新井勇樹(税理士・公認会計士)
『決算書の50%は思い込みでできている』
書籍においてそのタイトルは極めて重要と言われる一方、中にはタイトルだけのものも散見される昨今、これほど言い得て妙なタイトルを付けた本を他に知りません。本書を読むにはある程度の会計知識を要求され、その意味で万人向きとは言えませんが、逆に会計を十分学習している皆さんからすれば、わりと手軽に読めて、なるほどと思える内容だと思います。
「キャッシュは事実、利益は意見」とはよく言われますが、本書を読めば「会計数値は作られている」というのがよくわかります。本書が出版されたのはもう10年以上前で、若干制度的に古い事項もありますが、当時よりも今の方がむしろ「思い込み=見積り」で会計数値が変わる世界はより一層進んでいるように思え、今なお内容は色褪せていません。
『サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な「答え」が出ている』
いかにも新書といったキャッチーなタイトルですが、中身は行動経済学や心理学の様々な理論を紹介しているものです。この手の、世の中に数ある理論を紹介する書籍はタイトルや切り口を変えて今なお量産されていますが、基本となる考え方としてはすでにどこかにあるものの焼き直しです。
その点、本書は新書という読みやすさでいったら他にない形式なので、手軽に読めてその手の理論を俯瞰できるという点で優れています。10年前の出版ですが内容は陳腐化していません。税理士受験生の多くはすでにサラリーマンで、会計士受験生のほとんどは将来的には一時的にでもサラリーマンになるものだと思いますが、サラリーマン生活を送る上でのヒントがあるかもしれません。
『そうだったのか!税法条文の読み方』
税法は「一読難解、二読誤解、三読不可解」と呼ばれるように、ともかく読みづらく、出来れば敬して遠ざけておきたいものです。そうはいっても、税務実務において、最終的なよりどころとなるのは税法の条文です。そのため、専門家たるものその複雑怪奇な税法の条文を読み解く力量を持っておく必要があります。
本書は、平易な語り口で進めていき、ごく基本的な事項から確認していって適宜の練習問題を交え、条文読解の力がつくように工夫されています。条文読解能力は大いなる基礎力となりますが、ちょっと時間に余裕のある時にマジメに取り組んでおくと、今後実務で生きていくうえで大きなアドバンテージになると思います。
<この記事を書いた人>
新井勇樹(税理士・公認会計士)
2008年に公認会計士試験に合格後、大手監査法人で学校法人や国立大学も含め各業種の法定監査や会計システム導入支援業務、内部統制導入支援業務に従事。経理財務として入社した非上場中堅会社で他に得難い経験をした後、税理士法人に転じ街の飲食店から上場企業までを担当。2021年11月に群馬県前橋市で独立し、新井勇樹税理士公認会計士事務所を開業。税理士業界では若手ながら、多様な経験を生かして幅広く活躍中。自身のnoteのアカウントでも、積極的に情報発信を行っている。