加藤久也
(税理士/名城大学大学院非常勤講師)
【編集部から】
受験生が理論学習を本格化させていく時期。
理論の勉強にあたっては、「インプット」と「アウトプット」の両方において、どんな方法が正しいのか、悩む方も多くいるのではないでしょうか。
特に、税法科目の場合は、内容の難しさやボリュームの多さから、理論学習に苦しむ受験生も少なくありません。
そこで、そんな皆さんの不安を払拭できるよう、税法理論の「インプット」と「アウトプット」のそれぞれにおいて知っておきたい「礼儀作法」(=学習の姿勢)を、大手専門学校で受験指導のご経験もある税理士の加藤久也先生にアドバイスいただきました。
今回は「アウトプット」を中心にお話しいただきます。
税法理論は間違わずに書けないといけないのか?
前記事では、インプット編として「内容の理解を前提に税法を暗記する必要がある」とお伝えしました。それでは、アウトプットはどうなのでしょうか。
アウトプットについては、受験生から「一言一句間違わずに答案を書かなければいけませんか?」としばしば聞かれます。
たとえば、「……とみなす」を「……とする」と書くと必ず減点されます。しかし、「所轄税務署長に提出しなければならない」を「所轄税務署長へ提出しなければならない」と書いても減点されることはないでしょう。
要するに、間違ってはいけないところと、間違ってもいいところがあるのです。
ただし、軽微な書き間違いでも、文章全体を読んだときに意味がわからない場合は、まるごと0点になりかねません。
暗記に頼った結果、2つの文章が1つにつながってしまった答案を見かけることがあります。もともとの規定の内容を半分は答えられていると判定できればよいほうで、おおむね全体として意味をなしていないことが多いです。
インプットをよく頑張った努力を認めたいのはやまやまですが、本試験では厳しく採点されることを肝に銘じてアウトプットしなければなりません。
自分の書いた答案を読んでみてください。ちゃんと意味がわかる文章になっていますか?
意識としては、採点者を自分が税理士になったときのクライアントだと思って解答するとよいでしょう。
これからの「理論」の学習スケジュール感
本試験が近づくにつれて徐々にアウトプットの機会が増えていきます。個人の学習到達度や専門学校のカリキュラムにもよると思いますが、最後に参考までに、今の時期から本試験までの一般的な「理論」の学習スケジュール感をご紹介します。
まず、今の時期(2月~3月)はインプットの最終期です。
専門学校を利用している方は授業の進度に合わせて理論の理解と暗記に努めていることでしょう。受験経験者の方は、授業の進度にとらわれず理論暗記を進めているかもしれません。
働きながら勉強している方にとっては、今の時期は忙しいことと思いますが、この繁忙期にいかに時間を見つけて理論暗記を進められるかが合否の分かれ目となります。
理論は、5分もあれば1段落を確認することができます。机がなくても暗記できます。今はとにかく毎日続けましょう。
続く4月~5月がアウトプットの練習期となります。
答案練習や模擬試験(1回につき7~8題)に合わせて暗記を行います。ひととおり終わると、理論の全範囲を1回転することができます。
6月~7月はアウトプットの完成期です。
練習期と同様に、答案練習や模擬試験の範囲に合わせて暗記を繰り返しますが、この時期の範囲は1回につき15題ほどあると思います。正確に暗記するところと、内容を中心に確認するところの強弱をつけながら暗記し、答案練習や模擬試験でトレーニングしていきましょう。
8月に入ると超直前期です。
この時期は、理論の全範囲を、なるべく毎日、最低でも2日で1回転するようにしましょう。超直前期にもなると、新しいことを覚える感覚ではなく、忘れている分だけを覚えなおす感覚になります。
なお、今年度の税理士試験は8月2日~4日に実施されます。そのため、もう少し早くに超直前期を設定しておくとよいでしょう。
本試験まで半年を切りました。残りの期間を大切に、理論学習を進めていってください。応援しています。
<執筆者紹介>
加藤 久也(かとう・ひさや)
税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。
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