株式会社TACプロフェッションバンク 相澤 健
(キャリアコンサルタント/社会保険労務士有資格者)
【編集部から】
昨日終了した公認会計士試験論文式試験。
いよいよ本日から監査法人の採用活動が始まります。
皆さんは、これから本格的に就職活動を進めていくと思いますが、そこで悩みドコロとなるのが「どの監査法人を選べばよいのか」ということ。
そこで、多くの受験生の就職をサポートされてきた株式会社TACプロフェッションバンクの相澤健さんに、論文式試験受験生の就職活動についてお話しいただきました。
本記事では、ミスマッチを防ぐ監査法人選びのコツ、監査法人ごとの特徴をお届けします。
論文式受験生の皆さま、こんにちは。資格の学校TAC(以下、TAC)で会計士受験生の進路・就職相談に携わっている相澤と申します。
3日間の論文式試験、お疲れさまでした。やり抜いたご自身を褒めてください。「よくがんばった」と! まずは、リフレッシュをおすすめします。
前回(8/19掲載)の記事では、就職活動のスケジュール感や注意点をお伝えしました。今回は、法人選びのポイントや監査法人の特徴についてお伝えします。
法人選びを成功させる近道は?
本試験終了直後でまだ疲れが残っていると思いますので、結論を先にお伝えします。
“説明会や相談会などで、できるかぎりさまざまな会計士と話をすること”
これが、法人選びを成功させる近道です。話を聞きながら、自分が生き生きできる法人を見つけ、その法人から内定をもらうことが就職活動の「成功」だと思います。
まずは、受験指導校の主催する合同説明会などをキックオフとして、各法人の説明会などに積極的に参加してみてください。
「生き生きできる」とは?
皆さんは、「会計士になって生き生きしたい」と思いながら、ここまで頑張ってきたはずです。では、「生き生きできる」とは、どういうことでしょうか?
会計士は、プロフェッショナルと言われています。プロフェッショナルとは、高度なスキルで高度な業務を提供して対価を得ること。
ですから、生き生きするために、就職活動では「どのような業務にかかわりたいのか?」「どのようなスキルを身につけたいのか?」を意識するとよいと思います。
そして、その業務やスキルが見つかったら、「どこで(誰と)行うことで成し遂げられるのか?」を探していきましょう。
聞き上手・返答上手・質問上手になる
これらを見つけるためには、説明会や相談会などのイベントでの「振る舞い」が大切です。
- 聞き上手
- 返答上手
- 質問上手
になりましょう。
1.は、笑顔や相槌などを大切にする。
2.は、質問に反応する。端的にプラスアルファを加えて答える。
3.はクローズドクエッション(答えの範囲を限定する質問。「はい」や「いいえ」、固有名詞などで答えられる質問)とオープンクエッション(答えの範囲を制限しない質問。考えや気持ちなどを伺うときの質問)をうまく使い分ける。クッション言葉を活用する。
です。
これらを心掛けることで会話のキャッチボールができ、さまざまな情報を得ることができます。
法人の方と話をすることは、実はそれほど緊張することではありません。なぜなら、皆さんに昔の姿を重ね合わせて懐かしく思い、対応してくれる方がほとんどだからです。一生懸命、これからについて考えている皆さんを頼もしく思ってくれます。
監査法人には、スタッフ、シニア、マネージャー、パートナーと、さまざまな職階の方がいます。それぞれの職階の方とコミュニケーションを取ることで新たな発見があるので、ぜひ説明会や相談会などを有効活用してください。
各監査法人にはどんな特徴がある?
