税理士・会計士・日商1級 絶対落とせない財表理論45ー総復習編⑦:連結会計


村上翔一(敬愛大学准教授)

*総復習編では9回にわたり、本連載の復習を行います。

Q1 連結財務諸表は、( ア )にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を総合的に報告するために作成するものである。従来のディスクロージャー制度においては、これまで個別情報を中心としており、連結情報は個別情報に対して副次的なものとして位置付けられてきた。しかし、( イ )・( ウ )した企業に対する投資制度を的確に行ううえで、企業集団に係る情報が一層重視されてきているため、連結情報を中心とするディスクロージャー制度への転換を図るとともに、セグメント情報を一層充実することが必要である。

A
ア 支配従属関係
イ 多角化
ウ 国際化

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書、第一部・一・1
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、par.1
連結財務諸表作成によって、企業集団に関する総合的な会計情報を投資家に提供することができ、また、親子間取引による粉飾を防止することができる。

Q2 連結財務諸表の作成については、( ア )と( イ )の2つの考え方がある。いずれの説においても、単一の指揮下にある企業集団全体の資産・負債と収益・費用を連結財務諸表に表示する点で変わりないが、資本に関しては、( ア )は、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主持分のみを反映させるのに対し、( イ )は、連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づけて、企業集団を構成するすべての会社の株主持分を反映させるものである。現行基準では、( ア )が採用されている。

A
ア 親会社説
イ 経済的単一体説

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書、第二部・一・2
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、par.51
連結基礎概念は、連結の範囲に影響を与える。親会社説では、子会社の親会社持分に相当するのれんが計上され、経済的単一体説では、親会社のみならず非支配株主に帰属するのれんも計上される。

Q3 連結財務諸表作成において、企業が遵守すべき一般的な規範として、4つの一般原則が存在する。1つめは( ア )の原則であり、連結財務諸表は、企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して真実な報告を提供するものでなければならないとする。2つめは( イ )の原則であり、連結財務諸表は、企業集団の属する親会社及び子会社が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成した個別財務諸表を基礎として作成しなければならないとする。3つめは( ウ )の原則であり、連結財務諸表は、企業集団の状況に関する判断を誤らせないよう、利害関係者に対し必要な財務情報を明瞭に表示するものでなければならないとする。4つめは( エ )の原則であり、連結財務諸表作成のために採用した基準及び手続は、毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならないとする。

A
ア 真実性
イ 個別財務諸表基準性(基準性)
ウ 明瞭性
エ 継続性

連結財務諸表原則、第二
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、pars.9-12
真実性の原則の真実は相対的真実を指し、元となる個別財務諸表の作成において主観的判断が介入すること、連結財務諸表作成の基礎となる会計帳簿が存在しないこと、子会社の資産・負債を時価で評価することから主観的にならざるをえないこと、から絶対的真実ではないと解されている。

Q4 連結財務情報を作成するにあたって、連結の対象とすべき子会社の範囲(連結の範囲)が重要となる。子会社の判定基準として、従来、親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかという法形式により判定を行う( ア )が採用されていたが、現行基準では、議決権の所有割合以外の要素を加味した実質的な支配関係の有無に基づく( イ )が採用されている。

A
ア 持株基準
イ 支配力基準

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書、第二部・二・1(1)
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、pars.6-7、54
持株基準は、連結の対象となる子会社の範囲を客観的に決定可能であるが、持株割合を調整することで子会社の範囲を操作することができる。支配力基準は、持株割合という法的形式ではなく、支配力という経済的実質から子会社の範囲を決定するものである。

Q5 連結財務諸表を作成する際、時価により評価する子会社の資産及び負債の範囲については、( ア )と( イ )が考えられる。前者は、親会社が投資を行った際の親会社持分を重視し、親会社持分相当分の子会社の資産及び負債を時価評価する方法であり、後者は、親会社が子会社を支配した結果、子会社が企業集団に含まれることになった事実を重視し、子会社の資産及び負債のすべてを時価評価する方法である。現在、( イ )が採用されている。

A
ア 部分時価評価法
イ 全面時価評価法

連結財務諸表制度の見直しに関する意見書、第二部・二・5(1)(2)
連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)、pars.20、52、61
部分時価評価法と全面時価評価法の違いは評価差額の額である。前者は、非支配株主持分に相当する評価差額が計上されないのに対し、後者は、非支配株主持分に相当する評価差額が計上される。

◎復習しましょう!
総復習① 棚卸資産
総復習② 有価証券
総復習③ 有形固定資産
総復習④ リース
総復習⑤ 引当金
総復習⑥ 税効果会計

【執筆者紹介】
村上 翔一
(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他

*本連載は、「会計人コース」2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。


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