【税理士試験】専門学校講師が教える! 財表理論で「方向音痴」にならないための学習ポイント


大井 健太郎
(資格の大原講師)

【編集部から】
受験生が理論学習を本格化させていく時期。
特に財務諸表論については、はじめて理論に触れる受験生も多く、「何をどうすればよいのか」と、目指すべき方向がわからないまま勉強している方もいるのではないでしょうか。
ただ、そのように「方向音痴」な状態では、なかなか理論の「苦手」は克服できません。
財務諸表論の理論学習で、まずやるべきことは何なのか? 理論を覚えるために最も大切なことは何か? 
資格の大原の大井健太郎先生にアドバイスをいただきました。

1.まずは「暗記」からスタート! 「理解」はあとからついてくる

理論学習が進まない方のなかには「何が書いてあるか理解できない」「日本語が苦手」と考えている方が多くいらっしゃいます。

まず、前提として、財務諸表論の理論は「暗記」をすることが重要です。たしかに、まったく意味のわからない文章を暗記するのは至難の業なので、ある程度の「理解」は必要です。また、理解ができていないと、変化球的な応用問題に対応できないこともあります。

ただ、財務諸表論の理論(学問的には財務会計論と呼ばれることも多いですね)は長年、多くの学者の先生方が研究を続けてきたものであり、それを1年程度で完璧にマスターすることは難しいです。

また、完璧に理解することが、そのまま合格につながるわけでもありません(もちろん、理解度が高いに越したことはありませんが)。

では、どのようにこの課題を乗り越えるのか? そのためにも、まず「暗記」です。

文意を半分程度自分なりに認識したら、あとは覚えてください。そうすることで、あとから「理解」がついてくることも多く、また、試験問題にも対応できるようになります。

「日本語が苦手」と嘆きたくなる気持ちはとてもよくわかりますが、そもそも、ほとんど日常生活では使用しない用語が飛び交うわけです。そんな用語を使いこなすことに、日本語の習熟度はあまり関係がありません。

膨大な理論を目の前に、「どこをどうすればよいのかわからない」と悩んでいる方は、まず「暗記」することを目指してみてください。

2.「理解」からスタートするなら、友人に説明するイメージで

このように、財務諸表論の理論では「暗記」が重要になるわけですが、文章を覚えることが苦手だと感じている方もいると思います。そのような場合は、「理解」から入っていくのも1つの作戦です。

意味のわからない文章を暗記するのは困難という面もありますが、まずは細かい部分まで一気に覚えようとせず、自分なりに噛み砕き、それなりに答えられるようにすることから始めてみましょう。

感覚としては、友人に説明するイメージです。

たとえば、「実現主義」という理論があります。これを正確に解答する場合、「財貨又は用役の移転及びそれに対する現金又は現金同等物の取得」といった文章を記載する必要がありますが、まず「ものを相手に渡して、それの代金をもらうことなんだよ」と説明するのです(実際にそんなことを聞いてくる友人はレアなので、空想の友人を相手にしてください)。

その日に、10個の論点(文章)を暗記するというノルマを課している場合、まずは10個分を友人に説明します。自分がまったく理解できていないことを人に説明することはできません。

そして次に暗記する際に、「財貨なんかを渡して、現金等を取得する」と精度を上げていけばよいのです。

3.理論暗記は「方法」より「回転数」

理論暗記で大切なのは、忘れたものを思い出そうとするプロセスです。その機会を多く作りましょう。

基本的には、問題と覚えるべき解答を準備し、

「問題を見て解答を思い出そうと頑張る→思い出せない→解答を見る→また問題を見て思い出そうと頑張る」

これを繰り返すことで、解答の精度が上がっていきます。

大切なのは「理論暗記の回転数」です。「覚えて忘れて」をいかに多く繰り返せるかがポイントとなります。一度暗記した文章を本試験まで覚えている方はいません。必ず忘れます。

それでは、回転数を上げるためにどうすればよいのか? それはこういうことです。

たとえば、10ページを10日で暗記するノルマがあったとします。1日で1ページを完璧に暗記するのではなく、1日目から10ページすべてを暗記してください。それを10日間(10回転)繰り返します。

ただ、1日目から10ページも暗記しなければなりませんので、完璧に覚えようとすると時間がありません。そのため、最初は「なんとなく」でかまいません。どんどん進みましょう。

また、こういう方がいらっしゃいます。20行の文章を1行ずつ覚える。これはよいです。

ただ、この後、2行目を覚えたら1行目に戻って、暗記できているか確認する。そうすると、1行目は20回確認できますが、20行目は1回しか確認できず、ムラが生じます。また、回転数も上がりません。

少しでも暗記できたら次に進んでください。理論暗記は回転数です!

なお、財務諸表論の理論はボリュームもそれなりに多く、たとえば、資格の大原のテキストだと第28章まであります。最後のほうまで学習が進むと、当然はじめの理論は覚えていません。それでも、あまり気にせず進みましょう。

上述したように、暗記した理論を本試験まで覚えている方はいません。だからこそ、その場その場での回転数を上げ、しっかりと記憶を定着させてください。

また、資格スクールのカリキュラムは、それに従えば自然と、序盤の論点を含めて何回転もできるようになっています。

4.理論は「苦手」ではなく「嫌い」なだけ

暗記力には個人差があるので、理論が苦手と感じる方もいらっしゃるでしょう。

ただ、私から見るかぎり、ほとんどの方は理論が「苦手」なのではなく「嫌い」なだけです。

理論暗記は大変です。今日覚えた理論を明日確認しても、ほとんど覚えておらず愕然とします。しかし、そういうものなのです。

合格者の方々は、多くの時間をかけて理論と向き合い、苦労して合格をもぎ取っています。苦労すれば合格できる、苦労しなければ合格できない、という非常にシンプルで、ある意味“合格しやすい”試験です。

「合格しやすい」というのは、楽をしてパスできるということではなく、苦労した分だけ、きちんと結果として跳ね返ってくるということです。

長年、多くの受験生の方々と一緒に勉強してきましたが、理論が「苦手」な方はほとんどいらっしゃいません。ただ、理論暗記を「嫌い」と感じているだけなんです(もちろん、好きな方もいらっしゃいますよ)。

最後に…

財務諸表論は例年、合格率も高く、試験傾向がとても安定しています。私が言うのもおこがましいですが、理論問題も非常によく作られており、試験会場では暗記した知識で対応するとしても、あとでじっくり考えさせられるもので、いわゆる奇問ではありません。

つまり、繰り返しとなりますが、財務諸表論は努力がしっかりと反映される科目であり、そんな意味でも合格しやすいのです。

最後まで諦めずに本試験まで辿り着くことで、どんな人にも合格のチャンスがあります。

長丁場の学習期間、つらくて諦めたくなってしまうこともあると思いますが、仮にもし、勉強を断念する場合でも、将来、絶対に後悔することがないようにしてください。

「あのとき、勉強を断念して正解だった」と思えるのであれば、それはよいと思います。ただ、「あのとき、続けておけばよかった」となることだけはないよう、しっかりと選択をしてください。

では、今年の合格に向けて一緒に頑張りましょう!

【執筆者紹介】
大井 健太郎(おおい・けんたろう)
資格の大原 税理士講座講師
資格の大原にて財務諸表論を担当。これまでに1,000人以上の受講生を担当し、ほとんどの受講生の顔と名前を覚えている。映像収録の講義も担当し、「受講生の学習負担を減らし、最短で合格してもらう」ことが信念。
資格の大原 税理士講座ホームページ


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