さまざまな法人のイベントに参加していると、どの法人も同じに見えてきてしまうこともあります。しかし、別々の法人として存在しているということは、必ず何か違いがあるはずです。
この違いを探すことが就職活動でもあるので、法人ごとの違いを意識して就職活動をしていきましょう。ときには、パンフレットやホームページなどで経営理念、沿革、組織図などを確認してみるのもよいと思います。
違いは「特徴」とも言い換えることができます。ここで、皆さまの法人理解の手助けとなるように、私自身が認識している特徴についてお伝えします。
大手監査法人と大手以外の監査法人の特徴
まずは、大手監査法人と大手以外の監査法人の特徴について。
端的には、経験できる業界や業務の深さと広さが異なるために、身につくスキルの深さと広さも異なります。ちなみに、業界とはメーカーや商社など、業務とは監査や会計アドバイザリーなどを指します。
大手監査法人では、比較的規模が大きい会社の業務経験を積みやすいです。規模が大きい会社は、さまざまな取引やビジネスを行っているため、特殊な事例にも携わることができます。そのため、業界や業務に関する知識やスキルが“深く”身につきやすいでしょう。
一方で大手以外の監査法人では、比較的規模が小さい会社の経験を積みやすいです。規模が小さいぶん、さまざまな業界や業務に携わることができます。そのため、業界や業務に関する知識やスキルが“広く”身につきやすいと思います。
とはいえ、これとは異なった見方をすることももちろんできますし、昨今は大手と大手以外で業務の違いはなくなってきているともいわれています。
さまざまな法人のイベントに参加して、自分自身の視点で特徴を捉えてください。
東京事務所と地区事務所の特徴
続いて、東京事務所と地区事務所の特徴をお伝えします。
業務としては、大手と大手以外の違いが当てはまり、東京事務所が“深い”、地区事務所が“広い“です。それ以外は、地区事務所は、地域に根差した企業に関われることがプラスされます。地域経済に関わりたい方は、地区事務所も検討するとよいでしょう。
また、リモートワークが一般的になりつつある現在、地区事務所に所属しながら東京事務所の業務に関わるなど、東京事務所と地区事務所の垣根が低くなっていることもあるようです。
このような特徴は、説明会などに参加して確かめるのがよいと思います。
ちなみにTACでは、はじめての試みとして、「会計士受験生のための就職ガイドエリア版」を発刊しました。TAC出版の旅情報誌「おとな旅プレミアム」にご協力いただき、地域の魅力をお伝えするとともに、採用に積極的な事務所の求人情報を掲載しています。オンラインで説明会なども行っているので、あわせて活用してみてください。
監査法人以外の選択肢では「希少価値」を得やすい
論文式合格者の多くが監査法人でキャリアをスタートさせると思いますが、毎年、一定数の合格者がアドバイザリー会社や税理士法人、一般事業会社でキャリアをスタートさせています。
スケジュール感に関しては、前回お伝えしたとおり監査法人と若干異なるので、ご注意ください。
これらの組織に入社してキャリアをスタートさせる場合、多くの方と異なるスキルを身につけられるので「希少価値が出やすい」と言われています。また、監査法人に比べると組織内に会計士が少ないので、頼りにされることも多いと聞きます。
説明会などで話を聞いてみて、魅力的に感じたようならば、このような組織でファーストキャリアを描くのもよいでしょう。
本日(8/22)13時からTACが主催する「オンライン・プレゼンテーション」では、監査法人以外の企業も参加します。ぜひ話を聞いてみてはいかがでしょうか?
さいごに
皆さまは、さまざまな思いで論文式試験に臨まれたと思います。素晴らしいことです。そして、これから説明会などに参加すればするほど、「頑張ってよかった」と感じるはずです。
論文式試験後、すぐに就職活動を始めることは大変かもしれませんが、今後の長い会計士人生のよいスタートを切るために、少しずつでよいので、早めに就職活動を進めていきましょう。そんな皆さまを、監査法人など採用側も暖かく迎え入れてくれると思います。
また、1人ではなかなか気づかないこともあるでしょう。ぜひ、就活相談会などの就職サポートも活用してみてください。
就職活動は新たなる目標を見つけて、よい会計士人生をスタートさせる準備です。はじめてのことが多くて、大変なこともあるかもしれませんが、頑張ってください。応援しています。
【執筆者紹介】
相澤 健(あいざわ・けん)
国家資格キャリアコンサルタント/社会保険労務士有資格者
2011年よりTAC公認会計士講座にて、会計士受験生の進路・就職相談に従事。個々の状況に合わせた対応を心掛け日々業務にあたる。趣味を料理にするために日々悪戦苦闘中。
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