業の経理は、システム無しでは仕事ができませんので、システムに詳しい人、得意な人が求められています。
上場企業の経理で欲しいと思われる人材になるためにやるべきこと
上場企業の経理でほしい人材になるためには、
・得意分野を持つ
・率先して新しい仕事にチャレンジする
この2つを実践してください。
得意分野を持つ
「連結決算の実務に詳しい」
「税金計算が得意」
といったように、どれか1つでも得意な分野があれば、上場企業の経理で活躍できます。
上場企業の経理では、難解で専門性が高い業務を行うことも多く、それに対応できる人が求められています。
上場企業の経理で高く評価されるには、専門性が高い分野を深く勉強して、それを得意分野としてください。
率先して新しい仕事にチャレンジする
上場企業の経理になるためには、会計や税務のスキルや決算実務などの経験が必要です。
そのスキルを増やし経験を積むためには、率先して新しい仕事にチャレンジする必要があります。
例えば、
・会計システムを入れ替えするとき、自ら進んで入れ替え担当者になり、システム対応の経験を得る。
・新しい会計基準の導入や税制改正の対応を自ら進んで行い、会計税務のスキルを増やす。
といったように、スキルを増やし経験を積むために新しい仕事にチャレンジしていく必要があります。
まとめ
今回は、上場企業ではどのような経理人材を求めているかについて解説しました。
上場企業の経理で求めているスキルや経験は簡単には得られません。
しかし、
・興味を持って1つの分野を深く勉強してみる(例えば税金計算に詳しくなる等)。
・率先して新しい仕事にチャレンジして経験を積む。
といったことを行うことで、スキルや経験が得られ、上場企業で求められる経理人材に近づきます。
これから、上場企業の経理で働き、活躍したいと考えている方は、今回の記事を参考に、必要なスキルを増やし、経験を身につけていきましょう。
<執筆者紹介>
経理部IS
20数年に渡り、上場企業とその子会社で経理業務に従事している現役経理マン。日商簿記1級・税理士試験の簿記論・財務諸表論保有。
経理における複数の転職経験、そして現役上場企業での中途採用経験を活かし、経理の転職エージェントを紹介するサイトも運営中。
・Twitter(@keiri_IS)
・経理の転職エージェント比較専門サイト