【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
社会保険労務士と行政書士受験の経緯
名古屋で社会保険労務士事務所と行政書士事務所を開業している奥村篤史です。
ダブルライセンスを目指したきっかけは、ふと立ち寄った書店で、社会保険労務士と行政書士の本が目に留まったことでした。
その頃の私は、私生活で辛い出来事が立て続けに起こり、新しいことに取り組む気力もない時期でした。
しかし、よく考えてみると、私のまわりで弁護士、司法書士、公認会計士、税理士になった友人はいましたが、社会保険労務士と行政書士はいません。
今までの辛い出来事を忘れ、「新しい世界を切り拓いてみたい」との思いが生まれ、資格取得を決意しました。
当時、社会保険労務士試験の合格率は2~4%。
要領の悪い私には絶望的な数字に思えました。というのも、私が大学生の頃、行政書士は現在よりも試験合格が簡単と言われており、独学での受験を試みたもの、途中でやめてしまったという苦い経験があったのです。
改めて、市販書を立ち読みしてみると、あまりにも難解です。しかも年齢を重ねて、記憶力が落ちています。
しかし、「今ここで資格取得を諦めたら、後悔しか残らない。何とか乗り越えてみせる!」という思いが湧き上がり、行動を開始しました。
過去の経験から、自分にとっては、市販のテキストを都度、何冊も買い揃えるよりも、予備校の講座を受けるほうがコスパが良いうえに、講師に質問もできるので理解が深まると考え、インターネットで専門学校の情報収集を行い、早速web通信での受験勉強を始めました。
社会保険労務士試験は、ide社労士塾で2年間学び、2回目の受験で合格。
行政書士試験は、資格の大原で学び、初受験で合格することができました。
人脈ゼロからの独立開業!
私は直近の仕事の人脈を活かせなかったために、人脈ゼロからのスタートになりました。
そんな不安もありましたが、独立開業は希望に燃えた出発でした。
独立開業に当たり、私が準備したものは、
・お客様が来たくなる素敵な事務所
・ノートパソコン
・名刺 です。
特に名刺は、自分のことを認知していただくために、「1カ月で名刺を100枚配る」と決めていました。しかし、開業後、新型コロナウィルスの感染拡大防止による緊急事態宣言などで、思うように活動できず苦労しました。
売上が軌道に乗り、黒字化できるまで、開業してから7カ月ほどかかりました。
独立してからの人脈づくり
士業全般に言えることですが、ネット経由でお問い合わせをするお客様は、値段にしか関心がない場合があります。
そのため、リアルでの人脈づくりの大切さを実感しており、同業の社会保険労務士と行政書士を含めて、士業の人と「会う」ことを優先しています。
中小企業だと税理士への依頼だけで完結する仕事もありますが、企業が発展をすると他士業も含めて、お客様の支援をすることになります。
そこで、士業同士の勉強会で講師を務めるなどし、他士業の方々との関係性構築を図っています。
もちろん、経営者と対面で「会う」ことも大事にしています。
もともと朝型タイプであることを活かして、早朝に開催される異業種交流会などに参加しています。
こうした活動を通して、1人でも多くの経営者の方と面識を持つことができればと考えています。
人のために動くことで、不思議な縁に恵まれて仕事を依頼されることがあり、行動することの大切さを身をもって学んでいます。
士業同士の連携の大切さ
社会保険労務士としては、年金事務所や労働基準監督署に提出する書類の人件費の額などで、税理士に相談したり、行政書士としては、建設業許可や相続関連で税理士から案件の紹介をいただくなど、連携をすることが多いです。
こちらから税理士に財務諸表の内容の問い合わせをすることはとても多いので、ご縁は双方にとって、とても貴重です。
実は以前、顧問先から「担当の税理士さんが病気になってしまったので、新しい税理士を探している」「(お客様の近くの)税理士と連携して仕事してほしい」といった要望を受けたことがありました。
しかし、ニーズに合う税理士が見つからず、顧問契約を継続できなかったという経験があります。
そういったこともあり、士業同士の連携の大切さを痛感しています。
事務所の強みと将来の夢
私の周りでは、社会保険労務士と行政書士のダブルライセンスホルダーは多くありません。
また、お客様は、社会保険労務士と行政書士の区分などがそもそもわからないことも多いです。
そのため、ダブルライセンスで業務拡大のチャンスをつかむことができると考えています。
人材難に悩む業種として、建設業、運輸業、障害者福祉事業などがあり、それらの業種において許認可の仕事で相談を受けるケースが多くあります。
外国人の採用や雇用のセミナーを開催した時にも、社会保険労務士と行政書士の両方の知識がないと、受講者の質問に解答できないと思うことが多々ありました。
ダブルライセンスを活かし、外国人の採用から退職までトータルに扱える社会保険労務士事務所と行政書士事務所を目指しています。
そして、私の将来の夢は、書籍の出版です。ショッピングモールや大型書店を巡るのが好きなのですが、モール内の書店や大型書店で先輩社会保険労務士や先輩行政書士の書籍を見ると私も嬉しくなります。
いつかは私自身の書籍が店頭に並ぶ日を夢見ています。
【執筆者紹介】
奥村 篤史(おくむら あつし)
名古屋駅近郊で開業している社会保険労務士&行政書士事務所の代表。岐阜県や静岡県での勤務経験もあり、東海4県のお客様には対面での相談可能。また、英語版HPを持っている社会保険労務士事務所&行政書士事務所で、外国人のお客様からの相談に幅広く対応可能。最近は出来ていませんが、再開したい趣味はテニスとスノーボード。将来旅行したい所はハワイとグアム。
社会保険労務士事務所HP
行政書士事務所HP
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