村上翔一(敬愛大学准教授)
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問題
棚卸資産は金額面も考慮される。売上収益に対応すべき( ア )は、販売した棚卸資産の実際仕入原価が理想だが、商品の受け払いが頻繁に行われる場合、実際仕入原価の把握は困難となる。そのため、過去の実際仕入原価をもとに、先入先出法、平均原価法などの( イ )が認められる。( イ )の結果、( ア )の金額と期末保有の棚卸資産の金額が算定される。
従来、当該( イ )の方法について、後入先出法が認められてきた。後入先出法とは、最も新しく取得されたものから棚卸資産の払出しが行われ、期末棚卸資産は最も古く取得されたものからなるとみなして、期末棚卸資産の価額を算定する方法である。この方法は、棚卸資産が過去に購入した時からの( ウ )を反映しない金額で貸借対照表に繰り越され続けるため、その貸借対照表価額が最近の( エ )の水準と大幅に乖離してしまう可能性がある。また、棚卸資産の期末数量が期首の数量を下回る場合には、期間損益計算から排除されてきた( オ )が当期の損益に計上され、その結果、期間損益が変動することとなる。
解答・解説
ア 売上原価
イ 仮定計算
ウ 価格変動
エ 再調達原価
オ 保有損益
棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)、pars.34-5-34-12
連続意見書第四、第一・六
後入先出法は、費用額に価格水準を反映しやすい一方、資産額が現在の価格水準と乖離するという特徴がある。
◎復習しましょう!(バックナンバー)
第1回 棚卸資産①
第2回 棚卸資産②
第3回 棚卸資産③
【執筆者紹介】
村上 翔一(むらかみ しょういち)
明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(博士(経営学))。明治大学専門職大学院会計専門職研究科教育補助講師、敬愛大学専任講師を経て現在敬愛大学経済学部准教授。
<主な論文>
「保有者における電子マネーの会計処理」『簿記研究』(日本簿記学会)第2巻第1号、2019年(日本簿記学会奨励賞)
「ICOに関する会計処理」『敬愛大学研究論集』第98号、2020年
「ブロックチェーン技術の進展と簿記」『AI時代に複式簿記は終焉するか』(岩崎勇編著)、税務経理協会、2021年
「コンセンサス・アルゴリズムの観点に基づく暗号資産の会計処理―マイニング、ステーキング、ハーベスティングの理解を通じて―」『敬愛大学研究論集』第100号、2021年 他
*本連載は、会計人コース2019年11月号「特集:勉強したくなる「習慣化」のススメ 7日間理論ドリル」を大幅に加筆修正したものです。