【税法理論】なぜ暗記したのに点が取れないのか? 高得点を狙う「答案作成」のポイント


加藤 久也
(税理士/名城大学大学院非常勤講師)

【編集部から】
税理士試験まで残りわずかとなり、暗記に苦労した理論も「頭に定着してきた」という受験生もいるかもしれません。
しかし、全国公開模擬試験が実施される今の時期は、「覚えた理論を書いたはずなのに点数が取れない」と悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、専門学校や大学院で豊富な受験指導キャリアをもつ税理士の加藤久也先生に、税法理論で効率的に高い点数を狙うための答案作成のポイントを教えていただきました。
本試験まで残り1ヵ月を切る前に、いま一度、自分自身の答案作成法を見直してみましょう!

高得点が狙える「最良の答案」とは?

出題者が高得点を付けたくなる答案は、どのようなものでしょうか。

それは、出題の意図を理解し、問われた内容について正しく記述しているものと考えられます。決して「専門学校の模範解答どおりに記述できているか」という観点で採点されることはないはずです。

このように出題者の視点に立った場合、問われたことに対して暗記した規定を抜き出して記述すると、出題者の意図に沿った模範解答により近づくと思われます。

一方で、暗記した規定をそのまま解答しても、減点されることはないでしょう。ただし、出題者が想定していない(問われていない)部分に加点はされないと考えられます。

そのため、前者と後者で得点は同じでも、後者のほうが解答に余計な時間を費やしており、そのぶん他の問題に解答する時間が少なくなります。そうなると、結局は減点されたことと同じですね。

つまり、「最良の答案」とは、最少の解答量で最大の点数を獲得する答案なのです。

2つの例題から「最良の答案」を考えてみよう

ここで例題を読み、それぞれの解答の骨子を考えてみましょう。消費税法の問題ですが、他の科目を受験する方も、2つの問題の違いに着目してみてください。

例題1 平成26年度(第64回)の改題

 課税仕入れの意義、仕入税額控除制度の趣旨及び仕入税額控除の計算方法(簡易課税制度を適用した場合を除く。)について、簡潔に述べなさい。
 (注)1 消費税法施行令に定める事項については、触れる必要はない。
    2 適宜算式等を用いることとして差し支えない。

例題2 平成24年度(第62回)

 消費税法第30条第6項に規定する「課税売上割合」が、その課税期間において95%未満である場合における仕入れに係る消費税額の控除の適用関係について述べなさい。
 なお、同法第30条第3項に規定する「課税売上割合に準ずる割合」の適用要件についても述べなさい。

どちらの問題も消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)がテーマですが、この問題にどう解答しますか。

例題1は、「課税売上割合」が限定されておらず、「課税売上割合に準ずる割合」についても言及がありません。

例題2は例題1と異なり、課税売上割合が、「その課税期間において95%未満である場合」に限定され、「課税売上割合に準ずる割合の適用要件」について述べるよう指示があります。

「解答の骨子」からみる答案作成のポイント

例題1

まず、例題1の解答の骨子を見てみましょう。

[1]課税仕入れの意義
[2]仕入税額控除制度の趣旨
[3]仕入税額控除の計算方法
 (1)仕入れに係る消費税額の控除
 (2)個別対応方式又は一括比例配分方式
  ① 個別対応方式
   (イ)適用要件
   (ロ)計算方法
   (ハ)課税売上割合に準ずる割合
  ② 一括比例配分方式
   (イ)計算方法
   (ロ)変更制限

税法科目では、問われた内容について、問われた順番で解答することが大切です。

例題1では、「課税仕入れの意義」、「仕入税額控除制度の趣旨」、「仕入税額控除の計算方法」が問われているので、そのまま[1]課税仕入れの意義、[2]仕入れ税額控除制度の趣旨、[3]仕入税額控除の計算方法の順に解答の骨子を組み立てます。

そして、いざ答案を作る際、ポイントとなるのが解答範囲、つまり「どこまで書くか」です。

この例題では、「課税売上割合に準ずる割合」に言及することは求められていませんが、「仕入税額控除の計算方法」が問われているため、「課税売上割合に準ずる割合」についても記述するべきでしょう。一方で、「帳簿及び請求書等の保存」など、その他の項目は、「仕入税額控除の計算方法」に当たらないため、記述する必要はありません。

このように、暗記した規定を記述する際は、「問われていること」に対応する部分を抜き出すことを忘れないようにしてください。

例題2

続いて、例題2の解答の骨子です。

[1]課税売上割合が95%未満の場合の適用関係
事業者(免税事業者)が、国内において行う課税仕入れ……については、……課税期間の課税標準額に対する消費税額から次のいずれかの方法により計算した金額を控除する。
 (1)個別対応方式
  ① 適用要件
  ② 計算方法
  ③ 課税売上割合に準ずる割合
   (イ)内容
   (ロ)適用要件
 (2)一括比例配分方式
  ① 計算方法
  ② 変更制限

例題2は、いわゆる規定の「べた書き」でも合格答案になり得ると思います。

ただ、上記のように「課税売上割合が95%未満の場合」に限定して記述する方法を身につけておくと、解答時間と解答量の節約につながります。節約できた解答時間を他の問題に使うことで総得点のアップにつなげましょう。

「問われていること」を読み取る

ここまで、個別理論問題を例にその解答方法を見てきました。

個別理論問題については、「出題者の意図に沿った答案を作成できるか」が大切です。問われた内容に対し、最少の解答量で最大の点数を獲得するつもりで解答するように心がけてください。

そのためには、まず問題を読み、解答の構成を考えます。解答時間と解答量には限りがあるので、この構成次第で合否が決まるといっても過言ではありません。

特に、例題1のように項目ごとに問われている問題の場合には、その項目の順番に答案を記述しなければなりません。

また、問われている内容も、例題1が「仕入税額控除の計算方法」だったのに対し、例題2は「仕入れに係る消費税額の控除の適用関係」でした。このように同じテーマでも問題の着眼点が異なるので、答案の構成を変える必要があります。

今、なかなか理論の点数が伸びずに不安な方は、問題文から「問われていること」を読み取るよう意識しましょう。税法理論の解答に規定の暗記は必要です。しかし、税理士試験は単に暗記力を試す試験ではないことを忘れないようにしてください。

<執筆者紹介>
加藤 久也(かとう・ひさや)
税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。


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